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昼休み。
教室は騒がしくて、落ち着きがない
俺は弁当箱を開きながら、
無意識に隣を見た。
じゃぱぱは、
何事もない顔でパンをかじっている。
……やっぱりだ。
昨日と同じ。
朝と同じ。
その周りだけ、空白みたいに抜け落ちている。
(本当に、何もないのか?)
目を凝らしても、
感情の輪郭は浮かび上がらない。
それなのに。
「ya、これ飲む?」
紙パックの飲み物を差し出される。
不意打ちだった。
「……あ、いや」
断ると、
じゃぱぱは「そっか」と言って引っ込めた。
その仕草が、
妙に自然で。
感情がない人間の動きには、
どうしても見えなかった。
食べ終わったあと、
じゃぱぱは椅子を引いて立ち上がる。
「ちょっと購買行ってくる」
その瞬間だった。
背中越しに、
ほんのわずか、
色の影みたいなものが揺れた。
はっきりしない。
名前をつける前に、消える。
でも、確かに“何か”があった。
「……待って」
気づいたら、声が出ていた。
じゃぱぱが振り返る。
「なに?」
距離は、近くも遠くもない。
ただのクラスメイトの距離。
なのに、
胸の奥がざわつく。
「……いや」
言葉が続かない。
何を聞くつもりだったんだ。
お前は感情があるのか、なんて。
そんなこと、言えるわけがない。
「変なya」
そう言って、
じゃぱぱは軽く笑った。
その表情を見た瞬間、
俺は確信した。
感情が、ないんじゃない。
俺の目が、捉えきれていないだけだ。
じゃぱぱは、
俺の能力の外側にいる。
それが、
偶然なのか、
理由があるのかは、まだ分からない。
ただ一つ言えるのは。
あの一瞬の揺らぎを、
俺はもう、
見なかったことにはできない。