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口に含んだワインをごくっと呑み下して、レンズの向こうにある、その冷えた瞳を見返すと、
「……こないだは、違ったじゃないですか? 薬まで飲ませて、無理にしようとして……」
抗議をするように、ややきつめな調子で言いつのった。
「……違っては、いないでしょう? あの時は確かに薬は与えましたが、君は自分からそうされたはずです……」
自分のグラスにワインをついで、彼はまた一口を飲むと、
「……キスも、拒まなかったですよね?」
私に、不意に顔を近づけて、
触れるか触れないか程度に、薄く唇を合わせた。
焦らすような口づけに、追い求めるかのように、つい唇が開くと、
「……もっと、してほしいですか……?」
その低い声で、耳元でもったいをつけるように囁かれ、追い討ちがかけられた。
「……してほしいと言えば、してあげますよ?」
「し……」
言いかけて、口をつぐむ。
「いいのですよ…してほしくはないのなら……」
彼の細く長い人差し指が伸びて、私の唇を横につとなぞるのに、首を振り顔をそむける。
「ほしくは、ないのですね……?」
離れていく、薄く形のいい唇に、
「ほしく…ないわけじゃ……」
追いすがるような言葉が、思わず自らの口をついてこぼれた──。