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「そうか、実験自体は成功したのか。
では、すぐ魔導具を持ち帰って来い。
ワイバーンで構わん。
ああそれと、シン殿にくれぐれも礼を
言っておいてくれ」
やや痩せた体形の白髪頭の老人が、
魔力通信機に向かって話を終える。
「リオレイ所長、お疲れ様です。
今のは、例の公都の?」
部屋に入って来た研究者らしき青年は、
彼に向かってお茶を差し出す。
「うむ。
実験中に『魔力喰らい』とやらに
襲われたらしい。
シン殿がいたので事なきを得たと言って
いたがな。
そしてそれも、シン殿の依頼で地走草同様
研究して欲しいと―――
持ち帰る予定だそうだ」
お茶を受け取ると老人はそう言って、
ニコリと笑う。
対照的に青年は軽くため息をつき、
「シン殿がいれば……
他の人たちも口々にそう言っております。
今は奥方たちが身重だからという理由で、
依頼を受けるのは消極的だそうですが。
どうしても依存してしまいますよね、
これじゃ」
「何、礼儀さえ通せば―――
それに必要性を説けば、たいていの事は
納得してくれる御仁じゃよ。
今回の実験も……
児童預かり所や冒険者ギルドへの支援になると
見たから、引き受けてくれたのだろう。
ただ奥方の出産日も近いと言われているし、
もう3・4ヶ月は依頼は出せまい」
リオレイ所長は魔力通信機の前から立ち上がり、
改めて青年の方を向くと、
「それで、現状の進捗はどうなっておる?」
「地走草についてですが、順調とは
言えませんね。
むしろ調べれば調べるほど、その生命力の
強さに呆れると言いますか―――
まさか塩まで効かないとは思いません
でしたよ」
やれやれと肩をすくめながら、青年は
質問に答える。
「火は地中に効果は無い。
となれば、地面に浸透させる液体系のもので
駆除を試みるしかないが……
植物に一番有毒と言われる塩がダメと
なるとな。
有毒性のある物を片っ端から投入してみる
しか無いか。
それも生態系に対するダメージが心配だが」
「ですが、あんなものに繁殖されては、
生態系も何もあったものではないでしょう。
今はとにかく、効果が得られる物質の特定が
最優先かと」
「そうじゃのう」
ズズ、と老人はお茶に口をつけ、
「そういえばそろそろ、養殖した魔物肉が
市場に出回る頃だのう」
「そうですね。
そちらは想定以上に順調のようです。
ボーアにバイソン、ムース、
変わったところではリザードやゲイターの
肉も出荷予定ですので。
これで食事の幅も大きく変わるでしょう」
すでに実験段階では、魔物の巨大化と養殖に
成功していたが、
(■240話 はじめての はちばこ参照)
その種類と量を増やし―――
予定より前倒しで、魔物肉の供給が始まろうと
していた。
「しかし、食材としての提供を生業としていた
冒険者や業者は大丈夫でしょうか?
『雇用を奪う』性質の魔導具は開発しない、
という王家の方針があったのでは。
魔導具ではありませんが、これもその類に
入るのでは、と」
研究員が心配そうに所長に問うと、
「それは、魚の養殖と同じ手段を使うと
聞いておる。
以前、魚醤の開発でもあったそうなのだが、
魔族が大量生産出来るようになった際に、
付加価値を付ける事で対応したらしい。
『昔ながらの方法で作った逸品!』
『伝統製法で作られた元祖の品!』と……
それで差別化して、高級路線で売り出した
との事だ」
そこでリオレイ所長は一息つき、
「魚の時は、
『野生の中で育まれた天然物!』
『自然の貴重な味わい!!』
と、天然物の値段をつり上げる事で
対応した。
今回もそれでいく、との事だ」
老人の話を聞いていた青年は感心して、
「なるほど―――
狩りをして来るとなると、入手出来る方法も
限られますからね。
もともと魔物の肉は高級品でしたし、
わざわざ手に入れようとするような層は、
よほど裕福でないと。
それなら問題ないでしょう」
ウンウンとうなずく研究員に、所長は
両目を閉じて、
「しかしなあ。
味など、たいして変わらないと思うのだが。
正直な話、魔物肉や魚に関しては……
養殖の方がうまかったと思うぞ、わしは」
「あー……
それは他の研究員たちも話していましたね。
エサや生活管理をしっかりしているので、
病気やケガの心配もありませんし。
ま、金を持っている人が買い求めるので
あれば、問題ないのでは?」
その後は、日常会話のように食事の話題となり、
所長と研究員はしばらく雑談に興じた。
「ふーん。
それでフェルギちゃん、ギルド支部で
お酒飲み放題?」
「一応、ジャンさんが付き合ったらしいから、
そんな事は―――
あー、でもあの人酒飲みだしなあ」
「あの外見でお酒は、確かに児童預かり所では
見せられないであろうのう」
アジアンチックな人間の妻と、欧米モデルの
ようなドラゴンの方の妻と語り合う。
魔力動力源用の魔導具の実験後……
『魔力喰らい』についても、
報告と聴取に時間を取られてしまい、
連絡はしたものの、家に帰るのは翌朝となり、
そこでようやく私は家族と情報を共有していた。
「でもおとーさん、やっぱりスゴい!
