「……ほしくないわけじゃ……? その後の言葉も、ちゃんと言ってみなさい……」
誘導に乗せられたくもなくて唇を噛んで、口をつぐむ。
「……言えないのですか?」
「……言いたくないんです」
顔をうつむけて言うと、
「……言いたくないのなら、言わせてあげましょうか?」
人差し指と親指で顎が挟まれて、瞳を覗き込まれた。
「……こうしている内に、言いなさい……でないと、もう何もしてはあげませんよ?」
目の前で話す、濡れた唇の艶めかしさに、
「……キス……して」
勝手に、口から言葉が零れ出る。
「そう…言えばいいんです……最初から」
抵抗もできないままに、口づけられる。
従ってはいけないとわかっているのに……まるで、催眠術にでもかけられているかのように、従わずにはいられない、自分がいた……。
……そんな気はないのに、キスなんかしてほしくもないのに……。
まして、それ以上のことなんて……望んではいないのに……触れられる唇に、撫でられる手に身体が勝手に反応してしまうのが、わけもなく悔しかった。
口づけから解かれて、目をそらした。
顔なんて、見たくもなかった。
その美麗な天使のような顔で、執拗に責め立ててくるだけのこの男は、本当には悪魔なんじゃないかとさえ思った。
美しさの中にサディストな面を宿した悪魔……人間らしさも感じられないその医師には、そんなイメージがぴったりにも感じられた……。
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