テラーノベル
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王妃は毒リンゴで姫を眠らせてしまいます。しかし、王子様のキスによって姫は目を覚まし、二人は結ばれて幸せに暮らしました…
散歩中、静かな場所に行きたくてふと立ち寄った図書館の中に何故か目を惹かれた絵本の一部分である。明らか子供向けではあるが大人になれば一周まわって気を惹かれるものだ。そしてその絵本というのが『白雪姫』である。
「白雪姫…ねぇ……」
キヨは絵本をぱたん、と閉じてはそうぼやく。
──林檎に毒ってどう盛るんだ?これもまたマホウとか??てか、そのマホウで老婆の姿に化けれるんなら逆に可愛くもなれたはずだろ……。
大人になれば思考回路も捻くれるのだろうか、キヨは白雪姫を手に持ったままボーッと脳内ディベートを始める。
──久々にリンゴ食べてぇな。
その一言で完結した脳内ディベートを頭から放り投げては本棚に本を戻し近くのスーパーに足を運んだ。
家に帰ってはガサ、と袋を台所に置きリンゴを洗う。まぁ、言わずもがな料理は出来ないので丸齧りである。一通り洗い流せばしゃく、という音を立ててリンゴに齧り付いた。
「…エロ。」
リビングから聞こえた声に驚いたように顔を上げるといやらしい笑みを浮かべた牛沢が我が物顔でソファに腰掛けていた。
「…なんで居んの。」
「暇だったから。」
合鍵をくるくる回しながらさも当たり前かの如くそう言ってのけた牛沢にキヨは半目になる。
「…まぁ、いいや、丁度いい。ちょっと俺の話に付き合ってよ。」
「んー?なに、ものによっては断るけど。」
牛沢はそう言いながらこちらまで歩いてこればキヨから近い壁に凭れ掛る様にして立つ。
「白雪姫についてだよ。」
「…なんでまた急に…」
「偶立ち寄った図書館で読んだの。」
「餓鬼か。」
「偶にはいいでしょ?」
「…まぁ、ノーコメント。んで?話って?」
「……なんで魔女はリンゴに毒を盛ったんだろうね」
「そんなの本人に聞かなきゃ分かんないだろ」
「…まぁ、そっか。うっしーはどう思う?」
「……と言うと?」
「うっしーが魔女ならなんでリンゴを選んだ?」
「ムズい質問だな。んーー…」
リンゴをもしゃもしゃと齧りながら牛沢の返答を待つキヨはぼんやりとどんな答えが来るのかと考えてみる。…が、その思考を遮ったのは牛沢だった。頬に手を当てがいリンゴの果汁で濡れた唇を親指の腹でなぞり目を細める。
「うっ、し……なに、して……」
「俺がリンゴを食わせる理由は可愛いやつに映えるものを与えてぇから…かな?」
「…ぇ、」
「可愛いやつには可愛いものだろ。魔女にそんな考えがなかったとしても俺はそう思ってリンゴを用意するね。」
「……そ、んな…」
「きっと眠る姿も可愛いんだろうな、硝子の棺に入れて持ち帰りてぇわ。王子なんかの目に届かない所まで連れて行ってずっと俺の傍に置くかも。」
最後にすり、と頬を撫でれば牛沢は手を離した。離れていく体温が惜しく感じて思わずその手に擦り寄る。牛沢は目を丸めてキヨを見詰めては頭に疑問符を浮かべた。
「うっしーにこんな質問したのは俺だったけど……」
リンゴよりも赤くした頬を隠すように牛沢の手に頬を押し付けてはじっと目をみつめる。
「うっしーは俺の王子様だよ」
言ってみたものの途中から恥ずかしくなってきたキヨは涙で潤ませた瞳をサッと逸らす。その様子に軽く笑った牛沢が恨めしくて思わず牛沢を睨み付ける。
「俺はきっとお前にキスしないと思うわ」
「え、なんで…」
「的外れな質問だな?」
思ってもなかった返答にキヨは素っ頓狂な声で疑問を投げれば牛沢は片眉を跳ね上げてそう述べた。
「さっきも言ったけどお前がどんな原因であろうと寝たきりになったんなら硝子の棺に閉じ込めて俺の傍に置き続けるから。」
「~~~…!」
じっと目を見詰めてそう宣言した牛沢から目を逸らせずに居ればボッと顔が熱くなる感覚が襲いかかった。思わずリンゴを取り落とせば今までリンゴを持っていた手を絡め取られて腰を抱き寄せられる。
「お前みたいな絶世の美男逃すわけ無いだろ?」
ニヤリと笑ったその瞳には獰猛な光がギラついていた。
コメント
2件
うわぁ。。。すごい。抽象的なお題描くのにがてなんですけど、めちゃドキドキしました。好きです。
あ〜〜〜好きですありがとうございます🥹🥹🥹🥰🥰🥰