テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※センシティブ設定してませんが、すこしセンシティブです。
side mio
「スケジュールアプリ。僕の仕事の予定とかが全部入ってるんだ。
よければ、みおちゃんにも知っててほしいな」
「……えっ、いいんですか?」
私は彼のいきなりの提案に驚きを隠せない。
「もちろんだよ」
彼は穏やかに微笑みながら、当然のように言った。
スマホをソファ横の鞄に取りにいき、アプリをインストールして、共有を完了する。
席につくなり、 彼が続けた。
「……みおちゃん、これから出かけようか」
「え?」
「明日、仕事に行くまで一緒にいてほしい。
買い出しとかも兼ねて……デートってことで」
軽い調子なのに、どこか真剣な響きを含んでいて――心臓が跳ねた。
「デート……ですか?」
耳まで熱くなるのを隠せず問い返すと、彼は嬉しそうに頷いた。
「うん。二人で出かけるの、普通に楽しいと思うし……だめかな?」
もちろん、断る理由なんてない。
「はい……」
「じゃあ、支度しようか」
彼が立ち上がる。
「とりあえず、片しちゃいます……」
急にデートと言われて動揺しつつも、私たちの食器を持ってキッチンへ向かう。
「ありがと。寝室にいるから、洗い物が終わったら来て?」
彼はそっと微笑んだ。
side mtk
デートしようと言ったら動揺してる彼女、かわいい。
キッチンに向かう彼女を横目に、僕は寝室へ。
とりあえず着替えようと、服を脱いで外出用のTシャツとダメージ入りのジーンズに履き替える。
変装としては、この服装にメガネとマスクで十分だ。
問題は――彼女の服装。
首筋には、僕がつけたキスマーク。さすがに晒すわけにはいかない。
首元を隠せるボウタイブラウスがいいかな……と思っていたら、彼女が寝室に入ってきた。
「あ、洗い物終わりました」
僕はクローゼットからタンクトップとブラウスを取り出し、彼女に差し出す。
「みおちゃん、これ着替えて?」
「……はずかしいから、見ないでください」
そう言われて「ごめん」と背を向ける。
服の擦れる音。 そして小さな声。
「どうですか?」
振り返ると、首元ぎりぎりでキスマークを隠す白色の半袖のボウタイブラウス。
昨日履いていた黒の膝上丈のミニスカート。
「……かわいい。似合ってる」
欲に負けそうになりながら、思わず彼女を抱きしめた。
「……ありがとう…ございます」
そのまま抱きしめて、深く口づける。
彼女は受け入れてくれて、舌を追いかけ、絡めてくる。
「んっ……も、ときさ……んっ」
彼女の声が漏れる。
唇を離し、理性をなんとか堪える。
「夜……いっぱい可愛がるから、覚悟してて? 」
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「夜……いっぱい可愛がるから、覚悟してて?」
耳元で囁かれた言葉が頭の中で反響する。
恥ずかしくて、死んじゃいそう。
私は寝室から逃げるように、リビングのら鞄から化粧ポーチを掴み、脱衣所へ。
落ち着きを取り戻したくて、ベースメイク、アイメイク、チーク……と無心で手を動かす。
仕上げのリップを手に取ろうとした瞬間――扉が開く。
「歯磨きしようかなって思って」
彼は軽く笑みを浮かべて、新品の歯ブラシを差し出す。
「みおちゃん、これ使って」
さらに歯磨き粉までつけてくれる。
彼が後ろに立ち、お腹に回された腕。逃げ場のないまま、私は歯磨きを始めた。
鏡に映る、二人並んで磨く姿――どうしようもなく恥ずかしい。
「みおひゃん、さひにぺーひて」
(みおちゃん、先にペーして)
口に歯ブラシを咥えたまま言う彼に、思わず笑いそうになる。
慌てて口をすすぐと、
「ひーこ」
(いい子)と、子ども扱いのように頭を撫でられる。
彼も歯磨きを終え、タオルで口元を拭かれ、さらに棚を漁り、取り出したのは淡いピンクのリップ。
「んー……みおちゃん、これ似合いそう」
そっと塗られ、肩に顔を乗せられながら鏡を覗き込む。
「どう?かわいくない?」
甘い声に、心臓が跳ねた。
「……もときさんの、いじわる」
鏡を見るのが耐えきれなくて、私はすぐに視線を逸らした。
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恥ずかしがる澪ちゃんの手を取り、リビングへ。
「ごめんね、職業柄こうなっちゃうけど」
僕はマスクとメガネをつける。
「澪ちゃん、これ被っといて?」
僕の黒いバケットハットを渡す。
「ありがとう、ございます」
彼女は両手でそっと受け取った。
変装としては、十分だろう。
僕の経験上、みんなガチガチに変装すると逆に怪しまれる。
「行こうか」
僕は彼女の手を引き、玄関へ向かう。
地下駐車場に停めてある僕の車へ向かい、助手席のドアを開ける。
「どうぞ」
「なんか……お姫様みたいです」
彼女が恥ずかしそうに言う。
「まあ、僕にとってはお姫さまみたいだからね?」
彼女が助手席に乗り込む。頬を赤く染めて、視線を落とす姿がかわいい。
僕も運転席に座り、エンジンをかける。
「……あの、デートの前に私の家に寄ってもらえませんか?
着替えとか、持ってきたいので……」
「いいよ。最寄り駅、自由が丘だよね?
二十分くらいだし、構わないよ。ドライブにもなるし。」
「はい、ありがとうございます。駅の近くなので、近づいたら案内します」
「ん、じゃあ行くよ」
僕はアクセルを踏み、車は静かに走り出した。
平日の午後ということもあり、渋滞もなくスムーズに彼女の家へ着いた。
車内は昨日の重たい空気とは一転、他愛のない話で会話が弾んでいた。
駅からすぐの、路地にある真新しいアパート。路肩に車を停める。
「路駐になっちゃいますよね……すぐ戻りますので! いってきます!」
彼女は頬を染めながら、駆け足で入り口へと消えていった。
side mio
もときさんの車を降りて、駆け足で自室へ。
待たせてるし、急がなくちゃ。
トートバッグに、下着とお気に入りの部屋着のワンピース、そして明日着るワンピースを詰め込む。
準備は完璧。急いで鍵を閉め、アパートの入り口へ向かった。
――視線を感じる。
ふと顔を上げると、もときさんがこちらをじっと見ていて、目が合った。
そのまま助手席に乗り込む。
「すみません、待たせて……」
「ぜんぜん待ってないから大丈夫。荷物、後ろに置きな」
彼が私の膝の上のバッグを取って、乗り上げて後部座席へ置いてくれる。
「ありがとうございます」
「いえいえ。……じゃあ、行くよ」
運転席に戻った彼がハンドルを握る姿を見て――
(……やっぱり、かっこいいな)
そう思わず胸の中で呟いてしまう。
車は静かに発進した。
コメント
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ふたりが恋人同士になってよかった〜!!ひゃ〜初夜もうこっちまでドキドキしてきた。字書き初めてなんですか?そう思えないくらい読みやすいです! みお元貴視点が交互にきてわかりやすいです✨