恋なんてした事ない。
恋なんてしてどうするの?
付き合って、ハグして、
キスして、 そんな事もして、
なんの意味があるの?
好き同士だから?
愛してるから?
気持ちいから?
俺には付き合っている、
俗に言うリア充。の
心境が心底分からなかった。
「吉田さん、好きです 」
女々しい目で俺を見てくる
クラスの女子。
俺ははっきり言うと
こいつの事は大嫌い。
好きでもないのに
付き合いたくないし
俺の初めてをこんな奴に
あげたくもない。
もちろん答えは
「ごめん、今は学生としての
義務を全うしたいかな」
少し困ったような笑顔を
緻密に調整された表情筋を
使って作り出す。
「そっか、こちらこそ、ごめんね」
さっきより途切れ途切れに
話すこいつを見て
こいつはこの後クラスで一緒に
群がっている女子の所にでも
駆け寄って号泣でも するんだろ。
嫌いな奴に告白された
俺が一番の被害者だっつーの。
心の中で大きく舌打ちを
して告白場所の定番となっている
体育館裏を後にした。
緑化委員だった俺は
毎朝少し早くに学校へ行き
花壇の花に水をやっていた。
ある日気づいた。一つだけ
咲いていない花があることに。
周りの花に埋もれて
自分を主張できていない。
俺みたいでなんだか
心が締め付けけられた。
それっきりだった
俺が恋なんてワードに触れたのは。
ドラマなんかで
演じることはあったけど
相手に本気になった事なんて
微塵も無い。
薄々気づいていた。
俺は学生時代のあいつが
嫌いなんじゃない。
そもそも女性を恋愛対象に
見ることが無理だったんだって。
かと言って男と恋をしようなんて
思わなかったし。
恋愛対象がハッキリしたところで
俺は恋なんて興味なかった。
はずだったのに。
S「うぃーす」
レッスン場に2番目に到着した男。
ドラマ、映画、CMで 一度は絶対に
見たことあるのではないか。
この男を。
佐野勇斗。
ちょーイケメンなM!LKの最年長。
音楽番組でM!LKが出る際は
佐野勇斗所属の,,!と
紹介されるほどの有名人。
そんな勇斗を俺は
同じグループのメンバーとして
誇りに思っていた。
Y「うぃー」
勇斗の挨拶、?よりも
短い返事を返すと
勇斗が俺の隣の椅子に腰掛ける。
S「まだみんな来てないっぽいな」
Y「まだ40分前だもん」
S「お前何分前から来てたん」
Y「見てわからんか、今来たとこだ」
畳み掛けの薄い上着をイスに
放り投げる。
S「てか仁人?」
Y「ん?なにー?」
S「昨日練習の時に
転んでたけど大丈夫?」
Y「あーあれね湿布
貼って寝たからマシになったわ」
S「そっか、良かったわ」
Y「わざわざ心配しなくても笑」
S「何言ってんの
大切なメンバーでしょ」
少しムスッとしながら
こちらを見つめてくる勇斗は
俺が長年毛嫌いしてきた
恋愛というとっくに
閉ざしていた扉をこじ開ていた。
Y「どーもどーも、」
目が合って直ぐに
スマホに目を戻した。
あんなに美しい瞳で
見られてしまったら。
数年前の俺は
今の俺が気に入らないと思う。
青春の醍醐味と言っても
いいほどの恋愛を
自ら遠ざけていたのに
直ぐに俺は 勇斗に恋を
してしまったのだから。
乾いた土に埋められて
本当は枯れたまま
抜かれるはずだった
俺の恋という花に
佐野勇斗という人物が
水を笑顔で注いでくれたから。
頭の中でそんなことを考えていると
3番のりの柔太朗が入ってきた。
YJ「2人とも相変わらず早いねー」
俺たちの向かいの椅子に座った
柔太朗は来年公開の 映画の
資料に目を通し始めた。
Y「アロハとのやつじゃん」
S 「あ、ほんとだ
EBiDAN同士って初だよね?」
YJ「そーそー、緊張してるんだよね笑」
S「アロハ相手にー?」
YJ「相手がアロハだからだよぉ」
弱音を吐いている
柔太朗を見て笑っている勇斗の
横顔をこっそり見つめる。
ほんと、綺麗なんだな。
S「、ん?」
俺の熱の篭った視線を
感じ取ったのか勇斗がこちらをみる。
いつもしないはずの匂いがする。
Y「ね、香水かなんか変えた?」
S「おっ、よく気づいたな」
Y「いつもより爽やかな感じ」
S「夏が近づいてきたからなー」
去年の夏は確か違う香水を
つけてたなぁー。
なんてストーカーレベルの
勇斗の変化に気づく自分を
少々気味悪がりながら
再びスマホに目をやる。
SS「お疲れ様ぁ!」
D「あ゙ぁっ、つかれたぁ、」
YJ「この後皆で飯行かね?」
SS「ええなぁ!」
D「俺もさんせーい!」
YJ「勇ちゃん達は?」
S「今日はいいかなー
3人で行ってこいよ」
ん?3人?と思っていると
勇斗が柔太朗達にはバレないような
背中をコツンとゴツゴツとした指で
つついてきた。
勇斗を見上げるとニヤッとしている。
これは、、、。
S「吉田さんはこの後
俺の家の片付けです 」
