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2 - 大悲願寺の白萩

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2021年12月27日

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 萩咲き乱れる八月のこと。

 処は今の東京都、大悲願寺。

 「田村のお方様は、お元気ですか」

 まだ若さの残る男は、反応を待たず、「茶でも持ってきます」と出ていった。

 茶を出し、「母上も変わりないですか、兄上は・・・お元気そうだ」とのんびりと語る。一言でいえば、やさしい喋り方だ。昔から変わっていなかった。

 「心配なのはお前の方だ」

 「えっ?」

 「まだ剣の作法は覚えておるか?」

 勿論、そういうことが聞きたいのではない。ただ、案外良い反応をしたのが、少し面白かった。

 「忘れたといいたいところですがねえ。俗世を捨てるというのは、なかなか難しい。まあ、比叡山延暦寺なんかの僧兵のようには、戦いませんがね」

 何か長い棒でも持っているような手つきで、しゅっ、しゅっと振り回す真似をする。これを出家前にやっておけば、今頃・・・と考えたが、そんなことがあれば、己が必ず阻止するだろうが。実際、自分はこの男を無惨にも斬殺しているのだ。世においては。

 しかし、昔の可愛らしい姿を思い出した。

 「竺丸」

 くは、と何故か喉から笑いが込み上げた。

 「何ですか」

 「お前の僧の姿が、あまりにも似合わんくて・・・ははは」

 出家させたのは兄上にございましょう、といった顔をする。「まあ、この生活はとても気にいっておりますけどねえ」

 齢が十近く離れているせいか、今まで自分は、此奴を可愛らしいままと思っていたのか。それに、この頭を丸めた青年の姿がツボに入ったのだ。



 「お帰りになりますか」

 夕暮れ時になり、陸奥とは離れた大悲願寺の風がまた違って、心地よい。

 「ああ」

 「後で江戸の御屋敷に萩は株分けいたします」

 先に、話を聞いている間、そっちのけで萩をうっとりと眺めていたのに気付かれたのか。

 「つまり、幽霊からもらった萩か。呪われそうじゃ」






〈人物紹介〉

竺丸・・・(伊達小次郎)伊達政宗の弟。伊達政宗に殺された説(前回のお話)もあるが、今回のお話は出家したという説を採りました。また、前回は年子ということですが、今回は10歳差にしました。




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