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思っていたより自分の思いを声にするのは難しいものだった。
先輩に一言、 伝えたいだけだ。
気持ちを伝えるだけなのに、何故か恐怖を感じてしまう。
きっとこの関係を崩したくないと心の中で 思っているからだ。
それにしても今日は卒業式日和だ。
既に桜は散りかけていた。
からっ風になびいた残り少ない桜。
それをただただ綺麗だとながめた。
まあきっと先輩の方が綺麗なんだけどね。
そんなことを思いつつ、先輩の元に向かった。
先輩は、淡いピンク色の振袖を素晴らしく着こなしていた。
そして
この日のために伸ばしてきた、綺麗な黒髪を三つ編みにしていた。
からっ風になびいた先輩の髪の毛。
実に美しい。
それにしても、美人はそこら辺に棒立ちしてるだけでとても絵になるな 。
僕がそこら辺に棒立ちでもしていたら、きっと変質者にでも勘違いされるのだろうか…
そんなことを考えていると悲しくなってきた。
(いやいや、そんな僕もぶすではないよな)
そんな自分を包み隠すような嘘で、
納得し 先輩の近くに駆け寄った。
(大丈夫、僕はそんなブスじゃない)
「先輩、少し伝えたいことがあるので着いてきてもらっていいですか?」
どうだろう、言い方キモかっただろうか。
「わかった」
おお、よかった。
もしかしたらその場で「マヂむりw」とか言われたら、僕は自ら命を絶っただろう。
やはり女子は末恐ろしい…
「じゃあこっちに…」
「うん」
僕が案内した先。
そこはロマンチックな雰囲気…
なんて持ち合わせるわけもない。
そこには、水泳部 の汗臭いタオルとゴーグルが置いてある。
薄暗い倉庫の裏、。
そして。
からっ風のせいで少しかわいた喉に、
唾を飲み込む。
いや、これは言い訳に過ぎない。
緊張しているからだ。
喉に蓄えられていた水分が どんどんどこかに行っていく。
今から僕は気持ちをつたえる。
唾を飲み込む。
僕は先輩の目をみて言った。
「先輩」
「はい」
「ずっとすきでした。」