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葉っぱ
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榎本くもり
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それから暫くして、二人は美男美女カップルとして学年の間で有名になった。
可愛らしい顔立ちで天使のような性格の『彼女』と高身長で運動神経が抜群の『彼』なのだから、当たり前といえば当たり前だ。
今思えば、すごい人たちと過ごしていたんだなと思う。
二人が付き合った後も、仲間外れにされることはなく、よく三人で過ごした。
もともと友達が少なかったから、気を使ってくれていたのだろう。
本当にやさしい人たちだ。
でも、カップルの間に挟まるのは、流石にこちらも気を遣う。
だから、何かと理由をつけて二人きりになるように仕向けたりもした。
辛くないかと言われれば否定はできないが、大好きな人たちの幸せの方が大切だ。
それに、だんだんと自分の中で気持ちの整理ができてきた。
もうすぐで、純粋に二人の幸せを願えるようになるかもしれない、そう思えるようになってきた。
部活が休みの日の放課後。
『彼女』はきっと来ないだろう。もしかしたらデートかもしれない。
そんなことを考えていると、教室にチューナーを忘れてきたことに気付いた。
気が緩んでるな。気を付けないと。
急いで取りに戻る。
一人で歩く廊下は、なんだか寂しくて、センチメンタルな気持ちになってくる。
「駄目だ、前を向かないと」
小さくつぶやいて、歩く足を速める。
教室につく。
少し深呼吸をする。
ドアに手をかけ、気づく。
物音がするな。だれか忘れものでも取りに来たのか?
そんなことを考えていると、聞き馴染みのある声がする。
それは、世界で一番大好きで、いつもならこの時間に音楽室で聞こえていたはずの声だった。
少し胸が高鳴る。もしかして話せる?
平静を装いながら、開けようと、もう一度ドアに手をかけ、止まる。
もう一つ声が聞こえる。
こっちも聞き馴染みのある声だ。
思わず息が止まる。
そっと、音をたてないように少しだけドアを開ける。
予想通り『二人』がいた。
楽しそうに、幸せそうに、笑いながら談笑している。
あぁ、そうだ、これでいい。
これこそが『彼女』が望んでいた幸せだろう。
前にも感じたことのある痛みが胸を襲う。
もう、割り切ったはずなのに。
『彼』が彼女の頭をなでる。
『彼女』が微笑む。
その瞬間だった。
「っつ!」
唇が触れ合った。
幸せそうに笑いあう『二人』。
その間に、入り込めるような隙間はなく、完成された空間だと思った。
思わず駆けだした。
気付かれないように、とか、どうでもいい。
とにかく遠くへ行ってしまいたかった。
でも、逃げられる場所なんか限られていて。
たどり着いたのは、いつも『彼女』といた音楽室だった。
楽器を吹く気にもなれず、思わず崩れ落ちる。
──ポトッ。
顎を伝って一粒の雫が落ちる。
そこからは堰を切ったように涙が溢れてきた。
回らない頭でさっきの光景を思い出す。
「アタシの方が、好きだったのにな」
止まらない涙がスカートを湿らせていく。
アタシの楽園は、『彼女』がいないと何も変哲のないただの音楽室で。
誰よりも、『彼女』を愛していたんだと思い知らされる。
たとえ不毛な恋だとしても、
何よりも眩しい、『アタシ』の青春だった。
|end|
この小説を、中学二年生の私に捧げます。
コメント
1件
みぅです🥀 第4話、読み終わりました……。 最後の「アタシの方が、好きだったのにな」が刺さりすぎて、胸がぎゅっとなりました。ずっと“好き”を隠して、二人の幸せを願うしかなかったんだなって思うと、音楽室で一人泣くシーンが全部の伏線だったんだなって。 同性愛の片想いって、余計に言葉にできなくて苦しいですよね。それをこんなに繊細に描けるの、すごいです。 葉っぱさんの表現、ちゃんと受け取りました。ありがとうございます。