テラーノベル
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スタート!!!
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「っだぁぁ…よかったぁ……ッ」
肩の力が一気に抜ける。私の隣で叶さんも肩を落としている。きっと今葛葉さんは我らが医院長に手当を受けているだろう
気づけば目からボロボロと涙がこぼれ落ちており、少し意識が霞んできた。
当たり前だ。私だって無傷じゃないし疲労だって溜まっている
「とおこさッ……大丈夫ッ…?」
「ぅッ…すみません……ちょっとッ…」
体が左右に揺れて、目の前の光景がぼやけて、2重になって重なって、フラッシュバックを繰り返す。
「叶さん、後ろの席にとおこさん寝させてあげてください」
「そうだね」
軽々と体を持ち上げられ、椅子に寝かせられる
気づけば髪を結ぶリボンが取れており、椅子に寝かせられると同時に、クシャリと髪が音を立てる
「すみま、せん……」
「大丈夫ですよ。だけど安全の保証は出来ないですけど…」
あぁそうか、ここだって戦場なんだった
今この場にも何人もの人が血を流しながら歯を食いしばって戦っているんだ。私がこんな所で
何も知らないフリして寝てていいのか?
動ける。別に動ける。私だって救急隊なんだ
命を救わなきゃいけないのに。
そう思っても体は動かないし、筋肉に力を入れようとしても入らない
「とおこさん安心してくださいよ!俺らだってタフじゃないんで!」
運転席の方から声が聞こえる。きっとギザ歯の彼だろう。
「ふふ……ありがとうございます……」
私は重くなる体に身を任せてまぶたを閉じた。
「ッは……」
次に目を覚ましたのは見慣れているはずの病室だった。軽くなったはずの体はまだ動かすことが難しいらしく、目をチラチラと動かすぐらいしか出来ない。
窓の外から注ぎ込まれる暖かな日差しに少し目を伏せながら、大きく深呼吸をした。
「ぁー…ぅぅ、あ…」
声を出そうとしてみるが、掠れた声にも届かず
息に混ざっているのは音とも言えない雑音
いつも聞いてるはずの自分の声が、常日頃より弱弱しく感じてしまう。
「…」
今更かも知れないが、葛葉さんは無事なんだろうか。私より強かったとしても、私より酷い傷を負わされているんだ
まだ目を覚ましていないかも知れない。
いや、葛葉さんの事だし起きていると思う。
いや、最悪の場合…
亡くなっているかもしれない
そう思うだけで嫌な冷や汗をかく。
亡くなった彼を想像出来ない
私の頭の中の彼は、いつも笑っていた
どこか不器用ながらも、いつも笑わせてくれた
たまに空振ってしまったり、はちゃめちゃ言われた事もあった。
嫌じゃなかった
楽しかった
あの時間は、私にとって大切だった
そんな時間を作り上げてくれた人が、死ぬ?
想像出来る出来ない以前に
嫌だった
頭の中に、”あの時”の葛葉さんが映る
バンッ
と耳に響いたあの痛々しい音
目に映った赤い液体。
顔にへばりつく、生暖かい温度。
鼻腔の奥を刺激される鉄の様な匂い。
想像出来てしまった。あの人が死ぬ姿を。
彼の体に撃ち込まれた銃弾が、もし彼の命奪っていたら、あの時
葛葉さんが動かなくなてっしまっていたら。
「ッふー…」
落ち着け、落ち着け侵略者。
私は侵略者。そうだ。こんな事で慌てる様にプログラミングはされていないだろう
しかし冷や汗は止まらない。息もどんどん荒くなる。嫌な想像で頭がいっぱいになる。
「ぅ”〜っ……」
落ち着きなさい侵略者!!
亡くなっているかもしれない?生きてる可能性だてっあるんですよ!
大丈夫だ。あの人は強いんだから。
とおこ。信じなさい葛葉さんを。彼はボスですよ
信じなさい。
ガラガラッ…
「…?」
誰か入って来た?看護師やお医者さんでは無いだろう。ノックが無い。
それに足音と混ざって、固いものが床に当たる音がする。
松葉杖だろうか?
「…」
ふと目の前に影が落ちる。綺麗な白髪が肌に優しく触れる。目の前の彼は綺麗な赤い目を大きく見開いて言葉を失っているのか、ハクハクと口を動かしている
紛れもなく生きていた。
よかった。
葛葉さん。
カランカランッ…!
「とおこッ……さッッ……」
松葉杖が床に放り出される。目の前の葛葉さんは膝から崩れ落ち、目に涙を貯めている。
私の目からも涙が溢れる感覚がする
彼の暖かい手が涙と共に頬に伝わる
その温かさが彼の生きてる証明であり証だった
「ぁ…ぅ……」
“葛葉さん”
“生きてたんですね”
“よかったですね”
そう言いたかったけど、声が掠れるばかりで
言葉に出来ない。
力を振り絞って、彼の手に自分の手を重ねた
彼は驚いたのか照れたのか分からないが一瞬目を逸らしたが、嬉しそうに笑いかけてくれた
「とおこさんッ…」
「よかった…ッ生きててッ……」
私が言いたかった事、全部言ってくれた
彼の目から零れる涙が私の涙と混ざりあって
どちらのものか分からなくなる。
なんだかその光景が可笑しくて、2人でぐしゃぐしゃな顔をしながら笑いあった
「ぁあッ…グスッ……ぅぁッ…ヒクッ」
私はしゃくり声をあげるしか出来なかった
声をかけたかった。ずっと葛葉さんが声を掛けてくれた。
なぜかドタドタと廊下がうるさい。
そういえば扉は開いたままだし、葛葉さんの病室に誰も居なかったら担当医も慌てるだろう
それにさっきの松葉杖の音も静かな病院からすれば大きな音だ。
もしかしたらそれで気づいたのかもしれない
「こらー!また抜け出してー!」
扉の方から声がする
多分この声、リオンさんだ。
“また”という事は何度も私の病室に来ているのだろうか?
「…葛葉?」
なにかおかしいと思ったのだろう。リオンさんが葛葉さんの近くにしゃがみこむ
「確かにとおこちゃんが目覚めないのは寂しいけど…抜け出した、ら…」
リオンさんとパチリと目が合う。
彼女も大きく目を見開いて、大きく息を吸い込む。
一瞬慌ててしまったのか固まってしまった。
だけど彼女は優しく葛葉さんの頭を軽く弾いて
私に泣きそうな瞳で優しく微笑みかける。
「まったくッ…すぐ言えバカッ…!」
葛葉さんは弾かれた所が痛いのかベットに頭を埋めてしまっている。
それにふと笑みが零れてしまい。彼に少し
むっとした表情で見つめられる。
だけどまた、笑いかけてくれる。
私もリオンさんの真似っ子で葛葉さんに笑いかける。
廊下が騒ぎ始めたことも気にせずに。
コメント
13件
最高すぎる、、、、 もうここにお墓10個ほど建てようかな これで何回でも尊死できる