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そこには遺体の顔写真が並んでいた。職員が指さした三人の、おそらく遺体発見時の写真には、黒人が一人、髪や目は黒っぽいが明らかに白人、そしてアジア系だが一目で日本人とは違う顔つきの男たちの顔が映っていた。
「こういう外国人の身元不明ってのは、もうどうしようもないんですよ」
市役所の職員は苦々しげに言った。
「パスポートも何も持ってなかったらしくて、身元の探しようがない」
「密入国者ですか?」
正源は思わず眉を吊り上げた。だが、職員は気にする風でもなく言い放った。
「かもしれませんね。数が多すぎて、警察もさじ投げてますよ」
二人が話している間に、建設作業員たちは袋を次々と穴に放り込み、パワーシャベルが上から土を投下して埋め戻した。
その上に一抱えほどの大きさの、粗末な石碑のような石が置かれた。作業員の一人が正源と市役所の職員のところへやって来て、準備が整ったと告げた。
市役所の職員がぺこりと頭を下げて正源に言う。
「それでは、和尚様、お願いします」
正源は無言で大きくうなずき、大きな石の方に歩いた。さっきの穴の縁のあたりに、安っぽい学校で使うような机が置かれ、その上に古ぼけた線香入れがちょこんと乗っていた。
正源は持参してきた鉦を机の上に置き、袈裟のたもとから抹香の袋を取り出して開け、線香入れの中に投じた。
うっすらと抹香が煙を上げ始めたところで、正源は鉦を鳴らして立ったまま読経を始めた。略式の読経を済ませ、数珠を持った右手を顔の正面で立て、そのまま深々と頭を下げた。後ろに並んでいた市役所の職員と作業服の男たちも、正源にならって頭を垂れた。
「これにてご供養とさせていただきます」
正源からそう言われた市役所の職員は心底ほっとした様子で、笑顔を見せた。
「お疲れ様でした。いやあ、助かりました」
それから職員の運転する車で新幹線の駅に戻った。傾いた太陽の光が窓から差し込む中、後部座席で正源はついつぶやいた。
「まるで投げ込み寺だな」
「それは何です?」
運転しながら市役所の職員が興味深そうな口調になって尋ねた。
「江戸時代に東京にあったお寺の事ですよ。箕輪というあたりに、お寺そのものは今でもありますが」
「どんなお寺だったんですか?」
「行き倒れの死人と、あと特に吉原遊郭の遊女が死ぬと、その遺体をまとめて大穴にむしろで包んで埋葬したそうです」
コメント
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第11話、読ませていただきました。正源さんが身元不明の外国人遺体の埋葬に立ち会い、淡々と読経を済ませる場面の空気感が、ひやりと心に残りました。市役所職員の「どうしようもない」という言葉と、最後の「投げ込み寺」の話が重なって、現代にも無縁仏の寂しさが確かに存在しているんだなと感じました。正源さんの静かな怒りにも似た諦念が、にじむように伝わってくるエピソードでした。