テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
akn「 」
fw『』
あの事件から数日が経った。
あれから何か劇的に変わったかと言われればそんなこともなく、ただいつも通りの日常が続いている。
───いや、おかしいだろ。
だってキスしたんやで?いくら親友だからと言って、キスは親友の域を超えてる。
それなのに明那は会った時も普段通りだし。本当にどういうことなのか。
まぁ、俺が過敏に反応しているだけで、明那にとっては友達にキスは以外と当たり前なのかもしれない。
…いや友達にキスが当たり前ってなんだよ。外国人?そんなこと他の奴らにもやってたら死ぬんだけど。俺が。
そんな思いを抱えながらも、最近一つ思うことがある。
明那の距離が近い。それはもうめちゃくちゃ。
今までもパーソナルスペースが近い方だとは思っていたが、ここまでのことは無かった。
話す時はキスできそうなほど顔が近くなるし、歩く時もずっと肩がくっついてる。「ふわっち腹筋やばい!!」なんてキラキラした目で腹筋を触られた時なんかは本当に襲ってやろうかと思った。
……襲わなかったけど。
まあそんなこんなでとにかく距離が近い。
なんとか平然とした態度を取り繕って、明那にはバレてないはず…だけど、内心は全然穏やかじゃない。距離が近くなるその度に俺の心臓は痛いほど脈打つし、顔は赤くなるしで大変なのだ。
当たり前だろう。好きな子と急接近して意識しない奴なんていない。
と、俺の嘆きはそこまでにして。
問題は何故急にこんなに距離が近くなったのか、だが……思い当たるのは一つしかない。
あの日の恋愛相談だ。
あの日、俺は明那に「好きな人と接触を増やしてみては?」と提案した。そして明那もそれに賛同した。
ということは、明那は今好きな人と接触を増やすという案を実行している最中のはずなのだ。
そんな中で俺とこんなにも距離が近くなったということは…──。
多分、他の人とも距離を近くして明那の好きな人が違和感を覚えないようにしている……とか。
確証は全くないが、意外と恥ずかしがり屋な明那だったらやりかねないことだ。
急に相手だけに接触を増やすと、相手も少なからず違和感を覚えるだろう。「他の人には普通なのに、自分にだけなんで…」と。明那はそれを避けたかったんじゃないか。
まあ俺から言わせてみれば、好きな人を振り返らせたいならそんなことしない方がいいと思うけど。だって、他の人とも距離を近くしてしまったら相手もそれに対して何も思わなくなってしまうだろう。 自分を意識させるチャンスを自ら潰しているようなものだ。
こういうのは相手にだけ、ってところが肝なのに。
俺には丁度いいから何も言わないけど。
と、またそんなことを思っていると、突然背中に衝撃が走る。
見てみると、満面の笑みをした明那が俺に抱きついていた。
「ふわっち〜!昨日ぶり!」
『んぁ、びっくりした。明那かー!昨日ぶり〜』
頭を撫でると、明那は嬉しいのかそのままんふふ、とはにかむ。
うーん…可愛い。
この可愛さを誰のものにもしたくないなぁ…と改めて考えていると、明那が俺の腕を取って上目遣いで誘ってきた。
「あのさ、今日ふわっちの家行ってええ?」
聞かれた瞬間、恋愛相談のことだとすぐに分かった。俺も都合が良かったので、笑顔で頷く。
そんなことより上目遣いヤバい。可愛すぎる。
心の中で悶えながらも用事があるからと楽屋の方へ去っていった明那を見つめる。
暫くぼーっと見ていたが、家の中を綺麗にしておかないとと思い出して俺も踵を返した。
約束の時間になり明那を家へと招き入れる。
明那をソファに座らせ顔を見た途端、なんだかその表情がいつもより暗いことに気づいた。
『今日元気ないやん。もしかして作戦上手くいかんかった?』
俺の予想は当たったみたいで、明那は縋るようにこちらを見上げた。
「ふわっち…そうなんよ!ぜんっぜん効果ナシ!俺のこと全く意識してくれてないよ〜!」
『んえ、マジかー…。いやまだチャンスはあるって!』
ほぼ半泣きで俺に泣きついてくる明那を慰めながら、内心ニヤリとほくそ笑む。
ここまでやっても何もしてこないなら、相手は本当に明那のことを恋愛対象として見ていないらしい。その事実にガッツポーズをしそうになるもなんとか抑え込む。
外面では親友を慰める優しい男を演じつつ、思い出したかのように明那に話しかけた。
『そういえば前聞き忘れてたんやけど…明那の好きな人って、どんな人なん?』
「えっ!?あ、え、ええと…」
明那の頬が一気に赤色に染まる。明那は少し考えて、ゆっくりと照れたように話し始めた。
「んん…えっと、まずはめちゃくちゃ余裕があって…かっこいい大人…って感じの人」
『…へぇ、それで?』
「えっ、あ…そ、それで、いつもかっこいいのにたまに見せてくる甘えたなとことかがめちゃくちゃ可愛いっていうか…。あ、あとゲームがうまい!」
『ふーん…』
俺の知らないやつをこんな可愛い顔で褒められて、心の内は全然面白くない。
てか、今言ったのなら別に俺でもええやん。
そんな黒い感情が出てくるも、相手を探るためにももう少し情報が欲しい。
『いつ出会ったん?その人と。職業とか…』
「ええ…いつ出会ったか?うーん…正確には思い出せんけど、多分六年前くらい?職業は…ホスト」
『えっ、』
まさか自分と同じ職業だとは。ますます嫉妬心が溢れる。明那の近くにそんな奴いたっけなぁ…?
なんなら出会った時期も俺と同じくらいだし。
それならもう俺でええやん!!と叫びたくなってしまう。
「って、もうええ?これ結構恥ずいんやけど…」
『え、ああ、ごめんもうええよ。うーん…そっかあ』
もう既に明那の恋が成就する確率は結構低そうだが、もう少し念押しさせてもらう。
『それならさぁ…逆に冷たく接してみたらええんちゃう?』
「えっ、え…冷たく?何で?」
『ほら、“押してダメなら引いてみろ”って言うやん。こんだけやって何の効果もないんやったら、逆に冷たく接してみて相手に意識してもらう。これがええやろ!』
「おお〜…なるほど」
感心している明那には申し訳ないが、多分これは逆効果だ。てか「引く」ってちょっと避けてみる、とかで、冷たくするのはやり過ぎだろう。
俺がそんな思いでいることとは露にも思わず、明那は笑顔で俺の手を握る。
「ふわっちのアドバイス、めっちゃええ!ありがとう!」
『…んはは、そんなこと言ってもらったらこっちもやりがいがあるってもんやわ』
明那と好きな相手をなるべく近づけさせないようにと考えて言った言葉にそこまで感謝されると、逆にこっちが居た堪れなくなると言うか…。
俺が複雑な感情を抱いていると、明那はまたあっという間にその場を去っていってしまった。
本当に猫のような人だと思いながらも、俺も自分の作戦がうまくいきそうなことにニヤつきが隠せない。
先程までは複雑だったが、今は明那の恋が実らないことが最優先だ。
今回の作戦も俺の予想通りに事が進むようにと願いながら、その日も眠りについた。
コメント
2件
わぁー‼️更新早くて助かります(╹◡╹)🙏💖毎度てぇてぇ話ありがとうございます😭💞次回も楽しみです👀無理はなさらず🫶‼️