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第4話 「似てる」の一言
「……湊音とおさでいって、なんか似てない?」
ころんの何気ない一言。
その瞬間。
「……」
「……」
湊音とおさでいの動きが、ぴたりと止まった。
「え?」
莉犬が二人を見る。
「どこが?」
ころんは二人を交互に指差した。
「いや、顔っていうか……雰囲気?」
「そう?」
るぅとが首を傾げる。
「確かにちょっと似てるかも」
「ほら!」
ころんが嬉しそうに笑う。
「笑ったときとか、めっちゃ似てる!」
「…………」
湊音は固まった。
おさでいも固まった。
「そ、そうかなー?」
湊音が無理やり笑う。
「俺たち幼馴染だから!」
「そうそう」
おさでいもすぐに合わせる。
「昔から一緒だし」
「へぇ〜」
さとみが二人を見る。
「でも、幼馴染ってそんなに似るもんか?」
「…………」
湊音の額に、うっすら汗が浮かぶ。
「似るよ!」
あっきぃが突然入ってきた。
「長く一緒にいると、喋り方とか仕草とか似てくるじゃん!」
「そうそう!」
湊音は勢いよく頷いた。
「それそれ!」
「……なるほど」
さとみが納得する。
「じゃあ兄弟じゃないんだな」
「…………!」
その言葉に。
湊音の心臓が跳ねた。
「う、うん!」
「そっか」
さとみはそれ以上追及しなかった。
けれど。
少し離れたところにいた心音は――
その会話を聞いていた。
「……」
心音は、おさでいを見る。
そして湊音を見る。
「……兄弟」
なぜか、その言葉が頭から離れなかった。
***
その頃、静佳は休憩を終えて戻ってきていた。
「もう大丈夫なの?」
莉犬が心配そうに聞く。
「うん!」
静佳は元気いっぱいに答える。
「もう完全復活!」
「ほんと?」
「ほんと!」
「無理してない?」
「してないって!」
静佳は笑った。
「ほら!」
その場でくるっと回る。
「元気!」
「わぁ……」
てるとくんが少し心配そうに見る。
「でも、さっきふらついてたよ?」
「ちょっとだけ!」
「それが心配なんだよ……」
静佳は頬を膨らませる。
「みんな心配しすぎ!」
「だって静佳、無理するから」
心音が静かに言った。
「……」
静佳の笑顔が一瞬だけ止まる。
「無理してない」
「してる」
「してない」
「してる」
「してない!」
「してる」
「…………」
「…………」
二人が睨み合う。
「……ふふ」
なぜかジェルが笑い始めた。
「なんやこの兄妹喧嘩みたいなん」
「「兄妹じゃない!」」
二人が同時に叫んだ。
「……」
「……」
全員が二人を見る。
静佳と心音も顔を見合わせる。
「……」
「……」
「息ぴったりじゃん」
ぷりっつが笑った。
「ほんまや!」
ジェルも笑う。
「兄妹みたいやな!」
「だから違うって!」
静佳が慌てる。
心音も苦笑した。
「……本当に違うから」
そう言いながら。
心音の胸には、また小さな違和感が残った。
***
夕方。
仕事が一段落し、みんながそれぞれ休憩していた。
湊音は廊下を歩いていた。
「……」
後ろから誰かがついてくる。
「湊音」
「……!」
振り返る。
そこには――
心音がいた。
「心音?」
「ちょっといい?」
「……うん」
二人は人気のない場所へ移動した。
心音が口を開く。
「聞きたいことがある」
「なに?」
「……おさでいと、どれくらい昔から一緒なの?」
「え?」
「幼馴染って言ってたよね」
「う、うん」
「いつから?」
「……小さい頃から」
「ふーん」
心音はじっと湊音を見る。
「じゃあさ」
「うん」
「おさでいの家、行ったことある?」
「……!」
湊音の表情が固まった。
「……あるよ」
「何回くらい?」
「えっと……」
「湊音」
心音の声が少しだけ真剣になる。
「私、何かおかしいと思ってる」
「……」
「おさでいと湊音」
「……」
「本当に、ただの幼馴染?」
湊音は答えられなかった。
その瞬間。
「湊音ー!」
遠くから声が聞こえた。
「どこー!?」
莉犬だった。
湊音はホッとしたようにそちらを見る。
「ごめん、呼ばれてる!」
「……湊音」
「またね!」
湊音は走り去った。
「……」
心音はその背中を見つめる。
「……絶対、何かある」
***
同じ頃。
静佳も廊下で一人になっていた。
「……」
少し疲れていた。
それでも、みんなの前では笑っていた。
「……大丈夫」
自分に言い聞かせる。
「大丈夫だから」
すると。
「静佳」
「……!」
振り返る。
そこにいたのは――
心音。
「……何?」
「さっき湊音と話してた」
「うん」
「二人とも何か隠してる」
「…………」
静佳の表情が一瞬だけ曇る。
「知らない」
「静佳」
「本当に知らない」
「……そっか」
心音はそれ以上追及しなかった。
ただ。
静佳の頭をぽん、と軽く撫でる。
「無理しないでね」
「……!」
静佳は驚いた。
「なんで……?」
「なんとなく」
心音は笑った。
「静佳って、無理して笑ってる時あるから」
「…………」
静佳は何も言えなかった。
「じゃあね」
心音が去っていく。
静佳はその背中を見つめる。
「……お兄ちゃん」
小さく呟いた。
誰にも聞こえない声で。
***
その夜。
事務所の一室。
湊音と静佳。
そして、おさでいと心音。
四人が偶然、同じ場所に集まっていた。
「……」
「……」
「……」
「……」
誰も喋らない。
やがて。
おさでいが口を開いた。
「……二人とも」
「ん?」
「今日、危なかったな」
湊音が頷く。
「うん……」
静佳も小さく頷いた。
「心音にも怪しまれてる」
「……やっぱり?」
おさでいがため息をつく。
「どうする?」
その時。
心音が静かに言った。
「……もう、隠さなくてもいいんじゃない?」
「「「……え?」」」
三人が心音を見る。
心音は真っ直ぐ静佳を見る。
「静佳」
「……なに?」
「俺、もう気づいてる」
静佳の顔から、笑顔が消えた。
「…………」
心音は続ける。
「あなたが――」
一歩近づく。
「俺の妹だってこと」
「…………!」
静佳の目が大きく開く。
そして。
隣にいた湊音とおさでいも――
息を呑んだ。
ついに。
一つの秘密が。
明らかになろうとしていた。
コメント
1件
「似てる」って一言から、じわじわと真実が浮かび上がってくる感じ、すごく好きです。心音くんの勘の良さと、それに追い詰められていく湊音くんたちの焦りがリアルで、読んでいてドキドキしました。特に静佳ちゃんが一人で呟いた「お兄ちゃん」が胸に刺さります…。最後の「妹だってこと」で思わず声が出ました。続きが気になります!