新しくやって来た魔物を倒したんでしょ?」
黒髪ショートの娘・ラッチが、その燃えるような
瞳をキラキラさせながら話す。
「倒したというか―――
動けなくした、というのが正解かな?」
「まあそやつも相手が悪かったのう」
「魔力だけじゃなく、シンが常識の範囲内だと
認められない相手は、敵じゃないからねー」
私の答えの後に……
ラッチの母であるアルテリーゼが、
そしてメルも続く。
「じゃあさじゃあさー。
おとーさんの常識の範囲内って何?」
ラッチが興味津々の目で見つめて来て、
「ん~……
音の速度の3倍以上で空を飛ぶ機械とか、
アラクネのラウラさんの糸無しで、
海の向こうと通信する技術とか」
「そっちは私たちの常識外だねー」
「魔力無しの世界の方が、技術が進むとは
何とも」
二人の妻が呆れるような声を出す。
「まあ、進んだなりの弊害とかはあったけどね。
資源は有限だから、それの枯渇を心配しないと
ならないし、その過程で―――
いろんな生き物を全滅させちゃったりも
しているからね」
「……おとーさんのいた世界って、
もしかして危険だった?」
娘の質問に思わず苦笑する。
ある意味、間違ってはいないかも。
「そうだね。
だからこそ、自分の知識をこの世界で使う時は
慎重にならざるを得ないんだよ」
とまあ偉そうに言ってみるが―――
無責任にいろいろやらかして、後は野となれ
山となれ、という度胸は無いだけだ。
「そのあたりはラッチちゃんも、ゆっくり
シンから学べばいいよー」
「うむ。
シンの力になれるよう、頑張るのじゃ」
メルとアルテリーゼが娘に諭すように話し……
私たちは朝食を続けた。
「……大ライラック国から……
どのようなご用件、ですかな……?」
モンステラ聖皇国、首都・イスト―――
その大聖堂の一室で、病的なまでに痩せた男が、
数名の軍人らしき男たちを前に問いかける。
「本日は、双方に取って利益のある提案を
伝えに来ました。レオゾ枢機卿様」
大げさに敬礼のように構え、使者の中で最も
身分の高そうな軍人が……
宗教者に書類を差し出す。
枢機卿はその書面に目を通すも、
顔色一つ変えず、
「……ふむ、なるほど……
大ライラック国の軍の一部を、
我がモンステラ聖皇国内に駐留させる、
ですか……」
「それについては、数々の不穏な出来事が
聖皇国内で続きましたゆえ。
その不安を払拭させるため、とご理解して
頂ければ」
メルビナ大教皇の奪回、そして亜人・人外の
兵器化施設から奴隷の解放と―――
レオゾ枢機卿の失態を盾に、大ライラック国は
軍をモンステラ聖皇国へ入れる事を要求して
来たのである。
「……確かに、心強い提案ではあります……」
「では、同意くださるな?」
上官らしき男は表情を和らげ確認するが、
「……しかし……
この書類……片手落ちがあるようです……」
枢機卿の言葉に、部下であろう軍人たちは
顔を見合わせる。
「片手落ち、ですと?」
「それはどのような」
ざわめく軍人たちを前に、彼は変わらず
無表情のまま、
「……この提案……
聖皇国を憂慮しての事、と思われます……
いずれ行われる、同盟を前提としての……」
「もちろんです。
その同盟国の防衛がいささか不安なところが
あるようなので―――
我が大ライラック国が手を貸す、そのために
軍の駐留をお願いに来たのですから」
上官の言葉に、レオゾ枢機卿は満足そうに
うなずきながら、
「……では……
……我がモンステラ聖皇国の聖兵隊の
受け入れは、
いつになるとお考え、ですかな……?」
