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はなちゃんの本当の笑顔が見つからない限り、小西さんは心を開かなさそうですね。でも少し楽しそうにしていてほっとしました。やはり前回の話から気になるのはかいりくんですね。なんで来ていないのかただただ次の話の人物も気になりどころです
「海だー!」
砂浜に着いた瞬間、誰かが 叫んだ。
それに私は 思わず笑った。
クラス遊び。
クラスメイトの、ほとんどが 来ている。
レジャーシートを 広げながら、
私は人数を ざっと数える。
…やっぱり、来てないな。
「今日、来れないんだよね?」
隣で芽衣ちゃんが小さな声で聞いてくる。
「うん、体調悪いのかも。」
「そっか…最近 ずっと休んでたもんね。」
「大丈夫だよ。あの人、意外と丈夫そうだし笑」
私は 軽く笑ってみせる。
芽衣ちゃんは、少しだけ曖昧に頷いた。
遠くでは修哉君が もう中心にいる。
ほら早く来いよって、全員を 巻き込む声。
周りも 自然と集まる。
ああいうの、すごいなって思う。
私は あそこまで強くない。
「木村も来いよ!」
「はいはーい。」
返事を して走る。
波が、足首に当たって冷たい。
誰かが水をかけて、悲鳴が上がって
笑い声が 重なる。
ふと、砂浜の端を 見る。
輪から少し離れた場所に、小西さんがいる。
来るかどうか 分からなかったけど、
ちゃんと来ていた。
私は 少しだけ安心する。
午後、陽射しが 傾きはじめる。
海の色が 少しずつ変わる。
「写真撮ろー!」
誰かの声で、みんなが 集まる。
その輪の中で、
小西さんがほんの少しだけ笑っていた。
小さく、確かに。
私は それを見て、胸が少し軽くなる——
夕暮れ
みんなが コンビニに行くとか、
アイス買うとか、ばらけ始めた頃。
私は砂浜に 残った。
小西さんも、残っていた。
オレンジ色の光が、海を 静かに照らしている。
私は少し距離を あけて隣に座る。
「今日は、来てくれて良かった。」
「…別に。」
声は冷たい。
私達の間に 壁がある。
ちゃんと、分かるくらいに。
波の音だけが 間に入る。
「最近、元気ないよね。」
自分でも、
聞く資格が あるのか分からない質問。
小西さんは 海を見たままこう言った。
「木村さんは、何でも分かったふりするよね。」
「…してないよ。」
「してる。」
「見てるだけでしょ、全部。」
その言葉は、静かでとても重かった。
あの日のことが、頭によぎる——
私は 何も言わなかった。
何も、できなかった。
「正しい事してないくせに、良い人ぶんないで。」
夕焼けが、視界を 赤く染める。
私は笑う、 反射みたいに。
「ぶってないよ。」
「私は、みんなが楽しかったら それでいいだけ。」
声が 少しかすれる。
小西さんが ゆっくりこちらを見る。
その目は、冷たいわけじゃない。
でも、暖かくもない。
「そういうのが、一番嫌い。」
はっきりと。
間にある空気が、固まる。
遠くで みんなの笑い声がする。
世界は楽しそうなのに、ここだけ別みたい。
「…ごめん。」
小さく出た言葉は、自分でも 驚くくらい弱かった 。
雛子は何も返さない。
ただ立ち上がる。
「もう 帰る。」
「うん、分かった。」
それ以上は 追わない。
——いや、追える立場じゃない。
夕焼けが沈みかける。
綺麗な夕日の下で、
また笑う練習をする。
みんなのところに戻るときは、
ちゃんと いつもの顔でいられるように。
なんだか、すごく惨めだ。
「私の本当の笑顔は、どこにあるんだろう。」