テレビ出演のシーンです。
そのままなんの変わりもなく日々は過ぎていた。
もどかしい日々だったが自分の気持ちを認めてしまったからといって、仕事とプライベートは別物。それは俺の信念でありプライドでもあった。
だからふとした時に涼ちゃんが気になって視線で追ってしまう自分を必死で押さえつけ、何かの合間に涼ちゃんに甘えたりからかったり、それだけが唯一の楽しみな日々が続いていた。
相変わらずあの夢は続いている、というかどんどんエスカレートしているような気さえしているが、自分の気持ちを認めてしまった今はその状況にも慣れてきた。
「今日はテレビの生出演だから多少のウケ狙いはいいけどし過ぎないように気をつけてね」
「わかってますよ」
今はテレビ局の控室の中。
「そういえば今日はM.STEPが出演するんだって。俺めちゃくちゃ大好きだからもう楽しみでさぁ」
涼ちゃんが嬉しそうにはしゃいでいる。
M.STEPは涼ちゃんの憧れの大御所バンド。俺も大好きだか、涼ちゃんのテンションはかなり高かった。
その勢いのまま涼ちゃんはいつも以上にノリノリで演奏を終え控室に向かう間もずっと満足気な顔をしている。
「こんにちは」
そこへ後ろから声がかけられる。
「えっ?アツシさん?」
M.STEPのギタリストのアツシさんだった。
「はじめまして。君たち今すごい勢いだよね。ちょっと話ししてみたいと思ってたんだよ」
「あっ、すごい光栄です!俺、藤澤って言います。昔からM.STEPさんのファンで…」
誰よりもはやく反応した涼ちゃんが目をキラキラさせながらアツシさんと話している。
「君は大森くんだよね」
「はい。ご一緒させてもらえるなんてとても光栄です」
そんな涼ちゃんを微笑んで相手しながら俺にも声をかけてくれたので軽く頭を下げて緊張しながらも失礼のないように答える。
「こちらこそ、今一番人気の君たちとご一緒できるなんてホントに嬉しいよ」
とても感じのいい人だと思った。
やっぱりかっこいいなぁ。その余裕のある対応に俺も憧れの目で見てしまう。
若井とも少し話した後、じゃあねと手を振って去っていったアツシさんに俺たちはみんなでかっこいいなぁと興奮しながら控室へと戻っていった。
そして着替えも終わりそろそろ帰ろうかと話していたのだが涼ちゃんの姿が見えない。
「あれ?涼ちゃんは?」
「トイレ行くって出て行ったけどまだ戻ってないのかな?どうしたんだろ?」
「じゃあ俺探しに行ってくるよ」
少し手持ち無沙汰になっていた俺はそう言って涼ちゃんを探しに控室を出てのんびりと局内を歩いていた。
涼ちゃんの事だからきっと誰かに捕まって話しを切り上げられずにいるのだろう。
涼ちゃんに話しかけそうな人の控室をそっと覗いて回る。
そうするとやっぱりひとつの控室から涼ちゃんの声が聞こえてきた。
M.STEPさんだ。
失礼のないようにそっと中を確かめると楽しそうにアツシさんと話している涼ちゃんが見えた。もう、嬉し過ぎて時間忘れてるな。一つため息をついて声をかけようとした次の瞬間、目に飛び込んできた映像に俺の身体が固まる。
突然、アツシさんが嬉しそうに話している涼ちゃんの腰に手を回し、抱き寄せてキスをしたのだ。
そろそろ涼ちゃんの場面まで追いついてきました。
こっちでもとうとうアツシさん登場。今回の重要キャストです。
コメント
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やっぱりそこ見てたのね笑
来たなっ!アツシ!
見られてたんだ!?続きガキになりすぎるうう