「……!?」
想定外の質問だったのか、上官以下軍人たちは
戸惑いの色を浮かべる。
「モンステラ聖皇国の聖兵隊、ですと?」
「……そうです……
同盟というのであれば、相互に対等な
関係が当然……
我が国内にそちらの軍を入れるのに……
そちらは我が聖兵隊を受け入れない、
という一方的な考えは無いはず……
……どうですかな……?」
それ以外の命令を受けていないであろう彼らは、
困惑の色を濃くしていく。
「……今一度確認しますが……
提案はこれだけ、でしょうか……」
「我々はそれ以外は聞いておりません。
命令で来ておりますゆえ」
枢機卿の言葉に上官はひるまず対応する。
「……権限は……?」
「権限?」
また想定外の言葉だったのか、上官は
顔をしかめるように聞き返すが、
「……あなたに、どれだけの権限が与えられて
いるのか、という事です……
通常であれば、このような提案・要求は……
一方的に軍の侵攻を認めろ、と言っているも
同然……
宣戦布告ととらえられてもおかしくはない……
……それだけの責任と権限と覚悟を持って、
私にこの書面を渡したのか……
……という事です……」
責任、という言葉に彼らはひるむ。
もちろん、すんなり受け入れられる、という
楽観的な想定はしていなかったが、
ここまで強硬に反発される事もまた、
彼らに取っては想定外で―――
しかもクアートル大陸の四大国のうち二ヶ国、
大ライラック国とモンステラ聖皇国、
その戦端を自分たちが開いてしまうかも
知れないという可能性を指摘され、
そして軍人たちにそんな覚悟はもちろん無く……
上官以下、彼らの計算は完全に狂ってしまった。
「な、なるほど。
確かに相互に対等な関係であれば、
そちらの軍の受け入れも検討されなければ
ならない。
一度本国に戻り、確認してきましょう」
「……ええ、お願いしますよ……」
冷静さを保ちながら、軍人たちはバタバタと
退室していった。
「だから、それはやり過ぎたって謝っているでは
ないですかぁ~」
ランドルフ帝国帝都・グランドール―――
その冒険者ギルド本部のギルドマスターの
部屋で、
ミドルショートの赤髪の女性が、シルバーの
短髪の青年を前にペコペコと頭を下げる。
「まあまあ、アウリス様。
サマリ司祭も聖皇国の事を思って、
した事でしょうから」
女性と見紛うような中性的な顔立ちの青年、
メルビナ大教皇が彼女を気遣う。
彼は大聖堂に監禁されていたが、シン、
そしてウィンベル王国の『見えない部隊』、
ドラセナ連邦のシルヴァ提督の協力により、
ランドルフ帝国への逃亡に成功。
その後、ベッセルギルドマスター=アウリスの
提案により、冒険者ギルド本部に匿われていた。
理由は二つ。
まず、アウリスが自分の守れる範囲に大教皇を
置きたかった事と……
冒険者ギルドは極めて独立性の高い組織であり、
万が一この事が明るみに出たとしても、
国家が責任を問われる事態にはならないと
想定しての事である。
「それにしても、よくここがわかりましたね?」
青い髪を三つ編みにした、メルビナ大教皇の
身の回りをお世話する女性―――
ティーネが不思議そうにたずねる。
「これでも『隠密』と『範囲索敵』持ち
だからねぇ。
それにアウリス様なら、きっと自分の手元で
守ってくださると踏んでいましたから」
「それだけ信用があるのなら、あんな事を
しないでくださいよ、まったくもう」
ベッセルギルドマスター=アウリスが
ため息をつきながら語る。
かつて彼は、サマリ司祭の指揮の元……
