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嫌な予感がした正源は、椅子から立ち上って市役所の職員の傍に歩み寄った。その予感は的中していた。
「あの、まさか、あの袋の中が仏さんですか?」
職員は、やってきていない宿題の答を教師に問われた小学生のような表情になり、すこしうつむき加減で答えた。
「はい。火葬場でまとめてお骨にして、その穴に埋めるんですよ」
「お骨を分けないのですか?」
「骨壺を買う予算がですね、いや、どうにもならなくて」
正源が驚きで目をぱちくりさせているのに気付いて、職員は言い訳がましく、あわてて言葉を継いだ。
「いえ、和尚さん。誤解しないでいただきたいんですがね。私らだって決して鬼じゃないんだ。そりゃ出来る事なら、それぞれ骨壺に入れて墓石ぐらい立ててやりたいとは思ってますよ。けど、うちの市役所じゃとてもそんな予算は……それに、厳密に言えばうちの市民じゃないわけですし。手続きの上では」
正源は谷の向こう側に見えている別の小高い場所を指さして訊いた。
「あそこは墓地ではないのですか? 見たところ立派な墓地のようですが、あそこに埋葬はできないのですか?」
「ああ、ありゃ、昔からの地元の人たちの墓地でしてね。身元不明のホトケさんを入れるのは、住民の反対がありましてね」
「自分たちの墓地によそ者を埋葬するな、という事ですか?」
「あのホトケさんたちは、生前、地元の住民とまったく付き合おうとしてなかったようなんですよ。多少なりとも地域社会と関わってくれていれば、地元住民の態度も違ってたんでしょうけどね」
軽トラックを運転して来たのは地元の葬祭業者のようだった。正源と同じぐらいの年齢らしいその男が市役所の職員に話しかけてきたので、正源は数歩離れて待った。
葬祭業者が自分のタブレットPCから市役所の職員のノートPCにデータを転送した。市役所の職員は転送されたデータに一通り目を通し、葬祭業者が差し出した書類にサインした。
「はい、確かに。確認しました。じゃあ、請求はいつも通り市役所の方に。次もまたよろしくね。はい、ご苦労さん」
葬祭業者が軽トラックに戻って車が走り出したので、正源は市役所の職員のまた近寄り、さっきの話の続きを始めた。
「今回の仏さんには身元不明の外国人もいるとおっしゃってましたが」
「ああ、ほら、今回は三人いますね」
そう言って職員はノートPCの画面を正源に見せた。
コメント
1件
第10話読み終わったよ〜!!😭💦 無縁仏の扱い、めっちゃ重いテーマだけど現実突きつけられる感じがした…。正源和尚が「お骨を分けないんですか?」って聞いたとこ、グッときた。身元不明の人がこんな扱い受けてる現実、知らなかった…。職員の言い訳もなんか切ないし、地元住民の反対の話も胸が痛い。 でも正源がちゃんと食い下がってるとこがエモい!次どうなるか気になりすぎる〜😭✨ 続き楽しみにしてるよ!