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青桃短編集

24 - 「おばけ 脅し文句 悪者」

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2025年09月16日

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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります

この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します

ご本人様方とは一切関係ありません


ワードパレットでリクエストいただいた3つの言葉(サブタイトルになってます)を本文中に使用してのお話になります




「おばけ 脅し文句 悪者」



「いふくん、もう帰っちゃうの!?」



事務所の一室でノートPCのキーボードを叩いていると、部屋にほとけが飛び込んできた。

向こうもPCを小脇に抱え、更には分厚い資料のようなものを手にしている。



「何? もうちょっとでこの作業終わるから、そしたら帰るけど」

「えーーー!もっと仕事して行きなよ!あ、そうだ!来週提出のやつもなんかあるって言ってなかったっけ?」

「それはまだ余裕あるから、家でやるわ」

「いやいや、絶対今日終わらせた方がいいって!来週が期限だからって甘えてると痛い目見るかもしれないよ!?」



そうやって期限を甘く見て、毎回痛い目を見てるのはお前の方だろ。

そう言いかけたのを一旦飲み込み、猫背の態勢を少し立て直した。

隣に立ったままのほとけの顔をまじまじと見上げる。



「なんなん、なんかあるん?」

「今日さ…なんか事務所に人少ないじゃん?」



俺の隣の椅子を引きながら、ほとけは渋るような口調でそう語り始めた。

まぁ、もう通常の退勤時刻は過ぎている。

仕事を終えた者はもう帰っている頃で、今日も遅くまで残るだろうないこや、本業の帰りにここに寄っている俺みたいな人間しか残っていない。



「でも僕は今日のこの作業はどうしてもここでやらなきゃいけないわけ」

「やったらええやん」

「いふくん、最近のうちの事務所の噂知らないの!?夜中一人で作業してたスタッフで、おばけが出たって言ってる人いるんだって!」

「…なにそれ、全然知らん」

「おねがい!僕の作業終わるまでそこでなんか仕事しててよー!!一人で残ってておばけ出てきたら嫌だもん!」



…あほくさ。

そう思ったけれど、目の前の水色は本気で懇願するようにこちらを見つめてくる。

顔の前で両手を合わせてまで。



「おばけって何? 出たって、なんかされたわけ?」

「ここの奥にさ、資料室みたいな部屋あるじゃん。今までの書類とか保管してる部屋。残って仕事してたスタッフが夜中にそこの前通ったら、なんか声を押し殺して泣いてるみたいな…そんな声が聞こえてきたんだって」

「……へぇ? だれか実際泣いとったんちゃうん」

「そんなわけないって!部屋には電気も点いてなかったみたいだし鍵もちゃんとかかってたみたいだし…何より全員帰った後って分かってたから、怖くなって逃げたみたいだよその人も」



怖いよー、なんて目をうるうるさせている様子は、アニメ動画でよくほとけのキャラがやる表情に似ている。



「20年前くらいにここで残業ばっかり強いられて過労死した人の霊かもしれない…!」

「20年前にうちの事務所もこのビル自体もないやろ」

「そうじゃなきゃ大昔ここが合戦の場でさ、首を落とされた落ち武者が恨みつらみ含めてすすり泣いてるとか…」

「……」



もうツッコむのもあほらしくなって、「はぁ、そっすか」と適当にあしらうと俺は自分のPCに向き直った。

その様子を見たほとけが慌てて俺の腕の辺りを掴む。



「ちょちょ、ちょっと待ってよ!仕事終わらせないで! 今時まんがの悪者だってもっと優しさ溢れてるよ!? 敵と見せかけておいて実は陰で主人公を助けてくれたりさ!? いふくんそういう悪役より今自分が非人道的になろうとしてるって自覚ある!?」



そう言うお前は大分むちゃくちゃな理論で縋ってきとるって自覚ある?

