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夜の風は冷たかった。
天界から戻ってきた不破湊の羽は、先程よりも黒く濡れたように沈んでいた。
その姿は、彼がもう「本当の天使」ではなくなったことを雄弁に語っていた。
甲斐田晴が先に気づき、駆け寄った。
甲斐田晴「不破さん、どうしたんですか?!」
不破湊は震えながら首を振る。
不破湊「…帰れなかったの。天界のみんなが…もう僕を……。あのね、みんながね…僕を見た瞬間、冷たい目をして…追い出されて…。僕、どこにも行く場所がなくて…」
言葉は途切れ途切れで、嗚咽に濡れていた。
剣持刀也はその羽を見て、奥歯を噛みしめる。
剣持刀也「……そんなの、酷すぎだろ。」
三枝明那は涙をにじませながら抱きしめる。
三枝明那「ふわっちは悪くないのに!なんで、なんでずっとふわっちが苦しまなくちゃいけないんだよ…!」
加賀美ハヤトは静かに手を伸ばし、不破湊の頭を撫でた。
加賀美ハヤト「大丈夫です。不破さん。不破さんの居場所は、ここにあります。私たちの隣に。」
その言葉に、不破湊は力なく微笑み、安心したように涙をこぼした。
不破湊「……ありがとう…。僕、少しだけ眠ってもいい…?」
4人は頷き、不破湊をベッドに連れていった。
泣き疲れた彼は、すぐに眠りへ落ちていったようだ。
——扉が閉まると、空気は一変した。
甲斐田晴が低く呟く。
甲斐田晴「…絶対に許さない。」
沈黙の中で、明那が口を開いた。
三枝明那「ふわっち、さっき凄く小さな声で泣きながら言ってた。…公園で、みんなを待ってる時に、古い倉庫に連れて行かれたって。それに黒いパーカーの青年だって…」
剣持刀也が立ち上がる。
剣持刀也「特徴が分かれば十分です。僕たちのツテを使えば、すぐに特定できるはず。」
加賀美ハヤトは冷徹な目をして、スマホを操作し始める。
加賀美ハヤト「地元の友人に金を流す。『最近、若い男を倉庫に連れ込んでいた奴』を探せ……と。…数時間もあれば分かります。」
4人は目を合わせた。そこに迷いはなかった。
「殺すぞ」
「苦しませて」
「泣かせて」
「跡形もなく」
声が重なり、決意は一つになった。
——翌夜。
街灯の届かない裏路地で、標的の男は捕まっていた。
縄で椅子に縛り付けられ、口に布を詰められたその目には恐怖が浮かんでいる。
剣持刀也がナイフを手に取り、光にかざす。
剣持刀也「お前のせいで…ふわっちは堕天した。」
甲斐田晴は男の頬を殴り、血を滲ませた。
甲斐田晴「天使を…僕らの大事な不破さんを…傷つけて、よくも平気で生きてられるよね。」
三枝明那は涙をこぼしながら、男の指にナイフを突き立てた。
三枝明那「痛いだろ?なぁ!ふわっちも痛かったんだよ。怖かったんだよ!苦しかったんだよ!……同じ目に遭えよ!お前は、お前は……」
男の喉からくぐもった叫びが漏れる。
加賀美ハヤトは表情を変えず、静かに錆びた鉄棒を手に取る。
加賀美ハヤト「終わらせる。不破さん涙の理由を、私たちで今、消します」
───鈍い音が夜に響いた。
何度も、何度も。
血が地面に広がっていくのを見ても、誰一人として止めようとしなかった。
むしろ、その赤は4人の怒りを鎮め、狂気を満たす燃料となっていた。
剣持刀也が最後に刃を深々と突き立てる。
剣持刀也「…ふわっちに近づいた罰だ。」
男は動かなくなった。
沈黙の中、4人は互いを見た。
そして同時に思う。
「不破湊を守るのは自分たちだ」
——その夜。
眠りの中で、不破湊は穏やかな寝息を立てていた。
彼は知らない。
自分を泣かせた男が、もうこの世にいないことを。
そして、優しい笑顔で寄り添う4人が、彼のために狂気に染まっていくことを。
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