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ひじきさんだよ
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スイカはプリティー
427
ぱり
599
・今回はいつもより本編が短いため、おまけを二つ書いていきます
・おまけも短くなってしまいましたし、本当に読まなくても大丈夫な内容しかないです
荒れ果て、生命の枯れた大地を走る。飛んできた短剣を避け、矢を避け、掠れて傷がつき、それでも走る。もう何時間もこんな状態で、でも足を止めたら待つのはきっと
「そこまでだ」
気付いたら目の前に彼がいて、僕は軽々と吹き飛ばされ、いつかの文明の跡に打ちつけられる。
「ッう゛」
持っていた剣を向けられる。ああ、ここまでだったか。でも、まだアキラさんが
「アキラはさっきシャークんが捕まえた。審判を通すことなく、明日処刑する」
「ッスマイルさん…」
「…」
ダメだったか。やっぱり、お二人は強い。初めから、武闘派の二人に勝てるはずはなかった。
「…なんで、こんなことをした」
「…」
「答えろよ。なあ、ピヤノ」
僕はそれでも沈黙を貫く。
「…分かった」
スマイルさんは僕に向けていた剣を僕の首にあてがった。
「○○代目白虎の名において、○○代目玄武を…___の首謀者として、処刑する」
はあ。最期に、スマイルさんの滅多に見ない涙を見ることになるなんて。その手は震え、力が入りすぎて白んでいた。
僕は静かに目を閉じた。
「…はっ」
短い呼吸を繰り返し、いつもより鼓動の早い胸を抑え、起き上がる。
(何か、夢を見たような…でも、あまり覚えてない)
「あれ、僕…」
ポタ、と僕の掛け布団に一つ、雫が落ちた。
「なんで、泣いて…」
アキラさんから色々なことを教えてもらってから早くも数年が過ぎ、僕は玄武として正式に責務を全うしている。最近は新たな妖魔の特性解明のため、研究の日々が続いている。
「ピヤノ様。おはようございます」
「おはようございます。昨日のデータはデスクに置いておきましたよ」
「あっピヤノ様!こちら、至急確認していただきたいのですが」
「はい。今行きます」
僕にとって同僚のような民達と挨拶を交わし、自分の仕事のための準備をする。
(よし。今日はどこまで進められるか…)
「玄武様!北の街中に妖魔が出現!」
「数はどれくらいですか?」
「土根型と推測される巨人が一体のみです。朱雀様には連絡済みです」
アキラさんと会うの久しぶりだな。土根型なら、僕も多少は役に立つだろう。
「分かりました。アキラさんが来るまでは僕が相手をします」
普段僕が戦場に出ることは滅多にないが、北に出たとなれば話は別だ。
「ふー…たまには運動も必要ですよね」
僕はあの日貰った杖、ではなく近くに置いていた斧を手に取った。幼かった僕には長すぎたあの杖は、今の僕の身長と同じくらいになった。しかし、あの杖は戦闘用じゃない。僕の勘と、実際に使ってみた過去がそう証明している。
「あれが今回の妖魔ですか」
土根型。その名の通り、土で出来た体に木の根が巻きついた怪物。大きさはマチマチで、霧ではなく細かな土を飛ばし、それを飲んだ者を体内から腐らせる、身体的干渉をしてくる高危険度の妖魔。
「身体強化」
僕はストックしている札を燃やし、力を吸収する。体から力が漲るのを感じながら一気に距離を詰め、気づかれる前に根を切り刻む。
(土根型はどれも動きが鈍い。伸縮性のある根を切ってしまえば、近づかない限り土を吸い込むことはなくなる)
そんなタイミングで
「お待たせー!久しぶりだねピヤノ!」
