テラーノベル
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届かない言葉
彼がいつも自分を優しく見つめていたこと。
旅の途中で買ってくれた、鏡蓮華の指輪の意味。
くだらない旅を楽しそうに振り返る、彼の穏やかな笑顔。
そのすべてが、フリーレンに対する人間の「恋い慕う」という感情だったのだと。
「気づくのが、いつも遅すぎるね」
フリーレンの瞳から、一滴の涙が零れ落ち、押し花を濡らしました。
エルフの時間感覚にとって、10年は一瞬です。
でも、ヒンメルと過ごしたその一瞬が、今の彼女の心をこれほどまでに締め付けていました。
奇跡の幻影
その時、一陣の強い風が吹き抜け、周囲の草木がざわめきます。
光の粒が舞うような錯覚の中、ベンチの隣に、あの青いマントを羽織った青年が座っている気がしました。
彼はいつものように、少しナルシストで、けれど最高に優しい笑顔で微笑んでいます。
『いいんだよ、フリーレン。君が僕を覚えていてくれるなら、それだけで僕は幸せさ』
幻はすぐに風の中に消えていきました。
フリーレンは涙を拭い、立ち上がって杖を握り直します。
彼が愛したこの世界を、彼の記憶と共に歩み続けること。
それが、今のフリーレンができる、精一杯の「愛の返し方」でした。
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🎡天神みねむ チャン