テラーノベル
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スタート!
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「ッ、!! 」
飛び出そうとした時、叶と目が合った
とおこさんもそれを見たのか、心做しか顔が明るい
ただ、向こうは焦りでテンパっているのか
いつものような冷静さは微塵もなく、なにかを叫んでこっちに手を伸ばして来る
それに応えるように、俺も手を伸ばす
「叶ーッ!!!」
「こんのッ…バカボスがぁッ!!」
パシッ
手のひらが暖かい
だけどまずい。片手はとおこさんを支えてるから片手だけで叶の手を掴んでいることになる
とおこさんはというと、どうすればいいのか分からず、俺の腕の中で震えている
俺の手も、段々と震えてくる
力が、入らない
「葛葉ッッ!!頑張ってッ!お願いッッ!!!」
「僕は絶対に離さないからッッ!!とおこさんの事も離さないでよッッ!!!」
わかってるよ。叶。
ありがとうな、そんな言葉をお前から貰うとは思ってもなかったよ
「とおこさんッッ…手、伸ばせるッ……?」
「へっ…は、はいっ!」
「叶の手、掴んでくれッッ…」
もう片方の手使えれば、ワンチャンいける
叶に負担は掛かるけど、頼むぞ
「ふっ……!」
「とおこさんッ…!」
叶の手をとおこさんが掴む
とおこさんは軽いからすぐに上に引き寄せられる。
ヘリに乗せられたとおこさんもまた俺に手を伸ばしてくれる。
だけど、ごめん
もう手が動かないんだ
力が入らないんだよ。ほぼ、叶の力で俺はここにいるといっても過言では無い
「ッ、おいボスッッ!!しっかりしてくれよッ!」
額に雫が零れてくる。叶が泣いていると気づくのには、少し時間がかかってしまった。
叶の手も震えてきている。叶がなにか言っている。だけどそれも聞こえなくなってきた。
後ろで話しているメイカさんの声や微かに聞こえる無線の声が雑音になってしまっている
「葛葉さんッッ!!ねぇッ!お願いッ!!!」
「絶対にッッ…死んじゃダメですよッッ!!!」
なんでそんな顔するんすか、とおこさん。
俺が泣かせたみたいじゃないすか。
「ッッい”ッ……」
肩に撃ち込まれた傷がズキズキと痛む
多分この感覚だと出血もしているだろう。
さっきから視界が曇ってたり、耳鳴りがしているのはこれのせいか。
「ごめんなさいッッ…」
「2人ともッッッ……」
ヒュッ…
手が、暖かく無くなった。
代わりに冷たい空気が体をまとい、傷を刺激する。
嫌だ
死にたくない、こんな所で死んでたまるかよ
まだ鴉のみんなでやりたい事あるんだよ。
とおこさんとだって、まだ雪合戦してねぇよ。
最後の大型、確かまだやってなかったよな。
俺はまだ
この街でやりたいことがあるんだよ。
手足を動かした、もがきにもがいた。
髪が揺れて、服が揺れて、羽が揺れて、バタバタと音をたてる。
だけど掴む物は全部空気で。
涙で視界がぼやけて、上の様子がよく分からない。
「なぁーに死んだ様な顔してんだよッッ!!」
ガシッ!
「はッッ……」
「ここで死なれたら警察署が騒ぐんだよッ!」
「副署長としてほっとける訳ねぇだろッッ!!」
手首を荒々しく掴まれる
犯罪者に対する警察の態度としては相応しいかもしれないな。
SHAKAさんよ。
「ほんとにその通りですよッ!!」
「うちのとおこを泣かせんじゃねぇッッ!!」
SHAKAさんの体温に、もう1人の体温が重なる
言葉こそ荒々しかったが、優しく包む様な、優しくて、力強い温かさ。
流石、救急隊のトップだな
ぺいんとさんよ。
2人で一斉に持ち上げられる
大の男2人でやっとの様子だってのに、1人で耐えてた叶に頭が上がらないな
もちろん、この2人にも一生の恩が出来てしまった。
額に冷たい物が当たる
ヘリの床に俺は寝かされている様だった
冷たいけど、暖かい。なんでだろうか。
安心して、目から涙が零れてくる
正直、泣いているという実感が無かったので、
安堵や安心、そんなものよりも先に驚きが勝ってしまった。
まぁ、そんな事より目の前の白衣の男性の方が俺が泣いている事に対して驚いている様だが。
「葛葉さん痛い所ある?!いやあるよねッ!」
「出血酷いな…SHAKAさ〜ん、あんま揺らさないでね」
「わかってるよ!」
そんな会話も段々上の空になってきて、眠たくなってくる。
寝てもいいだろうか。
そんな事を考える前に、俺は眠っていた
コメント
1件
( ^ω^ )♪ 最高✨