アキラさんが落下しながら指先に炎を集中させ、妖魔に向けて撃った。その結果、土が陶器のように固まる。辺りを漂っていた粉塵も無くなり、近付けるようになった。
「じゃ、かち割るのはピヤノに任せるわ!」
「ええ?!アキラさんでよくないですか?」
まあ倒せればなんだっていいか。僕は斧を振りかぶり、力いっぱい振り下ろした。すると、陶器が割れるような音と、土煙が…やば!周りに人がいたら、これを吸い込んで
「大丈夫。簡易的な結界を張ったよ」
アキラさんがピヤノ印の札を掲げて見せた。よかった。なら、僕が吸わないようにすれば周りに被害はない。
「と考えることも考慮して〜?」
アキラさんの声が聞こえたと同時に、僕と妖魔の間に厚い水の壁が出来た。こんな芸当ができるのはただ一人
「元気そうじゃん。ピヤノ」
「シャークんさん!」
僕に飛んでくるはずだった粉塵は、すべてシャークんさんが作った渦に呑まれ、地面に落ちた。壁の形を維持しながら、さらに中の空間に渦を作り出すことで通過してくる土を無くしつつ、水を含ませることで重くしてるのか。シャークんさんは器用だなぁ。
「よし。全部叩き落としたから、もう結界解くか」
「ほらピヤノ。観察してないでおいで?」
「あっ、はい!」
シャークんさんが水の壁を解除し、ほぼ同時にアキラさんが結界を解いた。役目を終えたピヤノ印の札は自然に焼け落ち、紙の燃えカスと有害な土が地面を覆った。
「じゃあピヤノ。中和剤は任せたよ」
「はい。もう持ってきてます」
「はや?!じゃあもう話しちゃうか」
「なら、アキラはもうスマイルんとこ行けよ」
「そだね。ピヤノは頼んだよー!」
アキラさんが鳥の姿になり、西に向かって飛んで行った。
「ピヤノ。規定量より中和剤撒いて。俺が水で満遍なく行き渡らせるから」
「希釈して使うんですね。分かりました」
僕は本来の量にさらに追加で予備の中和剤もばら撒いた。するとシャークんさんが近くの川から水を操り、有害な土壌を浄化していった。一通り行き渡らせたらあとはこの区画を立ち入り禁止にして3時間待つだけだ。
「ピヤノ様。後処理は我々にお任せください」
「お願いします。それで、シャークんさん。話って」
「とりあえず移動しよう」
(一人…アキラが飛んできてるな)
俺は家で優雅に読書をしていたが、その静寂は一分にも満たない時間で壊された。
「スマイルー!俺ん家で麻婆豆腐食わない?」
強すぎる力に扉は悲鳴を上げ、やけによく通るこいつの声に耳道を通って脳が揺れるような錯覚を起こした。
「…まずノックしろよ。あと、うるせえ」
「だって、スマイルなら気配で分かるじゃん」
「声がデカすぎるんだって」
ごめんごめんと軽く謝りながら勝手に椅子に座ってきた。こいつ本当に自由だな
「で?なんで急に麻婆豆腐を?」
「俺が食べたくなったからとー、最近料理にハマったから皆に振る舞いたくて」
「まあ暇だったからいいけどさ」
俺は読みかけの本に押し花で作ったしおりを挟む。アキラはその花をまじまじと見ながら
「スマイルまだ残してるんだ。俺のはもう枯れちゃったよ」
「それは保存する努力が足りないからだろ」
「いや、俺別にスマイルほど前任玄武のこと慕ってないからさ」
「俺だって慕ってない」
「でも遺してくれたものを大事にしてんじゃん」
当たり前だろ。故人の遺産を大事にしないやつがどこにいる。むしろアキラが薄情すぎる気もするが、まあこいつは色々とズレてるからな。
「スマイルの弓に、シャークんの剣、俺の鉄扇にピヤノの杖。あの人が遺したもの、結局全員大事に使ってるよね」
「…あの人が言ってたんだ。この花には先祖返りの暴走を抑制してくれる効果がある、って」
花を挟み込んだ本の表紙を撫でる。何度も読み込んで、少しだけボロボロになったその本も、前任玄武からの贈り物だった。
