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秘密を分かち合う間柄になったのはいいのだけれど、どうもそれ以来私は、今まで尊敬こそすれ意識したことなどはなかった矢代チーフのことが、なんだか気になるようになってしまったみたいで──。
だって、仕事ではパーフェクトなあの矢代チーフが、内緒でミコ&リコのようなかわいいものが好きだったなんて、それこそギャップ萌えも甚だしいっていうか──。
あの日ショップで、『男がかわいいもの好きとか、ちょっと恥ずかしいだろ』だなんて、照れながら告げられた顔が、どうにも頭から離れなくて、思い出す度にそわそわとして落ち着かなくなっちゃいそうだった……。
気になってついつい矢代チーフのデスクの方をチラ見することが増えると、当のチーフとも度々目が合ったりするようになった。
そうしてその都度、メガネのレンズ越しの目を薄っすらと細めて、”秘密だ”と言うように口の端にふっと笑みを浮かべる顔に、よけいにときめいてしまっていた私に、
「ねぇ、美都?」と、左隣に座る愛未(アミ)が、唐突に声をかけてきた。
「えっ、な、なに?」
チーフの方を見ていたせいで、視線が泳ぎまくる。
「ねぇ美都ったら、さっきからチーフのこと見てるでしょ?」
「そそ、そ、そんなこと……ないよ?」
目ざとく指摘をされて、ごまかしたのはいいけれど、あまりにわざとらしすぎて、アミには「ぜぇったいに、見てたってば」と、追い討ちをかけられる羽目になった。
そこへ、「……美都、チーフが好きになっちゃったの?」と、愛実(エミ)の天然爆弾が横合いから放り込まれて、無意識にボッと顔が赤らむ。
「あっ、美都ったら赤くなってる。じゃあ、もしかして図星なの?」
アミの問いかけに、頭をぶんぶんと左右に振りたくる。
「こないだ聞いた時には、好きでも嫌いでもないって言ってたのに、急にどうしちゃったの? 詳しく教えてほしいな、美都」
と、エミ──。
「そうそう、もうランチの時間だし、お昼食べながらでも、教えてもらわないとね」
と、アミからも突っ込まれて、私にはすっかり逃げ場がなくなってしまった──。