START☞
疲労が溜まっていたすちは、帰宅するとほっとしたようにソファに沈み込んだ。
目の下にはうっすらと影が落ち、ネクタイを緩める手つきもどこかだるそうだ。
「すち、おつかれさま……栄養剤いる?」
みことは心配そうに眉を下げ、冷蔵庫から小瓶を取り出して差し出した。
「ありがと、みこちゃん。助かるよ……」
すちはそのままキャップをひねり、ぐいっと一気に喉に流し込む。
――その瞬間。
みことはラベルの色に目を留め、血の気が引いた。
それは見覚えのある“例の”幼児化ドリンクの色だった。
「すち! まって……それ飲まないでっ!!」
慌てて伸ばした手は、もう空を切っていた。
「……え?」
すちはぽかんと瞬きをしたかと思うと、次の瞬間、視界がふっと揺らぎ、身体から力が抜ける。
小さく、軽い――
みことの腕の中におさまるほどの体格になっていた。
「す、すち……?」
腕の中をそっと覗き込むと、そこにはふわふわした髪の、小さくなったすちがいた。
すちはまん丸の目をぱちぱちさせ、みことを見上げる。
そして、にこりと笑った。
「みこちゃ……かわいーねぇ……」
小さくなっても、変わらぬみこと大好きの声色。
その無防備な甘えに胸がきゅっと締めつけられ、みことの目にじわりと涙が浮かぶ。
「すち……ご、ごめん……ほんとにごめん……
間違えて渡しちゃって……」
声が震え、涙がぽろりとすちの頬に落ちる。
すると小さなすちは、みことの頬にちょん、と自分の手のひらを当てた。
大きさは小さくても、温度は変わらない。
「みこちゃ、なかないでぇ。すち、ここにいるよ……」
拙い言葉で慰めようとするその姿が余計に愛しくて、みことは唇を噛んだ。
そのまま胸元にぎゅっと抱き寄せると、小さなすちは満足そうに目を細め、
みことの胸に頬をこすりつけながら呟いた。
「みこちゃのにおい……すき……」
みことは涙を拭いながら、小さく震える声で返す。
「……大丈夫。 すちのこと、ちゃんと守るから……」
小さな手がみことの指をきゅっと握り返した。
幼児化しても、変わらずみことに寄り添おうとするその温かさに、 みことの胸は切なさと愛しさでいっぱいになっていった。
コメント
2件
みこちゃ呼びは可愛いすぎるんですが(๑♡∀♡๑)最高です!(๑•̀ㅁ•́ฅ✨