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どうしても慧君が私を好きだなんて受け入れられない。
こういうのは、そう……
「青天の霹靂」っていうんだよね。
あまりの衝撃に何が起こったのか理解に苦しむ。
「いいよ、大丈夫だから。好きな人がいるならフッてほしいし。返事とか……全然すぐじゃなくてもいいから」
私は、好きな人がいるとも、いないとも、慧君のことをどう思ってるとも……
何ひとつ言葉にできなかった。
「じゃ、じゃあ、行くね。いつかまた誘うから……今度は2人でどっか行きたいな」
「……あ、う、うん。ごめん……」
本当に、どう返事すればいいかわからなかった。
慧君は、そのままキッチンを出ていった。
1度も振り返らずに……あっという間にいなくなった。
「雫さん! ひどい!!」
ドアが閉まった瞬間、後ろから呼ぶ声にドキッとした。
果穂ちゃん……
半分泣いて、半分はすごく怒ってる。
「雫さんは慧さんのことどうするつもりなんですか?」
「果穂ちゃん……聞いてたんだ。ごめん、泣かないで……」
涙がいっぱい溢れて、とてもつらそうで……
この涙は、私のせいなんだよね。
こんな可愛い女の子を……泣かせてしまった。
最低だ。
「雫さんがそんな曖昧な態度で惑わすようなことするから! 慧さんが……慧さんが、可哀想です!」
胸が痛い、言い返す言葉も見つからない。
私……慧君のこと好きなの?
そうじゃない……よね?
ただの友達、慧君はいろいろ相談にのってくれる大切な仲間。
今まで「男性」として見たことは……なかったよね?
だったらどうして気を持たせるようなことをしたの?
ハッキリ「好きじゃない」って言えば良かったじゃない。
でも……言えなかった。
私、正直、告白されてすごくドキドキした。
まだ信じられないのは本当。
だけど、あんなに真剣に言ってくれた慧君に、好きじゃないなんて……
どうしても言えなかったんだ。
慧君と希良君、2人からのたて続けの告白。
思いがけず抱きしめてくれた祐誠さんへの思い。
私の心の中は、今までの人生の中で1番ごちゃごちゃしてて複雑だ。
ちゃんとした答えが欲しいのに、どこを探しても見つからない。
でも……
3人とも、私にとってはとても大切な人。
それは、間違いようのない事実だった。
「果穂ちゃんは、慧君のこと……本当に好きなんだね」
「大好きですよ! バイト始めた時に一目惚れして。それからずーっと慧さんひとすじです。大学にもイケメンはたくさんいるけど、慧さんみたいに素敵な大人の男性はどこを探してもいません。あんなにカッコいい人……絶対他にはいないです」
果穂ちゃんは、ものすごく真剣に言った。
一目惚れだったんだね。
慧君、果穂ちゃんの気持ち知ってるのかな?
こんな可愛い女の子に好かれてるのに……どうして私なの?
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