僕は家族から非難された。
僕はスマホの管理が苦手だった。勉強しようと思っていても、気付けば机から離れてスマホに手を伸ばしていた。所謂スマホ依存症である。家族もその事に頭を抱えていた。そこである日、兄が、僕のスマホを管理しよう、と言った。兄にとってスマホの制限等の操作はお手の物だった。僕もこれは治さないといけないと感じていたため、兄に僕のスマホを託した。
今思えば馬鹿なことをしたものだ。家族といえ、自身の情報を他人に預けるなんて御法度だ。預ける相手が全く知らない人だなんてことは、無論、論外である。しかし、身近すぎると、人は、相手の情報を知りたいと思ってしまうものだ。大抵の場合はスマホのパスワードが分からなくて、結局情報を得られず終わる。が、兄は僕のスマホのパスワードを知っていた。というよりも、教えた。お前はあまりにも警戒心というものがなさすぎた。家族に隠していたことがあっただろう。それを知れば、家族はみな絶望することは知っていただろう。なのに、お前は、預けた。兄に、自身のスマホを。まだスマホの知識があまりない母に預けていればバレなかったろうに、お前は、兄に預けた。全ての元凶はここにある。
この日から僕は兄に信頼というものを置いたことはない。兄は僕のスマホの検索履歴、写真、さらには削除した写真の情報まで全てを家族に晒した。僕がゲイセクシュアル、ケモナーだと思わせる(というか事実そうである)情報を家族に暴露した。家族は、LGBTQだとか異常性癖だとかいうものが大嫌いであり、テレビでタレントが自身の性的マイノリティーを告白した時なんかは度々非難していた。それを見ていて、そうなることは知っていた。だから隠していた。当然僕は家族から非難された。非難というよりも、やはり絶望された。
確かに、突然息子のそんな事情を明かされて、母はどれほど困惑、絶望したかは今になれば分かる。しかし、母から”お前を殺して私も死ぬ、お前をそんな息子に育てたつもりはない”と言われたことは、あまりにも深く、僕の心に傷をつけた。無論出ていけとも言われた。しかし、以前別のことで叱られて、同様に出ていけと言われて実際に出ていこうとした時に、頬を思いきり叩かれた記憶があったので、何もせずに俯いてとりあえずその場を凌いだ。
確かその後、突然母から抱きしめられて”もうそんな心持たないよね、家族の一員だからね”とか言われた気がしたが、心に響くはずもなかった。僕はトイレで密かに泣いた。とにかく、泣いた。その時の感情が哀しみなのか、はたまた憎しみなのかはよく分からなかった。とにかく、泣いた。泣いていれば誰か救ってくれるとか思っていたのだろうか。
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