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𝓡𝓲𝓷𝓴𝓪☽ ໋꙳
906
#つづくかしらん☆
神楽 美麗
99
#最後の作品です。是非見てください
炭酸じゅ ~す
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第56話、一気に核心に迫る回でしたね!アリアの「簒奪の五指」に同時発動できない制約があったこと、オルビスが人間の作ったシステムが暴走した存在だって話……世界観の厚みがどんどん増して好きです。それでいてザインの「異能くれ」→アリアの「えー?何かヤダ」の流れは笑いました。みんなでザインを弄りつつも温かく守ってる感じが絶妙で、緊迫と緩和のバランスが気持ちよかったです。
巨大な建物の2階に着くと、引き続き蜘蛛型の敵が襲ってきた。
それに加えて、遠方からは銃撃が飛んでくる。
……ただ、銃撃についてはアリアが単独で処理することができた。
異能の『対象化拒否』で、銃撃の対象にならないからだ。
「……やっぱり便利だなぁ、あの異能は……」
「でも、見ていて冷や冷やしますよね……」
ザインとメルヴィナは、ガルドの影からアリアを見守っていた。
ガルドは銃撃を受けているものの、大きな盾を使って――横へ、後ろへ、弾を流していく。
「なかなか強い衝撃ですが、以前アリアさんから言われた通り――
……冷静にいなしていけば、大丈夫ですね」
「ガルド、凄いね……」
単独で仲間を守れるというのは、今回の戦いにおいてはかなり重要だ。
アリアがガルドを求めた理由を、今なら全員が理解することができた。
銃撃を完全に停止させたあと、ガルドたちは蜘蛛型の敵の――群れの中央に雪崩れ込んだ。
合わせて、アリアもそこに合流する。
「あたしが最初に、攪乱するねー」
アリアはわざと敵の視界に入りながら、うろちょろと動きまわった。
敵はアリアに攻撃しようとするも、それができないため――挙動不審な動きになる個体も多かった。
そんな敵を、ガルドは絶対に折れない剣で次々と破壊していく。
「……これさぁ、オルビスにも余裕で勝てるんじゃないか?
だって、アリアは攻撃の対象にできないんだし……」
「あ……、それは難しいそうですよ。アリアさんの異能の限界で」
「へぇ? 『対象化拒否』って、限界があるんだ?」
「いえ、そっちではなく。『簒奪の五指』の方です」
「……は?」
メルヴィナの言葉に、ザインは呆気にとられた。
その異能のことは、名前だけなら知っているが――
……確かそれを持っていた男は、アリアにやられたんじゃなかったっけ……?
そんなザインの表情を見て、メルヴィナは軽く溜息をついた。
「ザインさん……。
情報が周回遅れしてますよ……」
「ぬ、ぬうぅ……! これは、情報屋の名折れ……ッ!!」
ザインの心は複雑だった。
雑用をこなす一方、情報だけは第一人者であろうとしたのに――
……ただ、相手はアリアなのだ。とてもとても、憎む気にはなれなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――アリア先生!
今までの総括をお願いします!!」
2階の敵が全て破壊されると、ザインがアリアに懇願した。
「あー……。まぁ、それぞれ伝えた内容が違うからね。
命が懸かってるわけだし、あんまり愉快な話じゃないけど……伝えるね」
「お、おう……!」
思いがけず素直なアリアに、ザインは逆に怯んでしまう。
辺りを警戒しながら、敵がいないことを改めて確認したあと――アリアは話し始めた。
「むかーし、むかし。人間は便利なものを求めて、いろいろな研究をしていたの。
有史以来、人間を殺す道具もたくさん発明されたよ。例えば……その銃、とかね」
アリアはザインの持つ銃に視線を送った。
他の全員も、同様に銃を見る。
「そのうち、人間だけではできないことを可能にする――とっても大掛かりな存在を作り始めたの。
世界中に散らばる情報を集めたり、そこから問題を見つけて、人間に解決策を提示していったり――」
「……人間では、できないことを。それは、まるで……神、ですね」
メルヴィナの言葉に、アリアは頷いた。
「ソレは結局、人間たちの制御から外れて――魔力という力場を作り出して、世界中に広げた。
そして、世界の全域を改変したの。……たくさんの命を奪いながら、ね」
「その改変したものこそが……オルビスだ、と?