「最初、あのエロオヤジからの本なんて、えっちな感じのやつだと思って開くことはしなかったけど、いい話だよね」
「…ああ。本当に」
「どこかの話なのかなー。それとも、あの人が自分で考えた話だったり?」
「さあな」
そろそろ行くぞ。言わなくても分かるその言葉を伝えるより先に、目の前にいた男は外へ歩みを進めた。
「それで」
「アキラが麻婆豆腐振る舞いたいって言っててさ。今日暇?」
「はい。まあ実験はいつでも出来ますし」
ピヤノがそう答えたと同時に、俺は近くのベンチに座った。
「あの、行かなくていいんですか?」
「ピヤノも座って。少し話があるから」
ピヤノが失礼しますと呟き、おずおずと俺の隣に座った。よし
「話ってなんですか?アキラさんの麻婆豆腐の話ではない、ですよね?」
「アキラの料理の腕は俺が保証するよ」
「なら」
「話がしたいんだ。前任玄武について」
おまけ1『生誕祭』
「じゃあ今日が新玄武の誕生日ってことになるのか」
「確か今日って夏の豊作祭だったよな」
「なら豊作祭じゃなくて生誕祭に変えるかな。シャークん、追加でこれ用意してくんない?」
「生誕祭やるならわざわざ産まれたことを告知する必要はないし、いいかもな」
「場所は?北に変えるか?」
「でも南も飾り付けとか終わらせちゃったし…教育係の俺がいる南に、北の民を招待して祭りやろう!」
((ゴリ押しすぎないか…))
おまけ2『全力過労!ピヤノさん』
「ああ、この妖魔は耐性が低い…別のアプローチをしないと先にサンプルが無くなってしまうし…」
「なあ、ピヤノ様、ずっとあんなじゃなかったか?」
「少なくとも、俺が朝見た時から場所は変わってない」
「私、夜勤で遅くまでいたけど、その時から動いてないわ」
「何徹してるんだあの方は」
「あのー、ピヤノ様?そろそろお休みになった方が」
「すみません今いいところなので。せめて再現性の検証をしなければ」
「…最後に寝たの、いつですか?」
「…」
ピヤノはあからさまに目を逸らした。その目元には、隠しきれない濃い隈があった。
「ピヤノ様!白虎様がいらっしゃいました」
「ピヤノ。禍炎型の資料を借りたいんだが…隈すごいな」
「あれ、スマイルさん?矢文で伝えてくれれば持っていったのに…」
「いや。こっちに逃げ込んだ賊がいたから、逮捕ついでに寄っただけなんだが。ちゃんと寝てるか?」
「今実験がいいところなんです。これが終われば寝ますから」
スマイルは周りの研究者達を見回した。全員が心配そうにピヤノを見ており、早く休んで欲しそうだ。
「その実験は、ピヤノにしかできないのか?」
「いえ。皆さん優秀なので、問題なくでき」
話している途中で、スマイルが手刀を入れ、強制的に眠らせた。
「じゃあ、悪いがピヤノの代わりに実験をやってほしい。俺はこいつを送ってくる」
「はい。戻られる頃には必要な資料をまとめておきます」
「助かる」
コメント
3件
うわあ、第6話もかなり重い展開から始まったね…。ピヤノの悪夢、あれはただの夢じゃない気がする。スマイルさんに「処刑」されるなんて、未来の予知とか、何かの暗示なのかな。 でもその後の成長したピヤノの姿がめちゃくちゃ頼もしい!昔はあの杖が長すぎたのに、今では同じくらいの身長になって、斧を振るって戦う姿とか、しっかり玄武としてやってるんだなって感動した。アキラさんとシャークんさんとの連携も息ぴったりで、読んでて気持ちよかった。 そしておまけの「全力過労!ピヤノさん」、あれは笑った。研究に没頭しすぎて徹夜するタイプなんだね。スマイルさんが手刀で強制睡眠させるの、仲間の愛を感じる(笑)。 前任玄武の話も気になるなあ。あの花のしおり、なんか重要な伏線っぽい。