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不破湊「……なんか、きょうは、へんなかんじ……」
穏やかな昼下がり。公園のベンチに並んで腰掛けた不破湊は、ぼんやりと青空を見上げながら呟いた。
けれど、その言葉の裏にある小さな不安を感じ取ったのは、隣にいた甲斐田晴だった。
甲斐田晴「どうした?なんかあった?」
不破湊「うーん……わかんない……でもね、なんか……こう、みられてるみたいな……へんな、くすぐったいかんじ……」
その表情は、普段のふわふわした不破湊ではなく、少し怯えたような、不安げな幼さが滲んでいた。
三枝明那「視線……?」
剣持刀也「……誰かに尾けられたりしてる?」
加賀美ハヤト「……いや、ここ数日ずっと感じてたってことは……不破さんが地上に降りてから、ってことですよね?」
不破湊「うん……てんかいにいるときは、そんなのなかったのに……ちじょうにくると、へんなの……はじめてで、こわい……」
言い終えるころには、不破湊の瞳が潤んでいた。
ぽろ、ぽろ、と頬を伝って涙がこぼれ、白く整った頬を濡らしていく。
不破湊「やだ……ぼく、へんなのかな……?いっつも、みられてるかんじして、こわくて……いやなのに、またくるの、やだ……」
甲斐田晴「不破さん、こっち向いて……大丈夫。不破さんは何も悪くない。変なのは見てる人なんだから」
三枝明那「そうだよ!なんかムカつくな……その視線送ってるやつ、見つけたらマジでぶっ〇してやる……!」
剣持刀也「それには同感ですね。けど僕が先にぶっ〇します」
加賀美ハヤト「いやいや、そこは冷静にって言いたいけど……気持ちは分かるんですけどね。不破さんを怖がらせたやつを、私は許しません。」
不破湊「みんな……」
肩を震わせながら、不破湊は4人を見上げた。
その目には、幼子のような無垢さと、誰かにすがりたいという切実な思いが滲んでいた。
だがその瞬間───
ふわり、と白い羽が一枚、風に揺れて舞い落ちる。
そして、その後に続くもう一枚。
しかし、それは……黒かった。
地面にひらりと落ちた黒い羽を拾ったのは、剣持刀也だった。
剣持刀也「……これ、……ふわっち……?」
不破湊「……!」
不破湊は目を見開いた。まるで自分の中の何かを確認するように、背中の羽に手を伸ばそうとして──その手を震わせながら止めた。
甲斐田晴「不破さん……これは、一体……」
不破湊「…………ごめんね……ほんとは、いっちゃいけないのに……でも……もう、だめかもしれないから……」
涙声のまま、不破湊は静かに語り始めた。
不破湊「……じつはね、ぼく……いちばんじょういの、てんしなんだ。ほかのてんしとは、ちがうって、ずっといわれてきた。だから……すこしでもけがれたり、こころにストレスがたまると……だてん、しちゃうんだ……」
一同「…………」
その場に重苦しい沈黙が流れた。風が木々を揺らしても、それすら不気味に聞こえるほどだった。
加賀美ハヤト「……堕天、したら……どうなるんですか……?」
不破湊「てんかいには……かえれなくなる。もう、ぼくは……てんしじゃなくなるの。じょういの、ちからも、ぜんぶ……」
三枝明那「ふざけんな……!なんだよそれ、ふわっちが何したってんだよ!」
甲斐田晴「……そんなの、おかしいだろ……不破さんは悪くないのに、そんな大事になるなんて……」
剣持刀也「だったら、守るしかねーだろ……僕たちで。ふわっちが堕天なんかしないように、守りきるしか……!」
加賀美ハヤト「そうですね誰にも触れさせない。視線も、手も……存在ごと消して」
不破湊「……うれしい……でも、ぼく、みんなに、めいわくかけてるよね……?」
甲斐田晴「迷惑なんかじゃない。不破さんは、大事な存在なんだよ。僕たちにとって」
その言葉に、不破湊の頬がぽっと赤く染まった。けれど、それは恋でも、甘さでもなく──
「守ってもらうことの温かさ」を知った、子供のような、純粋な表情だった。
ただ、それを見つめる4人の視線には、それぞれ違う“感情”が宿り始めていた。
守りたい。奪われたくない。独り占めしたい───
堕天は、始まりにすぎない。
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