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「……ほんっと、最っ悪」

教室の机で項垂れている蓮を見ていると、自然と笑いが込み上げて来た。

「せっかく2人きりで1晩過ごしたのにさ、ゲームしかしないとか……他にする事あったでしょ、、」


蓮は昨夜、僕の家に泊まった。昨日は本当にゲームしかしていない。もちろん、対戦においては蓮じゃ僕に歯が立たなかった。


対戦ゲームからいつの間にか協力プレイのゲームに変わり、ジャンルも変わった。

「ゆきが放課後何してるか分かったよ…。俺実はあのゲー厶結構自信あったんだけど、、」

僕は昨日、これでもかと言うくらい蓮をボコボコにした。ゲームだけは負ける気がしない。


「ねむ、、朝までホラゲーするとか狂ってるよ」

と言って蓮は眠そうにあくびをした。

「蓮びびってた」

昨夜の蓮を思い出し、僕は笑った。

「ゆきが言えないでしょ、1回クリアした事あるとか言ってたくせに、急に叫ぶし、俺に前を歩かせようとして来たり。でも、怖がってたのに全部ヘッショだったし。」

蓮は不貞腐れたようにそう言った。

「ヘッショ以外蓮も一緒だと思うけど」

でも、昨日は確かに夜中から騒ぎ過ぎたかもしれない。


昨日は楽しかった。久しぶりにあんなに笑った。蓮も以外と普通な所があるんだなって思った。蓮とこんな風に笑って話をするのは初めてかもしれない。そして今も、不貞腐れている蓮が面白かった。


バンッ


乱暴に教室のドアを開く音が聞こえた。一瞬で教室が静まり返る。自然とその方を向くと、そこには京介が立っていた。目があう。僕は咄嗟にその目を逸らしてしまった。


一瞬で、夢から覚めたような気分になった。


、、京介は僕と蓮の方に来ることはなかった。そのまま自分の席についたようだった。


「やば…ふっ」

蓮は声のトーンを下げながら急に笑いだした。

辺りを見ると皆ヒソヒソと何かを話していた。すると、山田がこっちに向かって来た。

「及川、高崎と喧嘩でもしたのか?」

「え、してないけど…」

「じゃあ何であんな機嫌悪いんだよ、、怖ぇえ。あ、及川じゃなかったら佐々木?」

「俺何もしてないよ。京介が勝手に怒ってるだけー」

「おい佐々木、声でけぇぞ」

山田は京介の機嫌が悪いと取ったらしく、その原因を聞きに来たみたいだ。

「及川、何とかしてくれ!このままじゃ教室が気まずいんだよ、、」

「何とかって…」

どうすれば、いつもの京介に戻す事が出来るのだろうか。


(「京介はゆきの事が好きなんだよ」)ふいに昨日の話が蘇った。瞬時に顔がかっと熱くなった。

いやいやいや、そんな事、あるはずない。だって、京介とは今まで何もなかったし。……あった。そういえば僕京介と、き、キスしたんだっけ。心臓の鼓動がスピードを増していく。


「及川?顔赤いけど…」

え、と言った僕の声はチャイムの音にかき消された。僕は何も言わず自分の席に戻った。



1限目の授業が始まっても、先生の話が全く頭に入らなかった。ただ、ずっと京介の事を考えていた。


京介は僕に急に避けられてどう思っただろうか。もし僕が京介の立場だったら傷つくはずだ。自分は何もしてないはずなのに、急に避けられるなんて。

何で、ここまで考えられなかったんだろう。京介は怒って当たり前だ。ひしひしと罪悪感に苛まれた。

休み時間になったら京介に謝ろう。そう僕は心に決めた。



「はぁぁ」

僕は忙しない皆の姿を見ながらため息をついていた。謝ろうとしても、京介が何処かに行ってしまい、話しかける隙がなかった。そして今は看板の作成に取り掛かっている。

いよいよ明日は文化祭だ。それだけあって昨日までは熱気もあったが、今は京介の件により少し気まずさがあった。


「及川」

声がした方に振り向くと、クラスメイトの男子が3人いた。

「高崎と喧嘩したのか?やばいって」

またか。

「かもしれない」

と僕が答えると、だと思ったわーとかそれな、とか話しはじめた。

「俺普通に及川と話したの初めてだわ」

「え、俺も」

「お前は話聞いてただけだろ」

「うっせ」

僕もそうかもしれない。僕には京介が居たから、他の人と話す機会はほとんどなかった。

「てか及川準備の時居た?」

「全然見てない気がする」

「あぁー、実は不器用すぎてする事なかったんだ」

僕はそう言って笑ってみせた。

「何それ」

案の定彼らも笑ってくれた。それからは文化祭とは全く関係ない話をいろいろとした。意外と気があい、話は盛り上がった。決まった友達意外とこんな風に長く話をしたのは久しぶりだ。そのまま3人と連絡先を交換した。

一気に3人も友達が増え、嬉しかった。


ピロン


スマホの通知音が鳴った。見てみると、京介からだった。

『ゆき』

顔を上げ、京介が居た方を向くと京介はスマホに視線を落としていた。


「及川はどー思う?」

急に話を振られたと思うと、3人が僕を見ていた。

「えっと、」

話聞いてなかった、。何か言おうとするとまた通知音が鳴った。

『話があるから屋上来て』

僕はすぐに、分かった、と返信した。

「ごめん、用事できたから行ってくる」

「まじか」

「おけ」

「えぇ」

3人がほぼ同時にそう言った。

京介の方を見ると、もうそこには居なかった。

僕は屋上に向かい走った。


死ぬ前に恋でもしようか

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