悠が誠に彼女ができたという噂を知った翌日から悠は学校を休むようになった。
夜が作るご飯も食べず…
ただそこに居るだけの人形のようになってしまった
そんなある日の朝。
夜が朝食を用意し、
学校に行く、
悠も起きるには起きるが、学校の制服に着替えすらせず、リビングのソファに腰をかけたまま。
何もしない、何も手がつかない、何もしたくない
どうして誠に彼女ができるのか、
という答えが出ない問を頭の中でぐるぐると回す
そうするとあっという間に時間が経ち、昼になる。
そんな時、ガチャリと玄関の扉が開く。
悠が玄関の方を見ると、
そこには間違えるはずのない、
ずっとこの目で見続けてきた、
追いかけ続けていた、
恋焦がれていた、
悠が壊れた直接の原因…
そう桐野誠が居た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夜は悠が人形になってしまったのを心配していた
心配という二文字で片付けられないほど。
頭の中が兄に占拠されるほど。
「僕には兄ちゃんを助けられない。」
「安心させてあげられない。」
「気持ちを晴らしてあげることができない。」
そんな自分が憎たらしかった。
生活できる住居があっても。生きることができる程度のお金があったとしても。
両親が出ていったという事実は消えない。
残るのは親の愛という光が差さない、
暗闇の中の植物。
そんな中でも…同じ状況でも。
少量の光を僕に差してくれた兄ちゃんが大好きになった。
親の愛とはまた違う物なのかもしれないけど、
僕には兄ちゃんからの愛が暖かく感じた。
僕をここまで育てたのは兄ちゃんだ。
最近は、好きな人ができたっぽいが、その相手がどうやら男らしい。
それはなんとなく分かる。
僕も兄ちゃん程ではないが顔が整って産まれたらしく、女子が昔から纏わりついてくる。
異性として見るとか見ないとかじゃなく、
そもそも異性とか同性とかの感覚がバグるのだ。
日常的に、恒常的に、女が周りにいて、そんな居て当たり前の存在に恋なんてしない。
アニメとかの王子様もメイドには恋をしない。
産まれた瞬間からそこにいて、それが当たり前だからだ。
恋をしたら兄ちゃんにも特別な存在ができるかもしれない。日光を差してくれる太陽になってくれる人ができるかもしれない。
と、思っていた。
ある日学校から帰ってくると、兄ちゃんは倒れていた。周りに水たまりにも見える涙の跡と
さくらんぼみたいに腫れた目からすぐに泣いていたとによる脱水症状だと分かった。
水を飲ませ少し寝かせると、すぐに症状自体は良くなったが、兄ちゃんはなにも話すことなくただぼーっとしているだけだった。
そんな兄ちゃんに僕は何もできなかった。
兄ちゃんの太陽になることもできず、
そして、朝食だけ用意して玄関を出た時、
ある男が居た。
その男は兄ちゃんの高校と同じ制服を着ており、
こちらを見るとかなり驚き…いや、恨みつらみにも見える表情を向けてきた。
その男は桐野誠と名乗った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!