アツシさんが涼ちゃんにキスしてるのを目撃してしまったもっくん。
涼ちゃんの目は驚きに見開かれているが、それでもアツシさんの唇は離れない。
背の高い涼ちゃんよりもさらに上から覆いかぶさるように口づけを続けるアツシさんに涼ちゃんの顔がだんだん赤くほてっていくのがわかった。
「んっ…」
涼ちゃんの鼻から甘い吐息が漏れだしてからやっとアツシさんは涼ちゃんを解放する。そして何事か涼ちゃんの耳元でささやいた途端、目を見開きアツシさんと見つめ合った涼ちゃんの顔は真っ赤に染まっていた。
「涼ちゃん!」
我慢しきれずに俺は少し大きめの声で涼ちゃんを呼ぶ。
「あっ、元貴…」
「もうそろそろ帰るから準備しないとダメだよ」
バッと慌てたようにアツシさんから離れ振り返った涼ちゃんに平然とした風を装って声をかける。
「お迎えがきちゃったね。それじゃあ藤澤くん、また今度ゆっくり話ししようね」
「あっ、はい…。しっ失礼します」
オロオロと挙動不審になりながらアツシさんに頭を下げた涼ちゃんは大慌てでこちらに小走りで駆けてきた。
「元貴…あの、忙しいのに手間かけさせちゃってごめんね」
「…大丈夫だよ」
控室に向かう廊下を2人で歩きながら俺の様子をうかがっくる涼ちゃんに俺は静かに答えた。
「そっ、そう…」
その後は微妙な空気のまま控室まで歩く。
控室についた後は何事もなかったようにみんなでワイワイと騒ぎながらもそっと涼ちゃんの方をうかがう。
涼ちゃんはボーっとしながら指で軽く唇をなぞっていた。もしかしたらアツシさんとのキスを思い出しているのかもしれない。
そんな涼ちゃんから慌てて目をそらし、そのまま解散して家路についた。
俺は自分の家につき軽く食事をとった後、ベッドに転がった。
目を閉じると先程見た光景が思い出される。
背の高い涼ちゃんを上からのぞき込むように口づけるアツシさん。そして驚きながらもそれに答えて甘い息を漏らしていた涼ちゃん…。
「くそっ!」
ショックと悔しさで握りしめた手で布団を叩く。
わかってる。俺との事は酔った上での間違い。そして涼ちゃんだって恋愛するんだ。わかってる。そんなのわかってるつもりだった。
でも…。頭で考えているのと違い、目の前で現実を見せつけられるのはこんなにキツいものなのか。
心が引き裂かれるような痛みを感じてギュッと目を閉じる。
「くそっ!」
キスをして熱く抱きしめ合っている涼ちゃんとアツシさんが思い浮かびぶんぶんと頭を振る。涼ちゃんはあの時初めてアツシさんと会ったんだ。アツシさんだって気まぐれで手を出しただけに決まってる。
怒りと悔しさと、そして同時に虚しさが襲ってくる。
正気の時に俺がキスしたら涼ちゃんはいったいどんな顔をするだろう。今日のアツシさんの時みたいに頬を染めながら応じてくれるのかな。
目を閉じてもいつものように涼ちゃんとキスをする自分の姿を思い浮かべる事ができなくなっていた。
もっくん、たとえ自分が何もしなくても涼ちゃんが他に恋人を作るかもしれないという可能性に気づきました。
涼ちゃんはここまででしたが、もう少しもっくん視点が続きます。
アツシさん。まだまだ絡んできますよ。
コメント
10件
もっくん…がんばれー!涼ちゃんと一緒になってくれる事を願ってるぞ!
アツシさんの大人の色気ですよねぇ…
アツシさん!?2このシーンを見るのは2回目だけど、涼ちゃんともっくんの視点が違いすぎて、それすら尊くて死ぬ( 𖦹 𖦹 ) これからどうくっつくのか楽しみ( ˶>ᴗ<˶)