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ネオンが煌めくIrregular Casino》。フロアの隅、バーカウンターの影で、初兎は無理に笑みを作っていた。
「ねぇお嬢ちゃん、そんな可愛い顔してるならさ、ちょっと俺らと遊ばない?」
酔いの回った男たちの声。絡むような視線。初兎は後ずさるが、退路は塞がれていた。
(誰か、誰か気づいて……)
そのときだった。静かに、しかし確かに空気が変わった。
「……お客様。うちの子に手を出すのは、感心しませんね」
スーツの裾を揺らして現れたのは、《Irregular Casino》のオーナー――If。
その瞳は冷たく、鋭い。だが、初兎に向けられたときだけ、どこか優しさがにじむ。
「オーナーさん、何だよ、ただ話してただけじゃ――」
「……話す相手と、話し方を間違えましたね。今すぐ、出て行ってください。次はありませんよ」
静かな声に、男たちは背筋を凍らせる。目をそらしながら、慌ててフロアを後にした。
場が静まる。
初兎は、ようやく呼吸を整えた。
「Ifさん……ありがとう、ございます」
「……怖かったか?」
「……ちょっとだけ。でも、Ifさん来たら安心しました」
Ifは黙って、そっと初兎の頭に手を置いた。バニーの耳がふるふると揺れる。
「お前に手を出す奴は、俺が全部排除する。だから……俺の前では無理に笑うな」
「……うん」
「大事な子なんだ、お前は」
その声はいつもより少しだけ優しかった。
ネオンの下、初兎の心にそっと甘い灯りがともる。