……なるほど、途方もない話だな」
ガルドの言葉に、メルヴィナは小さく彼の服を掴んだ。
「俺たちが暮らしていた場所は、常に魔力が満ちていた……。
しかし、この世界には魔力が無い。……これが、元々の姿だった……?」
「うん。昔は魔法なんてものはなかった。才能は溢れていたけど、異能もまだ少なかったかな」
「……アリアさんは――
だから、オルビス神を殺そうとしているんですか?」
メルヴィナが、アリアを見つめて質問する。
「そうだよ。でも、これはただの復讐。殺したあとは、どうなるかなんて分からない。
だけど、長期的に見れば――抑えられていた人間の可能性が、世界を別の方向に導いていくかもね」
「……まぁ、未来のことは知ったこっちゃないな。後世のことは、後世に任せるだけさ。
後世の連中が、そいつらの可能性で世界を変えていくなら――それはそれで、良いと思うぜ?」
……神の下で繁栄していくか。
あるいは、自分たちの足で繁栄していくか。
どちらが良いかは考え方次第だ。
前者が良いなら、オルビスは倒すべきではない。
後者が良いなら、オルビスは倒すべきだ。
「――でも、それって大昔のことなんですよね。
アリアさんは、どうして今……復讐を?」
「言わなきゃダメ?」
「ふっ。いつもなら『乙女の秘密ぅ』とか言って誤魔化すだろ?
言いたくなければ、それでも良いんじゃないか?」
「それじゃ――乙女の秘密ぅ」
緊迫した中、少しだけ、いつものように空気が緩んでいった。
明るく笑うアリアを見ながら、ザインは……それが一番なのだ、と考えてしまう。
「それとさ。アリアの異能のことを教えてくれよ。
俺はてっきり、『対象化拒否』だけだと思っていたんだ」
「ああ、そうなんだ? えっと、あたしの異能は『簒奪の五指』がひとつだけ。
情報屋も、名前は知っているよね」
「ああ。以前、調査の依頼があったからな」
「だよね。この異能は……他の人の異能を、5つだけ奪えるものなんだけど――」
「物騒だな、オイッ!!」
ザインの言葉に、アリアは苦笑いをする。
「あたしの旅は、オルビスを倒すための異能を集めるため……だったの。
異能を集めさえすれば、オルビスを倒すことができる――そんな風に考えている時代が、あたしにもありました」
「……え? きゅ、急に何だよ!?」
「理論的には問題なかったはずなんだけどね。
でも、いざ使ってみたら問題があって――」
アリアは自分の右手を見ながら、何度か軽く、握ってみる。
「――1つ1つなら問題なかったんだけど、同時には発動できなかったんだよね……」
「強引に使おうとすると、右腕に深い傷を負うんだ。
初めて見たときは、オレも驚いたな」
ガルドの言葉に、ザインは複雑そうな顔をする。
自分はそんなこと、何も知らなかった――
「それでねぇ。
あたしの魔法だけだと解決できなかったから、メルちゃんにも手伝いをお願いすることにしたの」
「ああ、例の……魔法陣、みたいなやつ?」
「そうそう、あたしは魔法陣を宙には描けないからね。
まぁ、この世界では……魔法陣は、異能でしか描けないんだけど」
「……なるほど。メルヴィナがこの戦いに参加した理由が分かったよ」
ザインは溜息をつきながら、メルヴィナとガルドを見た。
ふたりにはちゃんとした役割がある。しかし自分には――何も無いのだ。
しかし、ひとつだけ……それを回避する方法がある。
「――なぁ。俺にも何か、異能をくれないか?」
ザインの言葉に、アリアは驚いた。
メルヴィナとガルドも、静かにふたりを見守ってしまう。
そして、アリアの反応は――
「えー?」
「えー???」
「……何か、ヤダ」
――そんな感じだった。
「な、何で!?」
「君は、今のままの君でいてくれたらいいよ……」
「何だよ、その温かいまなざしは……!?」
「まぁまぁ。異能というのは、そんなに完璧なものではないからな。
下手をすれば、身を滅ぼしてしまうものだし」
「そ、そうですよ!
ザインさんは、きっと今のままが一番いいですよ……たぶん!」
残念ながら、ザインの申し出は――ガルドとメルヴィナからも、同意を得ることはできなかった。
「くそ……!
俺がいなかったら勝てなかった――そんな風に思わせるくらい、大活躍してやる!」
「そうそう。情報屋は、それが一番いいんだよ。
異能の『超攻撃強化』で敵を殲滅だぁー……とかになったら、やっぱり違うし。ね?」
「あー……。確かにザインさんのそんな姿、見たくはないですね」
「だから、何でだよ!?」
「ははは。ザインはもう、ムードメーカーってことで良いじゃないか」
「くそ……!
旦那の上から目線がムカつく……!!」
……何となく腰が落ち着いてしまったので、アリアは帽子から飲み物を出して、全員に渡していく。
ほっと一息をつくと、こんな非日常的な状況ではあるが……いつものような、落ち着いた雰囲気が溢れてくる。
アリアは目を閉じて、それを静かに感じていた。
――ただ、この場所での目的は、それではない。
「さて、そろそろ行こうか。
先はもう少しあるだろうけど――」
「おう。さっさと終わらせて、美味いメシでも食いに行こうぜ!」
ザインの言葉に、メルヴィナは静かに――自身の胸に、手を置いた。
様々な感情に乱れる中、ガルドがそっと、メルヴィナの側に寄り添っていく。
……メルヴィナはそんなガルドに、できるだけの笑顔で返事をすることにした。