テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
判官殿と札幌少年の話。
定住する人間が少ない土地は実体を成さず、ただ意識だけが風のように漂っている。
昔の僕はまさにその状態だった。ぬるま湯に全身を沈めてから顔だけ外に出すように、気まぐれに上空に意識を飛ばしては、黒い湿り気のある色をした地表や曲がりくねった大河を眺めていたものだ。
現地の人間たちはこの場所をサツポロペッと呼んでいた。
乾いた大きい川のことを指し示す言葉らしい。
それが人間から僕への初めての贈り物だった。
人間からしてみれば、ただの目印にすぎないかもしれないが。
ある時から沢山の人間がこの場所を訪れるようになった。
聞き慣れない言語の人間ばかりだった。見たことの無い服も着ていた。
その中でも一際身なりの整った目つきの鋭い人間がいた。
彼の元にはいつも人間が集まり、何かを話し込んでいるようだった。
楽しく談笑しているようには見えないし、喧嘩をしている様子でも無い。
一体なにをしているのだろう。
遠くでも近くでもない距離からぼんやりと彼らを見ていた。
ふと、手に持っていた紙の束に注がれた彼の視線が、こちらに向けられた気がした。
目に映した相手の本質を見抜くような目つきに、思わず意識の輪郭がピリッと波打つ。
「彼奴は…ああ、そうか。まだ成っていないのか。」
「島殿、如何されましたか?」
「彼方に何かありますかな?」
「いや、何でもない。一先ずはここの区画の開拓から始めてくれ。」
「御意。」
…彼はこちらから目線を外すと、またいつも通り人間と話し出した。
さっきのは、一体何だったんだろう。
判官殿と札幌少年①ー了
続くかもしれないし、続かないかもしれない。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
55
#オリジナルストーリー