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俺の心に諦めという文字が浮かんでから2週間
その間に、悠への恋愛感情の全てを諦め切ることができないでいた。
そうして心此処にあらずで過ごした2週間だったが
何故か俺に彼女ができたという根も葉も茎すらない噂がたった。
そして、悠が学校に来なくなってしまった。
何故だろうか…
あの男と何かあったのか…?
体調は大丈夫なのか?
諦めることを心に決めたのにも関わらず悠のことで頭が埋まる。
その心配は行動に変わるのが桐野誠の性分だった。
朝、学校に行く前に悠の家の前まで来てしまった。
チャイムを鳴らすかどうかとか、
家から悠が出てこないかとか、
疑問が回っていると…
その家から、あの日悠と一緒にいた男が出てきた。
(は?なんであの男が悠の家から…?)
動揺して睨みつけるみたいにその男のことを見てしまった。
夜「あの…?どちら様でしょうか?」
誠「あ、あぁ…えと、桐野誠だけど…」
夜「桐野…誠…?」
誠「な、なにか?」
夜「いや、なんか聞いたことあって……」
と悠の家から出てきたその男は考える。
夜「あっ!」
夜「桐野誠ってあれだ!昔新聞に載ってた!中学生ながらに殺人の罪を着させられそうになってた人!」
誠「なんで…そのことを…」
夜「いや、兄がキラキラとした目で新聞を見せつけて来て…」
誠「兄…って?」
夜「あぁ、すみません、僕の名前は浜野夜。兄の浜野悠が新聞が出た当時、この人が最近話しかけてくれたんだよ!って見せられて…」
誠「浜野…夜…ってことは兄弟?」
とホッとした様な表情を見せる。
夜「は、はいそうですけど…もしかして、兄が最近話してた、めちゃくちゃ仲の良い親友っていう…?」
誠「親友…まぁはい」
とガッカリとした表情を見せる。
すると夜がなにかに気づいたような表情をして誠の手を引く。
朝…といっても時刻は既に8時半を回っていた。
朝の強い陽の光を浴びた公園のベンチに座る2人
俺は夜に手を引かれて公園に着いた。
夜「あの…単刀直入に、聞きます。兄、浜野悠のことが桐野さんは好き…ですよね?」
誠「あ、いや…ち、違いますけど」
とアニメとかでよく見る動揺を見せる
夜「そんなアニメみたいな動揺の仕方、認めてるようなものですよww」
と少し笑いがこぼれる。
その笑い方が悠と重なる。兄弟だから当たり前のことなのに…
誠「まぁ…悠君のことは…その…す、好きだけど」
夜「まあ、兄ちゃんかっこいいもんなぁ〜」
と、夜が時計を見る。
あ!もうこんな時間だー学校に行かないとなー
あっ!家に鍵を掛け忘れちゃったなー
こんな時に鍵を掛けてくれる
優しい人がいないかなー
ついでに家にいる兄ちゃんを元気づけてくれたりしないかなー」
誠「棒読みがすごいけど、ありがとう弟くん」
と夜が鍵を渡すと、誠は走り出していく。
「頑張れ…」
夜がボソッと呟く
鍵を持ち、悠の家まで走っていく。
運動はしている方なので息は切らしていないが
緊張を感じていた。
ガチャッと音を鳴らして玄関を力強く開ける。
玄関を開けて廊下を抜けると椅子に座った悠がこちらを見ていた。
悠「えっ…?まこ…と?」
誠「あっ…あ〜偶然そこで夜君と会って、鍵を掛け忘れたって言われて…てか悠君は、大丈夫なの?体調とか?」
悠「なんで疑問形なの?まぁ大丈夫だけど…
…それより誠の方こそどうなの?その…彼女とは」
誠「は?彼女?」
悠「え?だって彼女ができたんじゃ…」
誠「悠君までそんな噂信じてんのかよ…」
悠「噂…?」
誠「俺に彼女なんかできるわけねえだろ」
悠「そんなことないと思うけどな…」
誠「俺より悠君のがモテるじゃん!」
悠「いや…モテてないよ」
そんな会話をしていると悠の眼から涙が溢れてくる
眼から頬へ、頬から顎を通って、ポタっと地面に落ちる。
誠「悠君大丈夫?」
悠「いや…大丈夫、大丈夫だから」
誠「大丈夫って…大丈夫じゃないでしょ?そんな涙流して…」
悠「いや、ほんとに…大丈夫」
「フフッ」
誠が笑みをこぼす
悠「なんで人が泣いてる横で笑えるの誠は!」
と涙を頬に伝えながら怒る
誠「いや、ごめんなんか可愛くてつい…」
悠「かわいいって…男にいうセリフじゃないでしょ」
すうっと一息ついて誠が話し始める
誠「いや、悠君は可愛いよ?イケメンだし…」
悠「な、いや…なんでそんなこと…」
誠「……好き…だから」
悠「……へ?」
誠「いや…あの、俺は悠君のことが好き!
昔からずっと、ずっと大好きだったの!」
コップにヒタヒタになった水が一滴零れるとそのまま流れ出す様に…
ずっと溜め込んでた好きという感情も一度外に出てしまったらそのまま溢れ出してしまう。
誠「俺は…最初にあった日からずっと悠君しか見てこなかった!語尾にもんって付けるとことか、
一見天然そうなのに周りに女の子がずっといるから女の子の扱い方が上手いこととか、
あくびをするときに手で口を隠したりするとことか、昔からイラッとしたら木とか物に当たるとことか、全部全部、悠君の頭から足の爪の先まで全部!俺は悠君の全てに、悠の全部が溺れるくらい好きなの!」
誠には珍しい早口で心というコップにためた好きという水が全部溢れ出した。
その水は悠のコップの中に高圧洗浄機のように力強く溜まっていった。
悠「僕も好きだよ…誠に彼女ができたって聞いて廃れて、学校を休むくらいには」
トマトみたいに頬を赤く染めた2人。
気まずいような恥ずかしいような時間が流れる。
その静寂に誠が口を出す。
誠「あ、あのさ!俺たち付き合わない?」
悠「よろしくお願いします…」
強い光に生まれる闇も両方から光が差せばその闇も生まれることはない。
光を両側から差すまでに様々な困難があったのかもしれない。
そこには手を貸す存在もあったかもしれない。
逆に、離そうとしてなくても離れる原因になる存在もいたかもしれない。
そんな過程を通して、恋が実った。
その事実に辿り着いたことは一種の奇跡と言えたのかもしれない。