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「……蒼、すごく綺麗だ……」


桐生さんは指で私の髪を梳きながら、じっと射抜くように見つめている。そんな彼を見下ろしながら、私はゆっくりと腰を動かした。必死に耐えながら眉を寄せ、喘いでいる彼は凄く色っぽくて、なんだかどんどん追い詰めたくなる。


私よりもずっと力が強くて体格も大きい彼が、為す術もなく喘いでいるのをじっと食い入るように見つめる。時々完璧で時々不完全で。でもとても優しくて、真面目なこの綺麗な人が本当に自分のものだという事が未だ信じられない。


私がゆっくりと焦ったく腰を動かしていると、桐生さんは突然体を起こし私をベッドに押し倒した。


「……全然足りない……もっと激しくしていい……?」


彼は甘える様に私の耳に囁くと、指輪のある左手と指を絡めてキスをしながら奥深く入ってきた。彼が私の体の中にも心の中にも隙間なくどんどん入り込んでくる。


「あぁっ……だめ……!」


何とか快感を散らそうとしていると、桐生さんは私の首筋に吸い付いきながら私達の繋がっている所に手を伸ばした。


「蒼、俺が今どれだけ幸せかわかるか?」


そう言うと彼は腰を奥に突き上げながら指先で敏感な蕾をぎゅっと挟んだ。


「……あぁっ──…!」


体が一気に収縮し彼を締め付ける。彼はさらに奥深く腰を進めると、指では届かない奥にある所を撫でる様に触れた。


「……綺麗だよ。こうして感じてる時が一番綺麗なんだ。こんな蒼は俺しか知らない。今までも、そしてこれから先もずっと……」


あまりの気持ち良さに、細く甲高い啼き声を上げた。桐生さんは背中を弓なりにして啼いている私を食い入る様に見ながら、何度も愛おしそうに私の顔を撫でた。


「……蒼…愛してる……愛してる」


熱く湿った荒い息遣いで囁くと、彼はいきなり私をうつ伏せにした。分厚い胸板が私の火照った背中にピタリと重なり彼の腕が私の体に巻き付く。


「蒼、もっと君が欲しい……」


この夜、彼は明け方近くまで私を離さず、激しく、時に優しく、私を抱き尽くした。






次の日、私達はナパバレーのホテルを出て再びサンフランシスコのダウンタウンにあるホテルに戻ってきた。


「実は今回親父の会社を辞める事になかなか踏み切れなかったのは、兄の海斗に全部負担させて申し訳ないとずっと思ってたんだ。それで仕事のオファーが来た時、海斗に謝りに行った。親父の事とか蒼の事、それにこの仕事の話とか色々と話しに行った。


そしたら俺達の事やこの仕事の事をすごく喜んでくれて……。俺の事は心配せずにお前の好きなようにやってみろって。それにMelioraの技術にすごく興味を持って、ぜひ一緒に仕事がしたいって言ってるんだ。だから近い将来、桐生グループの子会社と仕事をする機会があるかもしれない」


私はすでに新しい仕事に意欲を示している桐生さんを見て微笑んだ。


「そう言えば海斗が是非蒼に会いたいって言ってるんだ。だから近いうち兄とそれから母に会いに行こう。兄は俺をここまで動かした人間はいないから是非会ってみたいって言ってる」


桐生さんはククッと笑った。


そうして二人で手を繋ぎながらホテルのロビーに戻ると、意外な人物が私達を待っていた。


「颯人!よかった。やっぱり考え直して事業を継ぐことにしたのね!実はあなたが出張でここに来てるって聞いたの。それで海斗さんに聞いたら、あなたならここにいるって。もう会社には行ったの?」


嬉しそうに桐生さんに駆け寄ってきた結城さんは、隣にいる私を見て凍りついた。


「……どうして七瀬さんがここにいるの……?」


そう言って視線を私から桐生さんへ、そして恋人繋ぎの手に移し、そこに輝く指輪を見つけ目を見開いた。そんな驚いた顔をしている結城さんに桐生さんは言い放った。


「親父の会社の事なら既に何度も断ってあるだろ。蒼がここにいるのは、これから結婚後二人で一緒に住む家を見る為だ。」


「「ええっ!?」」


私と結城さんは同時に声を上げると呆然と桐生さんを見つめた。


「結婚って……そんな……。仕事はどうするのよ。あなた、本当に七瀬さんの為に人生を無駄にする気なの? 私、颯人の事本当に愛してて、今まで一生懸命あなたの事を支えて来たのに……。あなたの為だったら何だってしてきたのに……!七瀬さんなんて何もできないし何もないじゃない!あなたの役にも何の役にも立たないのよ!」


結城さんは涙目で桐生さんに訴えた。すると彼は首を少し傾げると


「……そうか……?」


と言ってちらりと結城さんの華奢で平たい体を見た後、私の豊満な曲線のある体を頭の天辺から爪先まで見つめた。


── なっ……結局そこ!?


私が思わず睨むと、桐生さんは結城さんに言った。


「俺は親父とは意見が合わない。親父は俺が二度も事業を引き継ぐ事を断っていることに激怒していておそらく二度とあそこには足を踏ませないだろう。俺は来年からここにあるスタートアップの会社で働くことにした。もちろん解雇される可能性だってあるし、そうなればまた一からやり直しだ。もしかすると失敗して一文無しにだってなるかもしれない。お前はそれでも俺と人生を共にしたいと思うか?」


「えっ……?……それは……」


言葉に詰まっている結城さんを一瞥すると、桐生さんは私の手を取った。


「行こう」


そう言って腰を抱き寄せた彼を私は見上げた。


「そう言えば颯人さん、家ってまさかあの家じゃ……」


私はオリビアが既に買い手がいると言っていたのを思い出した。


「えっ、あの家気に入らない?蒼好きだって言ってたよな」


「もちろん好きですけど、だってあの家どれだけするんですか……」


確かに豪邸というほどでもないが、それでもあの場所であの大きさだ。サンフランシスコは全米でも地価が高い事で有名だ。恐らく数億はくだらない。


「実は、桐生の持ち株をいくつか売ってケイラブの会社に投資するって言ったらあの家を安く売ってくれる事になったんだ」


「ええっ!?でも、それでも……」


私が驚いていると、桐生さんはそんな私を嬉しそうに見下ろした。


「それより、蒼の家族に年末の休みまで待たないですぐにでも会いに行こう。12月の最初の週末はどうだ?」


「えっ、そんないきなり……?」


私はどんどん事を進める桐生さんに呆気に取られる。


「俺は多分年が明けたら出張で何度もこっちに来るようになるからその前に籍を入れたい」


「ええっ!?そんな一ヶ月もないじゃないですか……」


「結婚式はどうする……?宮崎で挙げるか?」


「えっ、ちょっと待ってください。そんな颯人さんの家族にもまだ会ってないのに……。何もかも急過ぎます……!」


「大丈夫。母と海斗にはすでに蒼がプロポーズ受けて結婚する事を伝えてある」


「ええっ……!?いつの間に……!?」


そうやって私達は手を繋ぎ言い合いをしながら、結城さんを背後に残しロビーを立ち去った。





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