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18→ニキ→しろ→まち
はちニキ、しろニキ、若干しろまち
報われない
ニキ視点
豊富なボキャブラリーによるキレのあるツッコミが特徴の相方に想いを寄せて早数年。ある日、叶わない恋になってしまった。
「俺、まちこが好きやわ」
何の変哲もない日、二人でゲームをしていた時に相方から言われた言葉。震える声が相方に伝わらないように、僕が彼の”相棒”のままで居れるように当たり障りのない返事を返す。その返事が余りにも酷かったのか彼は「俺に興味無さすぎやろ笑」と言ってくる。人の気も知らないでズケズケと入り込んでくる相方を少し恨む。今すぐにでもこの場から逃れたくて仕方がない。抑えていた感情が吐き出てしまいそうで口を噤む。これ以上彼と居ればボロが出てしまいそうで、前々から相談していた18号に今話せないか、と連絡を入れる。幸い直ぐに連絡が着き、了承を得たためこの場から逃れることが出来そうだ。
「ボビーごめん、予定があるから落ちるわ」
「お、了解。おつー」
震える手でマウスのカーソルを退出ボタンに合わせ、クリックする。どこか変では無かっただろうか、気づかれていないよななんて既に遅い焦りを覚えつつ、そんな焦りを傍にあったペットボトルの水と共に流し込む。18号と話す準備をすればポコンと軽く弾むdiscordサーバーに参加する音。その音がどうも今の俺には不似合いで、また気が滅入ってしまう。しばらくして、18号がサーバーに入ってきた。
「ニキニキどうしたの?」
と俺を労る言葉。多少の葛藤はあったものの18号なら全てを吐き出しても良いかもなんて微かな信頼が俺の口を動かした。話していくうちに喉が締め付けている気がして、声を出すこともままならなくなる。
「ボビー、まちこりが好きらしい…」
その一言が全てを崩した。改めてその事実を声に出すことで自覚が生まれ、涙が溢れてくる。俺はこんなにも彼のことが好きなのかと自認し、悲壮感が込み上げてくる。先程の発言から涙は止まらず、この先の事をどうやって伝えようとぐるぐると巡り廻る思考は纏まらず、声が出せずにいた。涙は止まることを知らず、諦めるべき現実を突きつけてくる。彼が好きだ。だけども彼の幸せを奪ってまでして隣に固執したくない。先程から俺の話を静かに聞いている彼女も恐らく俺に気を使って言葉を選んでいる。そんな状態がどうしようもなく情けなくて仕方がない。考えは纏まらず、思ったことを全て口に出していく。止まらない言葉の羅列に訳の分からない様々な感情。
「じゅうはち…ぉれ、これ、ッからどうすればいい…」
どこまでも自分勝手な発言に嫌になってしまう。だけれど、実際困ったものだ。彼とこれ以上一緒に居ればボロがどこかで絶対に出てしまうだろう。一番は彼と離れる事なのだろうが、私情を挟んでしまえば離れたくないというのが本音。俺のこの発言は無意識に彼から離れる口実を作りたいだけなのかもしれない。
「ニキニキ次第…じゃないかな…」
当たり前の返答を貰い、じゅうはちなら…なんて薄っぺらい期待を打ち砕かれる。勝手に期待しておいてどうなんだと思う。お互いに何を言えば良いのかなんて分からなくて、俺の啜り泣く声だけがこの空間を支配する。未だに溢れ出てくる涙に徐々に鬱陶しさを感じながら俺はぼんやりと想い人とのこれからを考える。明日も明後日もこれからも彼には撮影のためにも会わなければならない。いつまでも引きずっていられないのだ。だけれど直ぐに断ち切れないこの気持ちは彼と話す度にもしかして…なんて女々しい思考を抱くかもしれない。否、きっと抱くだろう。俺は18号の独り言に気づくことなく溜息をつく。どうしようも無い自分に呆れ、苦笑をする。しょうもない俺のエゴに18号を付き合わせている事が申し訳なくなってしまって、一人で気持ちの整理をしたいなんて口実で通話を抜ける。
静かな空間にひとりきり、孤独なことに対する寂しさも後片付けもなんだか全てが面倒くさく感じて、椅子から立ち上がってベッドに体を沈める。目元が浮腫んでしまうかもなと思いつつ、抗えない眠気に従う。今日の出来事は全部嘘であれと願って、精一杯自身の想い人から意識を逸らして何も考えず目を閉じた。
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18号視点
ピコンという音と共に画面に映ったとある人からの連絡。今話そう、なんて私の都合を1ミリも考えていないような言葉。そんな彼を好きな私も私だけれど…
丁度時間には余裕があったため、了承の返事をして私と彼だけのdiscordサーバーに入る準備をする。彼からは何度も相談された。長年片思いしていた人から別の人が好きだと相談された当時酷く苦しかったことも覚えている。今も彼のことを好きだけれどもこの気持ちは墓場まで持っていくつもりだし、何よりも好きな人の幸せが私の幸せになると信じて疑わなかったからこそ、彼の恋が結ばれてほしいと願う。そんなことを考えていれば準備が終わり、彼と話し始める。どうしたのなんて問えば彼は数秒の沈黙の後、全てを話し出す。
「ボビー、まちこりが好きらしい…」
今にでも泣き出しそうな震えた声で言われた一言。私はなんと声を掛けるのが正解なのか分からなくて、相槌を打つことしか出来ない。彼からは何度も恋愛相談を受けた。好きなところ、嫌いなところ、嬉しかったこと、悲しかったこと、全てひっくるめて彼が好きだと言うところも全て知っているのは私だけ、彼の想い人はそんなこと知らない。こんな事にしょうもない優越感を抱くのは大層醜いと思う。
「じゅうはち…ぉれ、これ、ッからどうすればいい…」
何年も思い続けた結果、これからの活動でボロが出てしまいそうな彼は私に縋る。何度もしゃくり上げ、言葉に詰まっている彼は画面越しで分かりやしないが恐らく泣いているのだろう。
「ニキニキ次第…じゃないかな…」
質問されておいて、抽象的な返答で彼任せな発言に酷く懺悔する。本音を言えばもう想い人の事を諦めて私とずっといっしょに居てほしいという気持ちだけれど、この醜い恋心のせいで彼を縛るのは自身の癪に障るし、一概に彼が幸せになれる確証もない。彼さえ良ければ私が幸せにするのに、なんて口に出したら更に関係が崩れてしまいそうな発言を飲み込んで私は、画面に映る彼のアイコンを指さして、泣きじゃくる彼に聴こえない様な声で呟いた。
「私にしておけば良いのに…」
深く溜息を吐く彼にはやはり聞こえていなかったようで、酷く安堵する。
「一人で考えさせてほしい…」
なんて一方的に言って通話を抜ける彼。彼が失恋してもしかして私にチャンスがあるかも…なんて考えてしまうのがどうしようも無いほど穢らわしくて、溜息をつく。彼から想いを寄せられるあの人が羨ましい、妬ましい、私もあの人になりたいなんて無駄なことを考える。一足遅れて私も通話を抜けて、目の前のモニターの電源も落とす。割り切ったはずの奥底に眠る淡い恋心を鎮め、背もたれに凭れかかり何度目かも分からない溜息が静かな部屋に溶けていった。