この作品はいかがでしたか?
352
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白水、水白どちらとも捉えられます。
「大丈夫?」
傷だらけのクラスメイトに声をかける。
「やめッ…!」
怯えるのも無理は無い、だって誰も助けようとはしなかった。
この“いじめられっ子”を。
「怖くないよ、僕は君の味方。」
そう言って微笑む。
彼は初兎という有名ないじめられっ子だ。
誰もが知る裏の大スター。
だから誰も助けなかった。
僕もそうだった、怖かったから。
「僕はほとけ、初兎ちゃんでしょ?」
「う、ん…」
「僕と友達、なってくれない?」
ぺたんと座り込む彼とおなじ目線に立つ。
「ええの……?」
「初兎ちゃんがよかったら!いい?」
「よろ、しく…」
みんなが向けてくる視線などお構い無しに彼の手を引く。
「ねぇ、今日はサボらない?」
「初めてきた…」
「本当に!?ならよかった!」
「ここの屋上は僕しか知らないルートでこれるの!」
「すごい…」
そう、ここは屋上。
僕しか知らないルートで入れる特別な場所。
「ねぇ、いむくん…」
「え?いむ…」
「ごめん…っ、あだ、な…」
突然呼ばれた“いむくん”というあだ名。
驚いたが、あだ名で呼ばれたこと自体が初めてであったため、とても嬉しかった。
「全然いいよ!むしろ嬉しいっ!」
「……よかった」
初めて見た彼の笑顔。
その笑顔に心は射たれた。
そう、これが“恋”だ。
「ねぇ、初兎ちゃんのこと、教えてよ。」
彼ともっと御近付きになりたい。
仲良くなりたい。
愛したい。
そういった思いが込められたこの言葉。
だが、彼は黙り込んでしまった。
「初兎ちゃん…?」
彼は突然として柵へ歩き出した。
(もしかしたら…!)
「初兎ちゃん!!?」
「ちゃうよ、そんなんやない。」
初めて聞いた透き通った低音に釘付けになる。
彼の靡く髪と制服、垂れた目、チラチラと見える八重歯。
その姿を見るだけで胸の鼓動が早まっていくのを感じる。
「いむくん、」
「なに!?」
「…いむくんはさ、楽しい?」
何に対しての質問かわからなかった。
楽しい?
今が?人生が?生活が?
訳の分からぬまま咄嗟に答えてしまった。
「楽しいよ?」
そう答えたとき、彼はまた俯く。
が、少しチラッと見えたのは、悔しそうで、悲しそうな目尻に涙が溜まった姿だった。
「来てや。」
「うん?」
言われるがままに近づいて行く。
その時、彼は僕の腕を力強く掴み、
同じ大きさの体がもちあがるほどの力で
僕を屋上から放り投げた。
「は…?」
理解が追いつかない。
そのまま地面に真っ逆さま。
(終わった)
誰しもがそう思ったとき、不幸中の幸いとも言えるだろう。
校舎のすぐ近くにある大きな気に落ちたのだ。
その瞬間、僕の耳は真正面から聞こえる爆発音に耳を包まれた。
咄嗟に視線を上げる。
目線の先には、たった一瞬だけ、彼が見えた。
彼が大きな爆発音にかき消された叫び声を僅かに捉える。
「大好きやで__
あの後僕は複雑骨折で入院した。
が、入院したのは僕だけで、全校生徒は亡くなってしまった。
爆発の場所は理科室らしく、そのあとに火災が広がり、全ての出口を火の手が塞いでしまったそう。
消防団員も入ることが困難とされ、ここまでの大惨事に広がってしまった。
だけど、初兎ちゃんは知っていた。
なんでかって?それは初兎ちゃんが撒いた種だから。
袖口に手紙が入ってたんだ、彼からの。
俺はいむくんが好きでした。
こんな形でしか愛が伝えられないけど、これで最初で最後になると思う。
俺はこれから、いじめっ子たちに復讐したいと思ってるの、
だから俺はいじめっ子、見て見ぬふりをした奴らもまとめて死ぬ。
本当に自分勝手だと思う、だけど、俺の代わりに生きてくれ。
幸せだって言える生活を送って欲しい。どうか、どうかお願いします。
俺は入学当初からいむくんに一目惚れした。
まぁそれがバレていじめられたんやけどw
だからと言って絶対に自分を責めないでな?約束!
いむくんは俺の事どう思っとる?
来世教えて欲しい。待ってるから、最期まで生きてな。
ありがとう、大好きやで。
「なんだよ……もうッ……!」
こんなこと書かれたらさ、
寂しくなるじゃん…
「僕も……大好きだよッ、っ!」
「ふふっ、ありがとな__
ー5年後、ないこ宅ー
「ほとけってさ、そのいむくんってなんなん?」
「確かに!ずっと気になってた!」
2人に問い詰められる。
だけど、これは僕の大切なあだ名。
「いむくんってのはね、すっごい名前なの!」
「なにそれ……」
「あ!そういえばさ、前言ってた新メンバー加入予定の子が来るんだよね」
「そうなの!!?」
「ないくんもっと早く行って!?」
「そうやでないこ!!」
「ごめんって〜!!」
ピーンポーン…
「はーい!!」
『あ、あの!』
「入ってきて!」
「どんな子かな?」
「どうやろなぁ……」
「大人しい子がいいかも……」
「もううるさいのはいっぱいいるし。」
「それおかしいよね!?」
「お、お邪魔します!」
「僕、“初兎”って言います!」
聞き覚えのある日顔と声。
あのクシャッと笑う大好きな笑顔を5年前の記憶と重ね合わせる。
「初兎…ちゃん。」
彼の手紙を中に飾ったネックレスをギュッと握りしめ、
彼に思いっきり抱きつく。
「ただいま、いむくん。」
小さな声で囁く彼。
やっぱり、今も。
「大好きだよ…!」
fin__
コメント
2件
うわぁぁぁ!感動すぎる!
来世で幸せになってくれてほんとよかったです … ✨ 途中、いむくんに恨みがあるのかと思いましたがそれはいむくんだけを助ける為だったんですね … 遠回しに愛を伝えてくるスタイルめちゃ良きです!!