テラーノベル
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その日、私たちはたくさん話した。
彼の家庭のこと。
これからの生活のこと。
今まで、ちゃんと話せなかったこと。
彼は、離婚について話し合いを続けていると
教えてくれた。
ただ、すぐに結論が出るわけではないという
ことも。
私は、彼の言葉を聞きながら、ゆっくりと
うなずいた。
本当は、すぐにでも安心したかった。
もう大丈夫だよ。
これからも一緒にいられるよ。
そんな言葉を聞きたかった。
でも、現実は、気持ちだけでは決められないことがたくさんある。
私は彼のことが好きだった。
だからこそ、曖昧なまま、ずっと不安を
抱えていたくはなかった。
「私、あなたのことが好きです」
彼は私を見た。
「でも、ずっと待つだけなのは辛いです。私も、自分の人生をちゃんと大切にしたい」
言うのは怖かった。
こんなことを言ったら、彼が離れていってしまうかもしれない。
それでも、伝えたかった。
好きだから、何でも我慢する。
好きだから、自分の気持ちを後回しにする。
そんな恋愛にはしたくなかった。
彼は、すぐには答えなかった。
そして、しばらくして言った。
「そうだよね。俺も、ちゃんと自分のことを
整理しないといけないと思ってる」
その言葉は、私が期待していた答えとは少し違った。
だけど、嘘の約束をされるより、ずっとよかった。
彼の問題は、彼自身が向き合わなければいけない。
私には私の生活がある。
彼を好きな気持ちを大切にしながら、自分自身も大切にしていい。
そう思えたのは、この日が初めてだった。
帰り際、彼は言った。
「また、ちゃんと話そう」
私はうなずいた。
「はい」
その日は、それ以上の約束をしなかった。
でも、私はもう、以前のように何も言えずに
待つだけの自分ではなかった。
彼を好きな気持ちも。
寂しかった気持ちも。
これからどうしたいのかも。
少しずつ、自分の言葉で伝えられるようになっていた。
コメント
1件
なっつんさん、第10話読みました。「好きだから何でも我慢する。そんな恋愛にはしたくなかった」という言葉がすごく響きました。自分の気持ちを後回しにしないって決めた主人公の強さに、胸が熱くなりました。彼も「嘘の約束をされるよりずっとよかった」って冷静に受け止められるところが、大人の恋愛だなあと。待つだけじゃない自分になったラスト、しみじみいいです。続きが気になります!
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#年の差
水無月 京
624
おむすび
5,220