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地球最後の日にお隣さんからおすそ分けを貰った

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地球最後の日にお隣さんからおすそ分けを貰った

1 - 地球最後の日にお隣さんからおすそ分けを貰った

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2022年07月13日

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一週間前…隕石の接近で、政府から地球の滅亡が発表された。

予定では今日が地球最後の日。

テレビでは、たまにニュースが流れて後は延々と社会法人のCM。全世界がパニックの中、俺は一人…アパートの一室で寝転んでいた。

三十歳独身の一人暮らし。実家には兄夫婦がいるし…特に帰らなくても大丈夫だろう。恋人もいない。友達も皆、大切な人と過ごしている。

つまり…俺は地球最後の日に本当に一人だ。

「あーぁ…何か食おうかなぁ」

と独り言を呟いてみたが、外は荒れ放題…。開いてる店なんて無いだろうし、冷蔵庫も空っぽ。あ…カップラーメンがあったかも。最後の晩餐がカップラーメンか…。なんて思っていたら

ピンポーン

インターフォンが鳴った。

誰だ?地球最後の日に、俺に会いに来る奴なんて居るのか?不思議に思いながら、玄関を開けて…驚いた。

「え?…お隣さん?」

「こんばんわ〜あの…今、大丈夫かな?」

そこに居たのは、隣に住むおじさんだった。年齢は五十代くらいだろうか。挨拶程度しか話した事はない。それが何故…?

「いや〜君が居て良かったよ!ちょっと上がらせてもらうよ」

「えぇ!おじさん!?」

おじさんは半ば強引に部屋に入ってきた。温和そうな顔して…まさか強盗!?焦る俺を他所に、おじさんは俺の部屋のテーブルに、小さなタッパーを置いた。

画像

「…お弁当?」

「はい!おすそ分け!」

意味が分からず、自然と眉が寄る。小さなタッパーの中に可愛らしくて、美味しそうな料理。直視した途端に『ぐぅ〜』と腹の音が鳴った。

「お腹が空いてるのかい?良かったら食べて!」

「あの…なんで?」

「このアパート…もう私と君しか住人が居ないから」

「…皆さん、地元に帰られたみたいですね」

「うん。だから君に食べて貰いたくて」

「なんで!?」

噛み合わない会話に俺が声を荒げると、おじさんは、少しだけ顔を伏せて話しはじめる…

「実は…地球が滅亡すると発表があった日から私…料理人を目指そうと思ってね」

「何で?」

「元々、夢だったから。でも、叶えるなら今かな?って」

「いや、今では無いですよね?」

ツッコミ所が多すぎる話しに、目が回りそうだ。そんな俺を見たおじさんは、首を横に振る。

「私は本当にモテなくて…四十八歳の時にフィリピンパブで知り合ったコンパニオンと結婚。そこからパチンコにハマり…妻には一年で逃げられ…それから競馬にハマってね。借金だらけだよ。そんな時に…地球が滅亡…諦めていた夢を叶えたい…それが今だった」

「…おじさん」

稀に見るクズだ。

しかし…何故だろう。応援したくなる。おじさん…俺…

「いただきます」

「!?」

俺の言葉に、おじさんはハッと顔を上げて目を輝かせた。憎めない。俺はタッパーの中に入っていた唐揚げを摘んで、口に入れた。舌の上に広がる…これは…

「!?」

「どうだい!?美味しい!?」

「まずい!!」

「何!?」

衣はベトベトだし半生の肉!不味すぎる!!他のおかずは…

「ん!?」

「た、卵焼きは美味しいかい?」

「味がしない!」

「おにぎりは?」

「米が硬いです!」

結果、全部まずい!何だこの弁当は… 逆にこんな奇跡があるのか?

「…そうか…ごめんよ」

シュンとするおじさん…あんた、料理は向いてないよ。…でも

「感動しました」

「え?」

「何歳になっても…地球が滅亡しても…諦めない心に感動しました」

「…君」

「最後の晩餐が、この弁当で良かったです」

「…!!」

本音だった。最後の晩餐がカップラーメンじゃなくて良かった。おじさんが頑張って作ったお弁当。不味いけれど…心はとても温かくなった。

「おじさん…ありがとうございます。俺、優しい気持ちを思い出しました」

「…私の方こそ…食べてくれて、本当に嬉しいよ。ありがとう…」

俺とおじさんは、見つめ合って微笑んだ。地球最後の日を、こんなに穏やかな感情で迎える事が出来るなんて…俺は幸せ者かもしれない。


『ニュース速報です!隕石の軌道が変わり、地球への衝突は回避されました!!』

急なニュース速報に、俺もおじさんも固まった。回避された?隕石が?って事は…

「地球…滅亡しないみたいですね」

「あぁ…うん」

「…」

「…」

「…帰ってもらって良いですか?」

「あ、はい」

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