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「とりあえず、王宮内でもぶらぶらしようか」


アイザイア様のその一言で、私とアイザイア様、そして数名の侍従たちは王宮を散歩することになりました。王宮内を散歩、とはいっても特に行く当てもなくぶらぶらとしているだけです。歩きながら、会話をするだけ。そんな時間。でも、私はそんな時間がすごく好きでした。いつもお妃教育などで時間に追われているため、何でもない時間はとても大切で、とても大好きな時間だったからです。その時間を、大好きな人と一緒に過ごせるのならば……これ以上に、良いことはないでしょう? そう言うことです。


「いつも思うが、お妃教育はどうだ? 辛くはない?」


いつものように、アイザイア様がそんなことを尋ねてくださいます。現状を尋ねてくださる、ということも私にとってとても嬉しいことの一つでした。私に興味があるのだと、思えるからです。政略結婚と言えば、愛のないものが多いです。ですが、私だって年頃の女の子の一人。少しぐらい、結婚に夢を見たっていいじゃないですか。愛されたい、って思ってもいいじゃないですか。


「厳しいですけれど、辛くはないですわ。これも、全て将来の為ですから。私、アイザイア様のお隣に立派になって並べるように、頑張るって決めましたの」

「……それは、頼もしいな。楽しみにしているよ」


そうおっしゃったアイザイア様が、数回ポンポンと私の頭を軽くたたかれました。その行動は、私が幼い頃からずっと好きだった行動でした。とても落ち着いて、心地の良いものなのです。でも……その行動に、少なからず不満があるのもまた事実。


「もう、いつも言っておりますが、子供扱いしないでくださいませ! 私だってもう十八。立派に大人の仲間入りをしているんですのよ? 頑張って淑女になろうと努力しておりますのに……」


フェリシタル王国での成人年齢は十六歳です。そして、男女ともに正式な結婚が認められるのが、その一年前の十五歳。貴族の場合、社交界デビューを十二歳辺りで済ませ、デビューから二、三年かけて婚約者を探すのが常です。


ですが、私は生まれてすぐにアイザイア様と婚約しました。お妃教育は呑み込みの早い、若い頃からするべきというフェリシタル王国の伝統の為です。


「そう言うところは、本当に子供だな。淑女は子供扱いされたぐらいで怒ったりはしない。……まぁ、モニカの場合は可愛らしいから許せるけれど」

「……私だって、もう立派な大人ですのに! いつまでも可愛らしいとか言われたくありませんわ。いい加減、綺麗だと褒めてくださいませ!」


そんな言葉を名が捨てて、私が拗ねたようなフリをすれば、アイザイア様がすぐに笑い出されます。それは、周りから見ればとても仲の良い婚約者同士の戯れ、にしか見えないと思います。


「無理だな。少なくとも、あと二年は可愛らしいままでいてくれ。二十歳になったら……いくらでも綺麗だと言ってやるから」

「……本当、ですか?」

「あぁ、本当だ。俺はモニカとの約束は破らないからな」


アイザイア様のそのお言葉を聞いて、私は嬉しくなりました。私だけが特別だ。そう、言われている気がしたからです。


「約束、ですからね」


にっこりと笑い、私はそう言いました。ずっと、この関係が続けばいいのにな。この時の私は、偽りなくそう思えていたのです。

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