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「海だー!」
最初に叫んだのは 稜久君だった。
「写真 まだだって!笑」
颯太君が 腕を掴む。
笑いながらも、ちゃんと 止める。
砂浜には、クラスのほとんどが 集まっている。
シートを 広げる人、ボールを 膨らませる人。
すでに靴を脱いで 波に突っ込んでいく人。
ちゃんと クラス遊び って感じ。
でも、
今日も 来ていない人が数人。
理由はそれぞれ、らしい。
誰も 深くは聞かない。
気づいているのは、多分少数。
私は 少し離れた場所に立つ。
「日和!」
芽衣ちゃんが 隣に来る。
「暑くない?顔ちょっと赤いよ?」
「平気だよ。」
「ちゃんと水飲んでね。」
芽衣ちゃんは 小さく笑う。
優しい、いつもの 距離感。
その少し向こうで、木村さんが 手を振っている 。
「日和ちゃん、こっちおいで!」
太陽の下でも、木村さんは ちゃんと笑っている。
崩れない笑顔。
それが たまにすごいな、って思う。
写真を 撮るために全員集まる。
中央には 田仲君。
自然と 人が寄っていく。
稜久君が ふざけて颯太君に 肩をぶつける。
やめろよって言いながら、颯太君も 笑ってる。
そのやり取りを見て、少しだけ 安心する。
当たり前みたいな二人——
写真が撮り終わると、 一気に 散らばる。
私は 波打ち際へ。
足元に触れた水が すぐ引いていく。
後ろでは、皆の笑い声が聞こえる。
誰かのタオルを奪って、逃げてるらしい。
楽しそう。
ちゃんと、楽しそう。
「混ざんねーの?」
突然、隣に田仲君が座ってきた。
「うん、見てるのも 好き。」
「そっか。」
少し沈黙——
遠くで、木村さんが 大きく手を振っている。
あの子のあの笑顔は、
どこまで 本物なんだろうって、ふと思う。
「今日さ。」
田仲君が 海を見たまま言う。
「来てない奴、いるよな。」
「…うん。」
「まぁ仕方ないけどさ。」
軽い声。
でも、次の言葉は 少し低い。
「嫌いな人は 正直沢山いる。」
風に 流されそうな声。
私は、何も言えない。
田仲君は笑う。
完璧な、人気者の顔。
「でも、こういうときはさ」
「クラスっぽくいたいじゃん。」
遠くで、稜久君が派手に転んで、
颯太君が 手を差し出している。
芽衣ちゃんは、
それを見て 心配そうに立ち上がる。
小西さんは 少し困ったような笑顔。
私は波を 見る。
――私、ここにいていいのかな。
胸が 少しだけ締まる。
「日和ちゃん、修也君。」
「皆あっちでバレーボールするって、行こ!」
木村さんが 私達を呼ぶ。
太陽みたいな声。
私は 浅く息を吸う。
「うん、今行く!」
走ると砂が 沈む。
でも、ちゃんと前に進める。
—— 嫌いな人は 正直沢山いる
どしてそんな事、私に言ったんだろう。
小さな疑問が 頭に残る。
それでも、波の音は 変わらない。
ただ、少しだけ
胸の奥が 静かだった。
「人は見かけによらない。」
コメント
2件

田仲くんがどんな闇を抱えているのか気になるし、なんで日和ちゃんにその話をしたのかもすごく気になるところ。かいりくんが来れていないのも気になります。人は見かけによらない。確かにと思う話でした。 次は誰のお話なのかすごくすごく気になります。 日和ちゃんはどんな思いでクラスを眺めているのかもこれからの展開が気になりますね。