無理やり誘拐されそうになった過去があり、
(■214話はじめての ゆうかいそし参照)
危ういところをシンに助けてもらっていた。
「だからぁ、こうして何度も謝って―――
って、こちらのお嬢さんはここにいても
いいのかい?」
女性司祭の視線の先には、冒険者ギルド本部の
受付嬢がいて、
「構いませんよ。
カティアは、すでに自分の正体を知って
いますし。
あとギルド自体、秘密保持には結構
うるさいですからね」
ピンクヘアーの巻き髪を揺らしながら、
彼女はニコッと笑ってうなずき、
「それに、ここは何と言っても冒険者ギルド本部
ですからね。
もし狙って来ようものなら……
魔物相手が生業の冒険者が、揃ってお出迎え
しますよぉ~♪」
ある意味、冒険者の集まるギルドとは
武装集団でもある。
例え一国とはいえ―――
楽に勝てる戦力ではなく、
諜報機関であっても、潜入すら一苦労する
組織であった。
「それで話を戻しますが、サマリ司祭。
辺境大陸以外の海外の国々が、当惑している
という話ですが。
やはり奴隷取り引きが縮小した事が、
響いているのでしょうか」
メルビナ大教皇の問いに彼女はコクリと
頭を下げ、
「何せ、クアートル大陸の四大国のうち、
二ヶ国が突然方針転換したわけですから。
そりゃあ影響はありますって」
「モンステラ聖皇国は良くも悪くも、
宗教に関わらない部分では……
消極的というか無関心だからねぇ。
もし奴隷がいなくなったとしても、
それほど左右される事はないと思うけど」
サマリ司祭の次にベッセルが補足するように
続き、
「例の兵器化施設も―――
亜人や人外は大ライラック国から仕入れていた
ようですから。
当面は大ライラック国に取り引きが集中
するのではないでしょうか」
ティーネがそう予測すると、女性司祭が
両腕を組んで、
「ただまあ、いくら大国とはいえ一国だけで
海外の需要を満たせるかね?
それにやべーのは、亜人・人外・人間問わず
仕入れているところさ。
特に人間の奴隷はドラセナ連邦の主力商品
だったからな。
足りない分をどこかから調達……
なんて事になったら」
獣人を始めとする亜人・人外はもともと
数は少なく、
調達が楽な人間は奴隷の中で、種族比率でいうと
最多の『商品』になっていた。
「人さらいや誘拐に注意するよう、
ランドルフ帝国の上層部に働きかけますか」
「出来るならお願いいたします、アウリス様。
何から何までお世話になっていながら―――
心苦しいのですが」
メルビナ大教皇が彼に頭を下げると、
ベッセルは慌てて、
「そもそも、自分はモンステラ聖皇国のために
動いていたわけですから……
それは今も昔も変わりませんよ。
それより、ようやくお役に立てる時が来て
嬉しく思っています」
ギルドマスターがそう返すと、
「ホントにねー。
てかアンタがあの時聖皇国にいれば、
メルビナ大教皇様だって監禁されずに
済んだんじゃないの?」
「ごはぁっ!!」
サマリ司祭の言葉に動揺するアウリス。
「い、いえそのっ。
それはもう済んだ事ですのでっ」
「ぐふぅっ!!」
フォローに回るティーネの言葉にも、彼は
ダメージを喰らい、
「い、いや2人とも。
今アウリス様がランドルフ帝国にいる
おかげで、こうして無事ここに身を
寄せられているわけですから」
「おうふぅっ!!」
最後にメルビナ大教皇の執り成しにも
ダメージを受け、
カティアがギルドマスターを慰め……
何とかその場は落ち着きを取り戻した。
「では、これからみなさんに『抵抗魔法』を
かけます!
