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🎧終わりの、始まり/第2章最終話「アンコールは、もういらない」
ライブ終わり。
拍手が、まだ少しだけ残っている。
ステージの照明が、ゆっくり落ちていく。
最後の音は、とっくに止まってる。
でも。
余韻だけが、残ってる。
袖に戻る。
琉夏「……っは」
息を吐く。
汗と、熱と、音の残り。
全部が混ざってる。
少し遅れて、冬星が隣に来る。
何も言わない。
でも。
分かる。
今日の音。
今までで、一番良かった。
琉夏「……なあ」
冬星「なに」
振り返らないまま、聞く。
少しだけ、間。
琉夏「もしさ」
言葉を選ぶ。
琉夏「どっちか、いなくなったら」
ぽつりと落とす。
冬星は、少しだけ黙る。
冬星「考えてない」
即答。
でも。
それで終わらせない。
冬星「でも」
少しだけ間。
冬星「ならない」
静かな声。
それは、願いでも。
約束でもない。
ただの、選択。
息が、少しだけ軽くなる。
琉夏「……そっか」
小さく笑う。
楽屋の外。
まだざわついてる。
「アンコールどうします?」
スタッフの声。
少しだけ、止まる。
観客は、まだ待ってる。
もう一回、出れば。
また歓声が上がる。
でも。
琉夏「……いい」
ぽつりと言う。
スタッフが、少し驚く。
冬星「いいの」
確認みたいに聞く。
琉夏「いい」
はっきり言う。
琉夏「さっきので、十分だろ」
冬星は、少しだけ見てから。
冬星「……うん」
短く頷く。
それで、決まる。
ステージには戻らない。
音は、もう鳴らさない。
でも。
それで終わりじゃない。
楽屋を出る。
夜の空気。
少しだけ冷たい。
並んで歩く。
いつもの距離。
でも。
少しだけ、違う。
琉夏「……帰るか」
冬星「うん」
それだけ。
特別な言葉は、ない。
約束もしない。
名前も、つけない。
でも。
もう分かってる。
“いなくならない”んじゃない。
“いなくならないことを、選んでる”
それだけ。
夜の中に、二人の足音が重なる。
アンコールは、もういらない。
このまま、続いていくから。
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