Y「そろそろかなって思ってたよ」
溜息をつきながら肩を落とす。
フリをした。
本当は勇斗と2人っきりに
なれる少ない時間を
嬉しく思っている。
Y「お前ん家積雪してるやん」
S「言い過ぎ、傷ついたぁ、」
YJ「笑とりま片付けがんば!」
D「どこ行くー?」
SS「俺焼肉ー!」
Y「きったねぇ」
S「おい」
Y「事実じゃん」
S「何も言い返せないのが悲しいわ」
Y「そんなこと言ってないではよ動け」
俺はソファーに乱雑に
投げ捨てられた勇斗の匂いのする
衣服に手をかけ始めていた。
S「はいはーい」
Y「ここに服集めてるから
洗濯してきて」
S「りょーかい」
勇斗が衣服の入った洗濯カゴを
もって玄関近くの
洗濯機へ急ぎ足で 向かった。
Y「あ、まだあるじゃん」
ソファーの下からはみ出た
灰色のスウェットを拾い上げる。
Y「もっていくか、」
洗濯機のある方へ方向転換をして
1歩目を踏み出したところで
俺の足がとまる。
Y「ちょっとだけ」
そう言った俺は勇斗の
匂いが一番するであろう
綺麗な腹筋の隠されていた
場所に顔を埋める。
目を瞑りすぅーっと息を吸えば
幸せな匂いに包まれる。
勇斗の他の何にも変え難い
独特ないい匂いが今、
俺の全てを支配しているのだ。
Y「はやと、」
ボソッと呟く自分が
少し可哀想に思えてきた。
早くしないと
勇斗が洗濯機を回し終えて
こちらへ戻ってきてしまうと思い
スウェットを自分の顔から
剥がすと同時に 目を開けると
そこには
S「仁人?」
Y「あ、はや、と」
見られてたのか、
いや、見られてない。
事を心の中で必死に願った。
S「もう1枚あったんだったら
先に言えよー、
もう洗濯機回し始めてるしー」
Y「え、あ、すまん、すまん、」
S「ほれ、パスっ」
Y「あ、はい」
ポイッと少し丸めた
スウェットを勇斗へ投げる。
S「もー、ほんとにー」
ブツブツ言いながら洗濯機へと
向かう勇斗の大きな背中を眺めながら
バレたらいっそ楽になれたのかなと
思う自分に少し驚いた。
S「いやー、助かりましたー」
Y「ほんと、時給
発生しないのがおかしい」
S「今、飯でお詫びしてんじゃんか 」
Y「まぁ、これで良しとする」
S「なんだよ、その言い方は〜」
もぐもぐとカレーを
頬張る俺のほっぺたを
スプーンを持っている
逆の手で軽く抓ってくる。
Y「んっ、!?」
S「ふははっ」
ゴクッと急いで飲み込み
勇斗へ一言。
Y「おまえっ、カレー食ってんだよ!」
S「いいじゃぁーん、ちょっとくらい」
Y「もぉ、、」
俺の反応が面白かったのか
口角を上げたまま
口へカレーを運ぶ勇斗を
愛おしく思った。
Y「じゃ、また明日」
S「うぃーす」
勇斗の家の広い玄関で
靴を履き、家から出ようとした瞬間。
S「ねぇ、仁人」
Y「ん?」
S「仁人って俺の事好きなん」
Y「え、?」
S「いやーほらさ、
さっき俺の服に顔埋めてなかった、?」
Y「ねー、気づいてたの」
S「否定はしないんだ」
Y「事実だし、」
意外とあっさり認めた自分に
うんざりした。
気持ち悪がられたよな。
もうこれから気まづいよな。
否定したら良かったのに。
S「そーなのか、」
Y「キモイ?失望した?」
S「ちょー、うれし、」
Y「、、、、は??」
S「それって、恋愛の方だよね?」
Y「そ、そーだけど、」
S「俺も好きだよ、仁人のこと」
Y「え、いや、は、そ、えぇ、?
いや、無理してそんな、、」
S「この目が無理してるように見えんの」
肩をグンッと捕まれ
あと数センチでキス
するのではないかという
距離に顔を待っていかれる。
Y「みえ、ません、/」
あまりにも突然の出来事で
顔がぶわっと赤くなる。
S「あーあっ、良かった」
S「俺だけだと思ってたもん、
仁人の事そーいう目で見てんの」
Y「そーいう目って、、?」
まだまだ赤い顔を抑えながら問う。
S「え?エロい目」
Y「え!!?」
S「いやー、仁人のさー、そのお腹とか
目とか、ぽてっとした口とか、さ、?」
Y「どこがえろいんだよ、、」
S「仁人はね、エロいよ」
Y「勇斗だって、、」
S「ん?」
Y「勇斗だって、爽やかな顔の割に
腹筋バキバキだし、手だって、エロいし
何でも見抜いてきそうなその目だって、」
S「エロいと思ってんだ?」
数分前まで普通の
メンバー同士だったとは思えない会話。
S「ちょっと、泊まってかね? 」
Y「え、いいの」
S「全然、てか泊まってほしい」
Y「嬉しい、かも」
S「で、えっちしよ」
Y「帰宅させていただきます」
S「ぬぇ、なんでよ」
Y「性欲まみれのクソガキが、」
S「最低だぞ!」
吉田仁人恋の花。
初めて開花しました。
これからたくさんの愛情を
2人で注いで行けたらいいな。
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