これで一時的に魔力は無くなりますので、
その感覚を覚えてください」
数日後、私は公都『ヤマト』の―――
冒険者ギルド支部の訓練場にいた。
内容は、魔力無しになった状態での体の使い方を
覚えてもらうためだ。
かつて、私がズヌク司祭に『魔封じ』の魔導具を
使われた件や、
(■80話 はじめての あいさつまわり参照)
新生『アノーミア』連邦の宗主国・マルズに
おいて、王都サルバルが魔力収奪装置を
使ったテロに見舞われた件、
(■110話
はじめての まるずこく(おうと)参照)
また最近では……
ワイバーンたちの巣の周辺で、子供たちが
魔力を吸収するキノコの生えた洞窟に足を
踏み入れ、行動不能になった事などを受けて、
(■232話 はじめての きのこ参照)
魔力を突然奪われても、ある程度動けるよう、
訓練が設けられる事になったのである。
と、いうのは名目上の事で―――
「で?
ワタシらは、見どころがありそうなヤツを
選抜すればいいのかい?」
赤毛の、恰幅のいい女性が、
冒険者たちを見渡し、
「そうですね。
あくまでも目星をつけておくだけで
結構ですから」
「まあいきなりこっちに勧誘しても、
困るだろうしな」
いかにもなチンピラ風の細身の男が、
私を見ずに答える。
彼らはかつて王都フォルロワの裏社会にいた、
マフィアの一団の女ボスと部下で、
今は『見えない部隊』に所属する、
裏の諜報組織の人間……
ブロウさんとジャーヴさんだ。
「ええ、彼らへの勧誘自体は、王家直属の
人間がやるそうですので。
『見えない部隊』現役のメンバーとして、
人材を見極めて頂けたら、と。
むしろそれが今回の主目的ですので―――」
『見えない部隊』はその発足以降、国内外の
諜報活動において目覚ましい成果を遂げて
いたが、
それが海の向こうの要人救出を成功させた
事で、
私の助力があったとはいえ……
ウィンベル王国の『切り札』としての評価は
揺るぎないものとなりつつあった。
また最近は、魔力封じの腕輪を着けた者同士での
団体訓練も行われており、
そのための人員確保と増加は、緊急の課題でも
あったのである。
そこで私は彼らと別れると、訓練場の中央へ
行って、
「(私の平行半径15メートルの範囲に
おいて、魔力・魔法など
・・・・・
あり得ない)」
そう小声でつぶやくと、
「うぁ……っ!?」
「か、体が重い……!」
私の魔力無効化を受けた彼らは、その影響を
それぞれ口にし、
「いやぁ、『万能冒険者』さん。
魔力無しって結構キますねぇ♪」
「マジですよ、こりゃあ」
「いきなり人一人、担がされたみてぇだ」
ピエロのように、顔に星のマークを張り付けた
細身の男―――
リコージさんとその部下たちが口々に語る。
彼らは『ヤマト』元スラム地域の犯罪組織を
牛耳っていたメンバーで、今は服役しているが、
刑期を終えた後、治安機関で働く事を提案、
それに対し前向きに考えてくれているという。
今回はまだ服役途中だが……
社会復帰した時の一環として、参加して
もらった。
「それで私たちはぁ?
何をすれば・いいんです・かぁ♪」
「重要なのは、魔力を失った、もしくは
使えなくなった時―――
どれだけ動けるか、です。
それを把握しておけば、いざという時、
即座に行動に移せますから」
その時、向こうでジャンさんが、
「おーし、これから走り込みと遠投、木剣での
模擬戦をするぞ!
ただ無理はするなよ!
気分が悪くなったら、すぐ近くの職員に
報告しろ!!」
それからはギルド長主導の元、訓練が行われ……
冒険者さんたちやリコージさんは小一時間ほどで
ヘトヘトになっていたが、
「あの若い連中は根性ありそうだねぇ」
「面白そうな魔法の使い手でもあるようだし、
うってつけじゃねぇか?」
と、ブロウさんとジャーヴさんがどうも
リコージさんたちに目をつけたようで―――
彼らが公都『ヤマト』の治安機関を表の顔に
しながら……
裏で『見えない部隊』に所属するのは、
また先の話である。