テラーノベル
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シンと周囲が静まりかえる。
眼前に広がる状況が誰も飲み込めないからだ。犬猿の仲で、目が合えば喧嘩ばかりの太宰に中原らしき人物が跪き、その上太宰を『首領』と呼んだのだ。
勿論、太宰は探偵社員であり、中原らしき人物の言う首領などでは無い。太宰自身も戸惑いが隠せない様子でふらりと一歩後ろに下がって引いている様だった。
すると、太宰の様子に違和感を持ったのか、中原らしき人物が顔を上げて、ゆっくりと立ち上がる。
帽子を再び頭に乗せてから、太宰以外の探偵社員を睨みつける。
「…なんでこんな場所に」
「ちゅ、中也?」
中原らしき人物が低く唸る様に呟く。太宰はなんとか声を絞り出し、中原の名前を呼ぶ。
「なんだよ」
苛々とした表情のまま、中原らしき人物は太宰に視線を向ける、その視線は怒り、困惑など、様々な感情が瞳に滲んでいた。
「…そのままタメ口でいいからさ、取り敢えず君が違和感を感じた事全て話して」
「…まず、探偵社にいる事、それからお前の雰囲気、遊撃隊隊長がこの場にいて異能制御の為の首輪を嵌めてないこと、鏡花もこの場にいること、それから…」
淡々と太宰の指示通りに違和感を持ったことを告げていくが、途中で口ごもって、思い出したかの様に目を見開き太宰を見つめる。
探偵社の殆どが中原らしき人物の言っている意味が理解できていない様子が伺えた。
「そういえば…太宰、お前なんで…」
「何の事を言っているのか分からないね」
「っ…!」
戸惑う様な様子で太宰に問いかけるも、太宰は質問の意図が分からず中原に問う。中原は悔しそうな表情を浮かべ、下唇を噛み締める。
「おまえ、は…死んだ、筈じゃ…」
「…やっぱり分からないね、この通り、非常に残念ながら私は生きてるじゃないか…もしかして、遂に帽子に意識乗っ取られた?」
太宰の悪口を気にする様子もなく、唯下を向いてプルプルと拳を握りしめて震えている。
「ねぇ、素敵帽子君」
「…」
中原は応えない。だが、乱歩はそのまま続ける。
「今から僕が幾つか君に質問する、だから僕の質問に応えて欲しい…勿論タダとは言わない、君が求める対価をこの名探偵の僕が出来る限り用意してあげようじゃないか!」
「…対価」
「そう、君がここに居る訳や、元の場所に戻る事にも協力して上げよう」
悪い話ではないと思うけど?と乱歩はつけ加える。すると中原は考える様な仕草を見せるが、すぐに決断が付いたようで、目線を乱歩へと向け方を開く。
「それで、質問は」
「まず一つ目、君の組織での立場は?」
「最高幹部」
「成る程ね。じゃあ次、敦君と太宰の立場は?」
「太宰はポートマフィアの首領で其処の丁稚が遊撃隊隊長だ。ついでに言っとくとそこで俺を睨み付けて居る鏡花もポートマフィアだな」
中原の言葉に鏡花は手を強く握る。すぐ隣に居た敦はそれに気付き、そっと鏡花の背を撫でた。
乱歩は既に繋がっている線をなぞっていくように質問をしている。
「そう、じゃあ最後の質問だ。君の居た世界の探偵社のメンツで此処に居ない人物は?」
「…織田作之助と、芥川龍之介だな」
思い出すようにしながら口を動かす。その言葉に太宰の目が見開かれる。敦は芥川と聞いて顔を顰める。
「織田、作之助…?」
全員が思案するように名前を反復する。だが、乱歩や太宰、福沢以外は心当たりが無いようだった。
「そこの三人は心当たりがあるようだな」
「…乱歩さん、どういう人物なんですか?」
中原は少しだけ口の端を上げて笑った。谷崎が乱歩に質問をするが乱歩は太宰に目配せをする。
「…彼に関しては、太宰の方がよく知ってるんじゃない?僕も社長も会った事はあるけど、まともに話した事もないしね〜」
「…乱歩さんや社長と面識があるとは、驚きですね…」
太宰は何を考えているのか、その言葉を発するのがやっとなように見えた。
「…織田作は私の友人だよ、ポートマフィア時代のね」
「ポートマフィア時代という事は、もう御友人じゃないんですか?」
太宰は無言で首を横に振る。
「私がポートマフィアを抜けるきっかけをくれた人物でね…彼の遺言が、死が無かったら…
私は其処に居る中也の世界の私みたいにポートマフィアの首領になっていたかもね」
その言葉に全員が無言になるが、太宰はそのまま続ける。
「彼はポートマフィアでも珍しい殺さずのマフィアで、孤児を拾っては保護していた」
懐かしむように、思い出すように太宰は織田作について語っていく。とてもじゃないが、哀しそうに、でも何処か楽しそうに語る太宰の話に横槍を入れられるような人物は此処にはいなかった。
話が終わると太宰は少し笑って「少し、長話をしすぎたね」と言った。
「い、いえ、全然良いんだが…中原?が」
国木田が目線を中也に移動させる。目線の先には腕を組んで、欠伸をしている中原がいた。
「糞太宰、話長ェよ」
「そう言いながらも最後まで聞いてくれたじゃないか」
「うっせぇよ…んで、これで終わりか?」
中原が乱歩に目を向けてそう確認する。そうしているとおずおずと敦が声をかける。
「あ、あの、芥川が探偵社員何ですか…?」
敦に対して少し機嫌が悪くなるが、中原は素直に「探偵社の新人だそうだ」と答える。
「探偵社の新人…」敦は反復すると芥川が人助けをする様を想像しているようだが、余りにも想像も出来ない姿に考えるのを諦めてしまった。
コメント
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お結びさん、第5話読みました! いやー、まさか中原くんが太宰を「首領」呼びするとは…!読んでて鳥肌立ったわ。しかも元の世界じゃ太宰は死んでる前提なんだね?そのギャップがもうたまらん。織田作の名前が出た時の太宰の反応もグッと来たし、敦くんが芥川の探偵社員姿を想像できなくて諦めるシーンはちょっと笑った。このパラレル感、めっちゃ好き。続きが気になるよ!
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𝔾𝕌𝕄𝕚 ˟˟ 💭🎧 ࣪⸝⸝꙳
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