そう言おうかと思ったけれど、面倒くさくなって首を竦めた。

大きな吐息を漏らして、椅子をほとけの方へ傾ける。



「…どれ?さっさと終わらせて帰れよ」

「手伝ってくれるの!?ありがといふくん!神!これでりうちゃんとの待ち合わせにも間に合うかも…!!!」

「……ほーん、それが本音か」

「え!?ちち、ちがうよ!? あーおばけ怖いから早く終わらせて帰りたいなー!!」

「……変な演技はいいから。どれやねん」



ほとけが差し出してきた資料とPC画面に向けて身を乗り出し、頭を突き合わせる。

自分の作業は一旦保留にしておいた。






1時間ほどでほとけの仕事の手伝いを終え、あいつは満足そうに「ありがとーいふくん!」なんて朗らかに笑う。

ほとけがPCの電源を落としながら片付けを始めたとき、この部屋のドアが前触れもなく開いた。



「あれ、お前らまだ残ってたの?」



ないこだ。オンラインでのミーティングを終えた後だろうか。会議室から社長室へ戻るところなのだろう。



「今終わったとこー!もう帰るよ。ないちゃんは?」

「あともうちょっと残る予定」

「えーないちゃん夜中までいるなら気をつけた方がいいよ!最近うちの事務所、おばけが出るって噂だから!」



俺に話したときと同じような興奮気味のテンションで、ほとけは身振り手振りを交えてないこに説明している。

聞き終えたないこはというと、もちろんそんな怪談話にビビる様子もなく鼻であしらった。



「まじ?いるなら出てきてほしいわ。資料整理か、関係各所に代理でメール打つくらいやってくんねぇかな」



猫の手も…いや幽霊の手も借りたいといったところか。ないこらしい返答にほとけも思わず吹き出した。

それから片付けを終えたらしく、「いふくん帰んないの?」と天然爆発といった様子で改めて俺に声をかけてくる。



「…お前の作業手伝うために、俺の仕事一旦保留にしとるんやけど」

「そうじゃん!うわごめん!手伝おうか!?」

「いいよすぐ終わるし。りうらと約束あるんやろ?はよ行け」

「えーーんありがと!!今度何か奢るからね!」



ないちゃんもいふくんも残業はほどほどにね!なんて、「どの口が」と思わされそうなセリフを残し、ほとけは部屋を出て行った。

まるで台風みたいなヤツだ。

いなくなった途端、静寂が部屋に落ちる。



ほとけの足音も聞こえなくなったのを確認した後、ないこが静かに口を開いた。



「……あの日全員帰ったと思ってんだけど。残ってたスタッフがいたってこと?こわ」



セリフとは裏腹に悪びれる様子も焦る様子もない、ないこの言葉。

それに眉を寄せて、俺は立ったままのピンク色を見上げる。



「ないこが悪いんやからな。家まで我慢できんで会社でヤろうとするから。今回はスタッフも逃げたみたいやから良かったけど、鍵開けられて確認されとったらどうするん」

「はぁ!? お前がそれ言う!? 言っとくけど最終的に我慢できなくて挿れたのも出したのもお前だからな!」

「俺は家でしようって言うたやん。夜の資料室なら大丈夫って意味不明なこと言うて誘ったんないこやもん」



しかも「大丈夫」ではなかった。

おばけと勘違いしたとは言え、気配と声はスタッフに感じ取られているんだから。



「…ふ、それにしてもないこが必死で声出すん我慢しとるんを、幽霊がすすり泣く声と間違えられるなんてな」



おもろ、と付け足して笑うと、その時のことを思い出したのかないこの顔がみるみる赤くなっていく。



「あったまきた。今後二度と声出さねぇから!絶対に!」



そこは普通なら「二度とお前とはヤらない」じゃないのか。

脅し文句のつもりか、それでも何の脅威もないセリフに思わず吹き出してしまった。



「俺はいいよ?別にそれでも。快感に耐えようとして声出さんように必死になっとるないこの顔、だーいすきやから」

「…悪趣味…っ」

「今日は社長室にする?」

「するわけないだろ!家帰るわ!さっさと仕事終わらせろバカまろ!」



真っ赤な顔で怒鳴るないこは、こちらにくるりと背を向ける。

それに「りょーかい」と笑って応じて、俺は再び自分のPCに向き直った。




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