ー R.Y
会議室の一番後ろの端の席で署長の話を聞いている。その話は長く、頭痛がするぐらいめんどくさい。一応俺も上官だからと話は聞こうとするものの頭まで入ってこない。
夕コと芹沢は小声で話しているし蓮とミックスに関してはどちらがバレずに寝れるかなんていうくだらない勝負をしている。
俺も寝てやろうかと思ったとき、後ろからぽん、と肩をたたかれた。声を出さなかった自分を褒めて欲しいぐらいびっくりした。
パッと反射的に後ろを見ると青緑の髪を揺らしたランドがにっこり笑っていた。
「レダーさん、おはよ」
「びっっくりした…おはよ。」
「会議だったから来た」
「よく会議ってわかったね」
「まぁ … 勘 ?」
ランドが壁にかかっていたパイプ椅子を広げ俺の横に触る。ランドはいつ見ても怪我が多く、常に頬には湿布が貼られており全身に包帯が巻かれている。
「包帯動きづらくない?」
「そう?もう慣れちゃったから分かんないや」
「レダーさんだってヘリ運転してるし怪我いっぱいしてるじゃん。」
「昔はね?今はもうしてないよ。」
「嘘つき。本当は肋骨折れてるくせに」
そう言われて反射的にランドの方を見た。当たり?と小声で話すランドの顔は年齢相応の表情をしていた。
確かに俺はこの前の事件対応でギャングのヘリと衝突し、かなり大きめな怪我をした。
「……なんでわかったの?」
「ん〜…これも勘」
はは、と笑う彼はどこか寂しげで、いつかふっと消えてしまいそうな笑顔だった。
署長の話がヒートアップし、大きな声で演説をしている中、ランドが口を開く。
「…レダーさんはさ、みんなを信頼してるよね。 俺もレダーさんを信頼してる。 隠し事をする仲じゃないって、分かって欲しい」
「…俺は説教されてる?12歳も離れてる弟に。」
「説教じゃない、お願い」
ー V.L
レダーさんは俺の方を少し見つめてから、大きくて怪我だらけの手を俺の頭に乗せて髪をくしゃくしゃにした。
「人間って、無茶しないと生きられないから。それもこんな環境だったら隠し事ぐらいするよ。ランドだって隠し事してるはず」
「…何を根拠に?」
「ランドも傷増えたね。それも複数」
「…別に俺は大型メインだから怪我も増えるよ」
薄く細い光を映さない真っ黒な目を俺に向けて、優しく微笑んだ。
その時、署長の話が終わり起立の命令が出た。前にいた蓮とミックスはびくりと急に起き上がり、夕コと芹沢を立ち上がった。
俺とレダーさんも立ち上がり手を後ろに組んだ。
「……頑張ってね」
俺はそうレダーさんに声をかけた。兄弟だから負担をかけたくないのは分かる。俺の怪我だって負担をかけたくないから言ってないだけ。
「ありがとう」
解散、と言われてそれぞれが扉に向かって歩き出す。パイプ椅子を畳み壁にかける。後ろを振り返るともう部屋にはほとんど誰も残っておらず、前に立っていた偉い人が談笑していた。
すると蓮さんとミックスに声をかけられる。
「ランドー?行こ?」
「…うん、行こ」
お腹すいた〜と話す2人の背中を追う。
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