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皿の上には、まだ温かいオムライス。スプーンが止まり、客の手がナプキンへ伸びた瞬間——
私は静かに近づいた。
ガン、と机に足を乗せる。
スカートが揺れ、腰にぶら下げた刀がかすかに鳴った。
次の瞬間、鞘(さや)から少し抜いた刀身を、相手の顎の下へ軽く当てる。
笑顔は崩さない。
声は低く、淡々と。
「……全部食え」
客の喉がごくりと鳴る。
「これ、誰が作ったと思ってんの?」
刀をほんの数ミリだけ押し上げて、視線を合わせる。
「愛情注いでんだからさ。残すとか、ナメてんの?」
周囲のメイドたちは慣れた様子で、誰も止めない。
むしろ、クスクス笑いながら別の卓へ向かっていく。
私は最後に一言、毒を落とす。
「冷める前に食べな。次は優しくしないから」
刀を戻し、何事もなかったかのように一礼して去る。