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私は、彼が苦手だ。
能力には目を見張るものがある。戦闘においても隙が少なく、状況判断も迅速。念の扱いも年齢からは考えられないほど精緻で―正直、信頼できる戦力ではある。
だが。
「…また睨んでる。そんなに見つめられたら、照れちゃうな」
何が気に入らないのかと聞かれれば、彼の“性格”だ。
「いいよ、叩いても殴っても…ボクを好きにしてスッキリしちゃお?」
低く、甘く、ささやくような声。
その瞳が何色か、私はいつも判断しかねる。光によって、角度によって変化するその目は、まるで人の感情を映して変わる鏡のようだった。
私は黙って背を向けた。
フリル=リガーレ。ノストラードファミリーのボディガード、同期として入ってきた少年。
彼の過去はファミリーの記録からも一部が抹消されているが、推測はつく。
彼の口調、行動、そして…人の“怒り”や“罪悪感”に執拗に触れてくる手つき。
「ねえ、怒ってるんでしょ?ボクのこと、殺したいって思ってるよね」
「そういう顔してるもん、今。……ふふ、うれしいな」
私は彼に近づかないようにしていた。
あれは、人の感情を食う獣だ。
こちらの内面を見透かし、掘り返し、泥のようにまき散らして悦ぶタイプの。
……だが、同時に厄介なことに、私の中には―
あの言葉に反応しかけた“何か”が、確かに存在する。
『僕を好きにしてスッキリしちゃお?』
あんなものに、反応する自分が一番気にくわない。