テラーノベル
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担がれた距離を時間から推察する。
マップモードがなくとも、台湾北部の地図は頭に入れてきた。
「あなた何してるの。よく落ち着いているわね。
華族の余裕?」
少女の名は四水だと教えてもらった。
「ここが、どの辺りか考えておりました」
俺は鉄格子の嵌った、窓脇に立って外を眺めつつ四水に答える。
指先から、鉄格子に魔法の紫電が走っているのに気づかれないように。
「逃げるにしても、場所がわからないと逃げ切れませんから」
「そうね。で、わかったの?」
「北投(ほくとう)の辺りかと思います」
「なんで、そう思うのよ」
「淡水河を台北橋から約1時間。距離を稼ぐために下流へと向かったと思いました」
俯いて座っていた宮小路さんも近寄って来て頷いてくれる。
「引き潮と順風に乗って時速10キロ前後で下ると、淡水河と基隆河が合流する汽水域辺り。関渡(かんと)に上陸したと考えられます」
「そ、それで?」
「そこから、荷馬車で農道を約半時。約2、3キロ奥地に向かったと考えるのが自然と思い、北投(ほくとう)周辺かと…」
「凄いわねあなた」
「知っている知識と照らし合わせただけです」
「違うわよ。凄いのは、なんでそこまで冷静なの?」
(ああ、そっち)
「慣れてますから…」
俺はニコリと微笑んでみせる。
「華族ってそういうものなの?」
四水に感心された。
「覚悟は教え込まれて入りますわ」
宮小路さんが懐に手を添える。
「覚悟って?」
「短刀は奪われてしまいましたが…」
そう言って悲しげな表情をする。
ああ、そう言えば袋に入れられたとき懐と腰は弄られたっけ…
「自分で命を絶つつもりなの?信じられない!」
「華族に生まれた責務と教えられております。命も婚姻も…」
「婚姻?結婚もなの?」
「私共の結婚には、宮内大臣の許書が必要です。自由な婚姻などできません」
(まあ、俺の世界でもそんな感じだよな。公爵とかが他国と婚姻を通じて力をつけられても困るからな)
「……華族の令嬢も大変なのね同情するわ」
同情された宮小路さんはなんとも言えない表情になってしまった。
「誰か来ましたわ」
ガコガコガコ…ギィー
俺が外の気配に気づくと、閂が外され扉が開いた。
「食え夕食だ」
歩兵ライフル、ゲヴェール98を持った男と、お盆を持った男が入ってきて、簡素なテーブルに置いて出て行く。
「待って、お願い助けて!」
四水が男に縋り付くように懇願するが、突き飛ばされてしまう。
「日本人、免靠過來!」
銃を持った男が四水に揺れる銃口を向けてきた。
俺は両手を広げて守るように倒れた四水の前にでて男たちを睨みつける。
「近寄るなだそうです」
俺は奴らの言葉を訳す。
俺を憎々しく睨見つけるが、何もせずに扉を閉め出て行った。
「何、何で、どうしてよ…」
涙を流す四水に宮小路さんは抱いて慰めていた。
「宮小路さま。彼らは何処の方かわかりますか?」
「鉄砲をお持ちの方は大陸の方の顔立ちを、食べ物を運ばれた方は原住民の方のように見えました」
「そうですか」
俺には宮小路さんや石動とかの個別の見分けは問題ないが。民族的な違いは判別できなかった。日本人も大陸も原住民も実は見分けがついていない。俺の世界とでは人種が違うんだ…
机には夕食と言われた、冷えた肉まんが置かれていた。
***
翌朝。
鉄格子の窓から太陽の光が差し込むと、外が騒々しくなった。
どうやら、俺たちを押し込めていた部屋以外にも部屋があり、連れてこられた被害者が、何人か表に集められているようだった。
窓から見える範囲で成人前の男女が数人。銃を突きつけられていた…
バダン!
突然。扉が勢いよく開かれる。
「おい!お前らを見聞する」
銃を構えた4人の男を従えた男が部屋に入るなりそう言い放った。
「嘘偽りは言うなよ」
人攫いは俺たちを壁際に立たせ、一人ひとり値踏みするように見つめる。
「先ずは、お前だ!
名前と家の事業を言え!」
真っ先に指さされたのは、四水だった。
「…は、原田四水です…」
「家は!」
「…洋装の仕立屋です…配達の帰りにここに…う、ううう」
「仕立屋…身代金は払えそうか?」
「……わか…たぶん出してくれます。きっと」
「騙したらわかるな?まあ良い」
男は四水に顔を近づけ凄んでみせる。
「次はお前だ!」
「宮小路八千代…家は…」
宮小路さんが言い淀むと銃口を向けられる。
「…子爵家で、ここでは帝国樟脳商会という事業を行い樟脳を取り扱っています…」
「樟脳だと…俺たちの領域から土地と木々を奪い取るハイエナめ!破産するまで身代金を要求してやる!」
「あ、う…」
人攫いの言葉に宮小路さんは項垂れた。
樟脳か、セルロイドの原料で台湾総督府の専売。世界の七から八割がこの台湾で生産されて輸出されているらしい。
最も、セルロイド自体が何なのか、世界の大きさも俺にはわからんけど…
原料は原住民の領域だった山に生える木から造られるらしい。ここでこの男が怒りを抱いたのは原住民なのか?
「次、お前だ!」
そう言って男が俺を指さす。
「……」
銃口が二つ俺に狙いをつける。
「…朔間桜花です」
一瞬で男たちは顔色を変えた。
「朔間だと…」
「貴様!台湾総督の関係者か!」
銃を持った男が一人、俺の胸ぐらを掴みかかりその勢いのまま壁に打ちつける。
「…っ、ぐぅ」
全ての銃口が俺に向いた。直ぐにでも引き金を引きそうな勢いだ。
「…貴様が、貴様が仲間を!」
何度も壁に打ち付けられる。
朔間伯爵。恨まれてますよ。
生半可ではない憎しみの感情が伝わってくる。
「よせ!」
俺を打ち付ける男に、先ほどから質問していた男が制止を促す。打ち付け男は質問男と俺を交互に見て、俺を土間に引き倒し、腹に蹴りを入れて後ろへと下がった。
「朔間さま!」
宮小路さんと四水が俺を心配してた助け起こそうと駆け寄ってくれる。
「貴様と貴様はついて来い!」
質問男は俺と宮小路さんを指さす。
「お前はここで身代金が払われるか確認してからだ、払われないなら基隆(キールン)港行きだ」
「私、大陸に売られるの…」
四水は、質問男に指差されて蹲る。
「大丈夫。もう直ぐここには軍が来て助けてくれますよ」
俺は四水にそう囁く。
四水は目を丸くして俺を見た。その四水の驚き。無言の問いに俺は申し訳程度の頷きで応える。
俺は男たちに立たせられ、四水を残して宮小路さんと共に腕を掴まれ部屋から連れ出されてしまった。
奇蹟あい
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#勘違い
かませ犬S
455
#男主人公
パラレル・ゲーマー
173
にとり
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コメント
1件
第9話、めっちゃ熱かった!主人公の冷静さと地理知識、そして「慣れてますから」の笑顔が強烈すぎる。四水ちゃんが涙する中で「軍が来る」って囁くシーン、震えたわ。華族の宿命とか身分制度も重い背景が効いてて、異世界転生×歴史ミステリの風味がたまらない。続きが気になりすぎる!🔥