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朝。
朝霧湊はいつものように学校へ向かっていた。
能力があることが当たり前になった世界。
しかし、通学路の景色は昔と変わらない。
信号があり、人が歩き、車が走る。
そんな当たり前の日常だった。
「おっと……。」
横断歩道の前で、一人の高齢男性が立ち止まっていた。
足が悪いのか、なかなか渡ることができないようだ。
信号は青。
だが点滅が始まっている。
湊は迷わず男性へ近づいた。
「大丈夫ですか?」
「ああ……すまないね。」
「一緒に渡りましょう。」
湊は男性の腕を支えながら横断歩道を渡った。
渡り終えた男性は何度も頭を下げる。
「ありがとう。」
「気を付けてくださいね。」
湊は笑顔で手を振り、そのまま学校へ向かった。
特別なことをしたつもりはなかった。
校門が見えてきた頃。
今度は大きな荷物を抱えた女子生徒がいた。
教材だろうか。
前が見えづらそうだ。
湊は自然と声を掛けた。
「持とうか?」
「え?」
「教室まで運ぶよ。」
女子生徒は驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になった。
「ありがとう!」
湊は荷物の半分を受け取る。
そして教室まで運んだ。
「助かったよ!」
「気にしないで。」
湊は軽く手を振った。
昼休み。
屋上。
いつもの三人が集まっていた。
「おはよう、湊くん。」
小春が笑顔で手を振る。
「おう。」
輝羅も弁当を広げる。
「今日も誰か助けてたらしいな。」
「え?」
湊は首を傾げる。
「校門で話題になってた。」
「別に大したことじゃないよ。」
すると小春が小さく笑った。
「湊くんらしいね。」
「そうかな?」
「うん。」
小春は優しく頷いた。
「湊くんって、困ってる人を見つけるのが上手だもん。」
「そんなことないって。」
照れくさそうに笑う湊。
輝羅は呆れたように肩をすくめた。
「昔からあんな感じだ。」
その様子を少し離れた校舎の窓から見つめる男がいた。
日下部隼人。
育成プログラムの教官。
彼は朝から湊を観察していた。
横断歩道。
荷物運び。
そして今も。
日下部は静かに目を閉じる。
能力――鼓動感知。
周囲の人々の鼓動が伝わってくる。
緊張。
焦り。
不安。
喜び。
人の感情は鼓動に現れる。
しかし。
朝霧湊だけは違った。
老人を助けた時も。
荷物を運んだ時も。
鼓動に迷いがない。
見返りを求めているわけでもない。
善人ぶっているわけでもない。
ただ自然だった。
まるで呼吸をするように。
放課後。
日下部は一人、校庭を見下ろしていた。
夕日が校舎を赤く染めている。
朝霧湊は特別じゃない。
むしろ普通だ。
能力もない。
特別な才能もない。
だが――
この世界では、その普通が一番珍しい。
日下部は静かに呟く。
「彼は考えて動いているのか……?」
校庭では湊が落ちていた空き缶を拾い、ゴミ箱へ捨てていた。
誰も見ていない。
誰も褒めない。
それでも自然にやっている。
日下部は目を細めた。
「それとも――」
「体が自然に動いているのか。」
夕日が沈んでいく。
その答えは、まだ分からなかった。
第十話 普通 完
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あまね🍡💠
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コメント
1件
うわあああ第10話読み終わったよ〜!!😭💕 湊くん、ほんとに“普通”が似合いすぎてて泣ける…!困ってる人を助けるのも、荷物運ぶのも、空き缶拾うのも、全部「当たり前」って顔でやってるのがもう尊すぎるんだが?!✨ 日下部さんの「鼓動に迷いがない」って台詞、めっちゃ刺さった…。能力がないからこそ、心のブレがなくて自然体でいられるって、この世界では逆に最強の個性なんじゃないかなって思ったよ🥺💖 次回も絶対読むからね!!湊くんの“普通”がどう評価されていくのか気になりすぎる〜!!🌸