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🎧短編「周りから見たふたり」
──とあるライブハウス・スタッフ視点
最初に見たときから、変な二人だと思ってた。
別に、仲がいいのは普通。
バンドなんて大体そうだし。
でも、あの二人はちょっと違う。
距離が、妙に自然すぎる。
楽屋の隅。
ベースの方がソファに座ってて、ギターの方がその隣。
何を話すでもない。
でも、離れない。
(……あれで何もないわけないだろ)
そう思う。
でも、決定的な何かはない。
ある日。
リハの合間。
ベースの方が、ぼそっと言う。
琉夏「それ違う」
ギターの方が弾いてたフレーズに対して。
普通なら、ちょっと空気が張る場面。
でも。
冬星「どこ」
琉夏「そこ」
それだけ。
数回弾き直して。
ぴったり合う。
(いや、わかんのかよそれで)
他のメンバーがぽかんとしてる横で、二人は普通。
別の日。
差し入れの前。
ベースの方が手を伸ばしかける。
その瞬間。
冬星「それ甘い」
止まる手。
琉夏「じゃあいい」
別のを取る。
(好み把握してるレベルじゃねえだろ)
さらに。
飲みかけのペットボトル。
普通に回し飲み。
一瞬も躊躇なし。
(いやいやいや)
極めつけは、あのライブのあと。
「付き合ってんの?」
軽いノリで聞いた。
琉夏「違う」
冬星「違う」
即答。
(いや絶対嘘だろ)
でも。
そのあと。
「……じゃあなに?」
って聞いたとき。
二人とも、ちょっとだけ止まった。
あの“間”。
あれで、確信した。
(ああ、名前つけてないだけか)
それ以来、見方が変わった。
ライブ中。
目を合わせるタイミング。
呼吸。
音の入り。
全部、ぴったりすぎる。
それはもう、技術じゃない。
“関係性”だ。
終わったあと。
楽屋で。
また、隣にいる。
会話は少ない。
でも。
離れない。
あるとき、スタッフ同士で話した。
「あの二人さ」
「うん」
「付き合ってると思う?」
少し考えて。
「……違うと思う」
そう答えた。
「え、なんで?」
少しだけ笑って。
「付き合ってるやつより、やばい」
別の日。
外で見かけた。
二人並んで歩いてる。
普通の距離。
でも。
空気が違う。
恋人っぽい、じゃない。
もっと自然。
(ああ)
あれはたぶん。
“そういう関係”じゃなくて。
“そうなってる関係”なんだ。
名前はない。
でも。
一番、離れないやつ。
そういうのを、たまに見る。