(あ、死ぬのか、私。)
「あーあ、案外呆気なかったなー…」
(ライト家に仕えて、ヒーローになって、ルーキーは個性豊かで、色んな人に恵まれた…実は人生勝ち組だったのでは?)
なんて一生を振り返っていても死へのカウントダウンは止まらない。血がどんどん溢れ出る。止血は…この傷では不可能だろう…横腹に大きな穴が空いている。
(この怪我でよく今まで意識を保てたな私…最期まで図太いねぇ…)
「はは、まさか私がこんなところでヒーロー狩りにあって、死ぬなんて思いもしなかったなぁ…」
死が近づく一方、まだ呑気に独り言を呟いている。
(って考えると、ビリーは不幸中の幸いだったのかも…ラッキーボーイだ…)
ここはレオナルド・ライトと初めて出会った裏路地だ。誰も通らない。残る力を振り絞って壁に寄りかかる。
「今思うと…主様と出会えたのはほんとに奇跡だったのかもしれない…」
人間は脆い。いつ死ぬかなんて誰にも分からない…平和なんていつ崩れるか分からない…死に際になってもうちょいルーキーと沢山絡めたらなーなんて思う。
ダダダダダダダ
「アイル!!」
「!レオ…!?なんでここに…」
「アイルが音信不通になって探してたら血痕があって着いて行ったら…」
「あらら」
「はやく病院行かないと…!」
「あーレオ、多分これは無理だ」
軽く笑って言う。
「え…?」
「レオ…よく聞いて…」
「嫌だ…!アイル…死ぬな…死なないで…!お願いだから…!」
「レオ」
「アイル…!」
「レオ、血なまぐさいけどこっちおいで」「……」
そういうとレオは血が着いてない反対の横腹に抱きついた。撫でながらレオに話しかける。「ふふ、いい子だね、レオ…あのね、みんなに伝えて欲しいことがある。私の机の上に黄色の箱があるんだけどね、そこには遺書が入ってる。それをみんなに教えてあげて欲しい。頼める?」
「…分かった…」
「あとね、レオ。人間は脆い。いつ死ぬかなんて誰にも分からないし、誰が不幸になるかなんて分からない…」
「……」
「けどね、人間はそれでも生きていくんだよ…今レオは私が死をまってるの悲しい?」
「悲しい…」
「そっか…レオにそう思わせるなんて従者として失格だね…」
「!そんなことない!」
泣きながら大声で否定をしたレオ。やっぱりレオは優しいいい子だな…
「ふふ、レオは優しいね…そんなレオ大好きだよ、もちろん、大好きなのはそこだけじゃないけど…だから、レオ…決して急いでこっちに来ないでね…」
「!」
「レオは、これからもっと、もっともっと、伸びるんだから、成長するんだから……だから…レオは、まだ、こっちに来ちゃいけない…」「……」
だんだん意識が薄れてきた。もう死ぬのは数秒のことかもしれない。けど、何故か怖くなかった。
「はあー…もう無理だ…最期にレオの顔見れて良かったよ…主様にも、よろしく伝えておいてね…レオ、大好き」
「ああ、今までありがとう。お疲れ様…オレも大好きだ…」
最期に見た泣いている君の笑顔は今までで1番綺麗だった。
「…アイル…アイル…」
レオ視点
アイルの身体が冷たくなった…呼吸も、心臓も動いてない…けど、顔は相変わらず綺麗なままだった。腹部に開いた大きな穴、そこを除けばただ眠っている人のようだ。オレはエリオス司令部に連絡した。「アイルが、死んだ」オレの目の前で。
「アイルが、死んだ…?」
「嘘…だろ…」
「……信じ難いが…本当だ…」
「アイルが…」
「アイルさんッ…」
ブリーフィングルームに全員が集まった。そして、全員でその不報を聞いた。オレはアイルに言われた伝言を伝えようと声を出した。
「あ、あのさ、オレアイルから伝言預かってるんだ。」
「それは本当か?」
「アイルの部屋の机の上に置いてある黄色の箱の中に…遺書が入ってる…って」
「遺書…!?」
「……行ってみるか」
アイルの部屋。部屋主のいない部屋。室内には主の帰りを今か今かと待つ小さなハムスターのライトがいた。
「…ごめんな…アイルは…アイルは帰ってこないんだ…」
キュウと小さく鳴き、ゲージから出せと言わんばかりに入口を引っ掻く